第15話 面接
万由里さんの配信は3時間程で終わった。
残念ながら、そこでも面白いコメントはできていない。
だがそれでいい。どちらかといえば新たな推しができたことに満足している。
「……推しは別に浮気じゃないよな……?」
残る気がかりはそこだけだ。
配信者の中には自分だけを推して欲しい!
と思ってる人は、当たり前だが多いだろう。
だからこそ、推しを別に作ることは『浮気』と同義なのではないか。と思ってしまうのだ。
「…まぁいいか。推したくなったんだからしょうがない。別に推しが増えたから推さなくなるわけじゃないからな。
さーて。昼飯食お。」
推し推しうるさいな俺は。
携帯の電源を切って、リビングに行く。
そこにはすでにさゆりの姿があった。
「あ。佑じゃん。
佑は昼ごはん?」
「あぁ。流石に腹が減ったからなぁ。
さゆりは?食べないのか?」
「うーん。あんまりお腹減ってないかも。
どちらかと言うと喉が乾いたかな。」
「へーん。」
さゆりはお菓子ばっかり食べるからな。
絶対それだろ。と思いつつも声には出さない。
だってそれ言ったらさゆりちゃんシュン…ってしちゃうんだもの。
「……そういやさー。佑って部屋で何してたのー?」
「ん?」
俺が冷蔵庫や棚を漁っていると、ふいにさゆりが声をかけてくる。
でも何で?これまでは俺が何をしてても興味ない。みたいなスタンスだったのに。
暇だから雑談したいとか、そういうアレか?
「…いや別に、Ytube見てたけど……?」
「…ふーん。
またVtuber?」
ギクッ!
「……どうしてそう思うんだ?」
何故だろう。別に悪いことではないはずなのに、なんか良くない気がする……。
「うーん……。
佑のことだから、好きになったものはしばらく熱中するじゃん。だからかな。」
「そ、そうか。
まぁ、確かにVtuberを見てたよ。」
「前言ってた子?モニカちゃん、だっけ?」
うぅ。違うけど、ここはそうと言った方がいい気がするなぁ。
ま、どうせわからんやろ。そういうことにしとこう。
「そうそう。モニカちゃんの配信見てた。」
「……。」
………なに。やめて!真顔やめて!!沈黙怖いっ!
「……そっか…。ならいいの。」
しかし、さゆりはどこかほっとしたような、それでいて少し寂しそうな表情を見せた。
「…じゃ。私部屋に戻るから。
ぜったい入ってこないでね。
あと、レトルトのカレーは左の棚に入ってるよ。」
「お、おぉ。了解。
サンキュー……。」
よくわかんないなぁ。
Vtuberを見た?って圧をかけてきたかと思えば、ほっとしたような寂しいような、そんな雰囲気を出して。
ふぇーん。お兄ちゃん妹がわかんないよぉ。
あれからさゆりに変わった様子はなく、夜一緒に夕食を食べる時はいつものように接してきた。
だから俺も何かの勘違いだったのだろうと気にしないことにした。
そんなこんなで、バイトの面接がある当日。
若干の緊張を感じつつ、持参するものに忘れがないかを確認する。
あとは時間になるまで、Ytubeを見つつ、
悪い人じゃありませんように。
パワハラとかしない人でありますように。
と願っていた。
そして、母と妹に『頑張れ!』と応援されて俺は面接へ向かった。
十数分歩いて、目的のコンビニに7分前に着いて、様子を見てみる。
確か、店員さんに聞けば案内してくれるって言ってたよな…?
今は客が多いから、この人たちがいなくなったら聞いてみよう。
ただレジの前で突っ立てても
なんだぁこいつぅ!?
となるかもしれないので適当に店内を見て回る。
やっぱり同じセブンでも内装大分変わるなぁ。
と家に近い方のセブンと比較しながらそう感じた。
……と、お菓子コーナーを見ていた時
大手のVtuber事務所のライバーとのコラボ商品を見つけた。
しかし、どうしてこういうコラボ商品はウエハースが多いのだろう。
カードとか集めるのに便利だからだろうか。
俺バカだからわかんねぇけど!
あ、客がいなくなった。時間もちょうどいいし
案内してもらお。
俺は空いたレジのお兄さんに声をかけた。
「あの、すいません。」
「いらっしゃいませこんばんは!
…どうなさいましたか?」
「えっと、17時に面接を受けに来た者です。」
「あぁ!聞いてますよ。
少しお待ちくださいね。」
そしてお兄さんは控え室?に入っていった。
しばらく邪魔にならないようなところで待機していると、イートインスペースの方からさっきの店員さんがひょこりと現れ手招きをしてきた。
そちらへ行くと『関係者以外立ち入り禁止』とかかれた扉があり
「ノックとかはいいらしいのでこのまま入ってください。では、頑張ってくださいね!」
と激励してくれた。
うっ。なんか急激に緊張してきた。
モニカちゃんっ!オラに力を分けてくれぇ!!
「あ。こんばんは。どうぞ入ってください。」
いきなり扉が開かれて、急にオーナーか店長らしき人が現れた。
ま、待って…まだ心の準備ががががが
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