第84話『後3日、裏切りゲーム』

 マスターの指示に従いみんなが目を閉じる。インサイダーである俺も正体がバレてはいけないので、みんなに合わせ目を閉じた。


「マスターもお代を確認したので目を閉じます」


 マスターまで目を閉じるのか。


「インサイダーの人は目を開けてください。音を立てるとバレてしまうので静かにお願いします」


 言われた通りにゆっくりと目をあける。

 するとテーブルの中央にカードの束が置かれていて一枚だけがめくられている。表になっている1枚のカードには1~6の番号がふられた単語が書かれていた。このうちのどれかが今回のお代なのだろう。


「インサイダーの人は山札の上の番号を確認してください。その番号がお代の番号となります」


 えっと、山札の一番上のカードには2と書かれていた。つまりめくられ表になっているカードの2番が今回のお代ってことか。


 お代『遊園地』。


「インサイダーの人は目を閉じてくださいなのです」


 覚えるのは簡単だったけど、問題はどうすればバレずに行動できるかだ、ヒカリやケンジは勘がいいからな、少しでもおかしな行動をすればすぐにバレる。


「それではみなさん目を開けてください。答えを見つけるまでの制限時間は、砂時計が落ち切るまでの五分です。もう一度説明しますが、質問は「はい」か「いいえ」で答えられる質問にしてください。順番もありません、思いついた人から何度でも質問可能です」


 レンサクが砂時計をひっくり返した。

 白い砂が落ち出し、ゲームがスタートする。


「……」


 慣れないゲームで視線を交わし合うが誰も口を開かない。黙っていれば不利になるのはわかっているが、インサイダーだと悟られそうで、最初に質問をする勇気がでない。


 このゲームをやりたいと言ったホカゲに先陣を切ってもらいたいけど、ホカゲの性格を考えると一番に口をひらきそうにない。


「どうしました。これは協力ゲームです。率先して口を開かないと全員の負けになってしまうのです」

「えっと、じゃあ、それは食べ物ですか」

「いいえ、食べ物ではありません」


 ヒカリが最初に質問をしてくれた。ありがとうヒカリ、いつも頼りになります。


「では、何かの道具ですか」

「いいえ、道具ではありません」


 今度はヨシカが質問をしてくれた。いいぞ、これなら流れに乗って俺も質問ができる。食べ物、道具、ときたからな、この後に不自然じゃない質問は。


「乗り物ですか」

「んん~、少し返答に困ってしまいますが、ここは、いいえと答えておきましょう」

「マスターが少し悩んだ、乗り物は核心じゃないけど近い何かがあるのかも」


 そう遊園地の遊具の中には乗り物と呼ばれる物もある。しかし一般的に乗り物と言えば、車や飛行機になるからレンサクは返答に困ったのだろう。


「わかった、乗り物じゃない乗り物、台車だ、人が乗るモノじゃないけど、人が乗ることもできるもんね」


 サリが自信満々に当てにいったが、ものすごい見当違いだぞ。


「いいえ、台車ではありません」

「えー違ったの」

「おそらく、単体のモノじゃない、場所を差していると思う。マスター、それは地名ですか」


 ホカゲが自分の推理を口に出しながら、答えを絞り込むような質問をする。


「いいえ、地名ではありません」

「それは建物ですか」

「んん~、大きく分類するなら、はい、建物になると思うのです」


 遊園地自体を建物と分類できるのか、遊園地を建築するって聞いたこともあるし、多分建物でいいんだよな、レンサクも悩んで建物ですと答えたし。


「建物で悩む、それなら施設ですか」


 温まってきたのか、最初は黙っていたホカゲの連続質問がくりだされる。やりたいと言っていた本人だ、ゲームのコツも調べているのだろう。


「はい、これは施設です」

「まとめると、乗り物がある施設、あとはどんな施設かを当てる」

「それはレース場か」


 施設で乗り物と聞いてタンガも初めての質問をした。レース場ではないけど、いいぞ、いいぞ、だんだん答えに近づいてきている。


「いいえ、レース場ではありません」

「もしかして遊園地かな」


 なんと、レース場を否定された直後にヒカリがずばりの正解を導き出した。


「はい、これは遊園地です」


 レンサクが砂時計を横に倒して時間を止める。


「なにも質問をする前に終わってしまったな」

「安心してくださいケンジ、このゲームのメインはむしろこれからなのです。みなさんの中に一人だけ最初から答えをしっていたインサイダーが潜んでいます。マスターの僕も誰がインサイダーなのかはわかりません」


 丸メガネがキラーンと光を反射させる。


「まずは正解者のヒカリ嬢がインサイダーかどうかを投票で決めます。ヒカリ嬢を除くと七人ですので、半数の四人以上が票を入れた方をみなさんの意見として扱います」

 正解者投票における勝敗。

◇インサイダーだった場合。

・インサイダーだと四票以上入れられたらインサイダーの負け。

・インサイダーじゃないと四票以上入れられたらインサイダーの勝ち。

◇インサイダーじゃなかった場合。

・インサイダーだと四票以上入れられたらインサイダーの勝ち。

・インサイダーじゃないと四票以上入れられたら、ゲーム続行、本物のインサイダーを探す。


 ってことだよな、つまり俺が勝つにはヒカリがインサイダーだと四票以上集めてもらう必要があるってことか。


 でも、それだと裏切り者でもないヒカリに、俺はお前が裏切り者だと宣言しないといけなくなるのか、そんなことできるか。


 落ち着け、これはただのゲームなんだぞ、ただの遊びじゃないか。いや、でも、ヒカリを裏切り者って告発するわけには。

 くそ、なんて精神をすり減らすゲームなんだ。


「それでは、ヒカリ嬢がインサイダーか否かを投票するのです」

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