第14話 白羽万由里のストリーミング


「……困ったな。」


推し探し兼研究のためのVtuber探しを始めて2時間ほど経ってしまった。

1日の12分の1をこんなことに費やすなんて、

全く、時間の無駄なわけがないだろう。


むしろ俺は感心していた。


だって、俺が見てきたのは同接が少ないVtuberたち。

しかし、その誰もが楽しそうに配信をしていることが感じられた。


俺は自分の欲求のために推すことができなかったが、やはりその人を推している人は存在する訳で。

 

「別の意味でいい勉強になったな。」


よっしゃ。もう一度探すぞ!

と再度更新をかけてまた推し探しを始める。


すると


「…お。このVtuberさん。俺の好きな猫耳キャラだ。同接は……23人か。」


良さげな人を見つけ、すかさずその子の配信に入る。


その子の名前は『白羽万由里』だ。


《コメント》

:待機

:待ち

:全裸で

:待機

:loading…

:↑全裸待機は帰ってもろて

:待機

:待機

:待機


「…おぉ。待機コメントがいっぱいだ。」


配信は始まったばかりのようで、

〔1分前に開始〕

と表示されていた。


しかし、開始直後でここまで人が集まるのは

結構すごいことなんじゃないか?

俺はあんまりVtuberに詳しい訳ではないからよくわかんないけど。有識者ー!教えてー!


「…あ。登録者1万人いるんだこの子。

だったら納得かも。」


時間が経つにつれて、どんどん人数が増えていく。下手したら声が入るまでに60人を超えそうなくらいな勢いだ。


「こんなん絶対コメント読まれないじゃん。

……ブラウザバックかな。」


そんなことを思って、また推し探しを始めようとバックボタンを押そうとした瞬間


『お待たせー!!待機してた人たちありがとー!!

ごめんね。ちょっと配信の準備で忙しくって!』


…その声を聞いた瞬間、何故だかわからないが

俺の指は動かなくなった。

急性の病気を患った訳ではないし、この一瞬で気絶した訳でもない。


ただただ、俺はこの万由里さんの配信を見なくてはならないという気持ちになったのだ。


『わー!謝ったらちゃんと許してくれるから

お友達の皆大好き♡

でも、ちゃんと反省してできるだけ遅刻しないようにするね。ごめんなさい。』


《コメント》

:全然大丈夫よ〜。待つ間、可愛い万由里ちゃんが見れたからね!

:むしろ待機画面を長く見せてくれてありがとうというか何というか。

:全裸でいると寒いということに気づかせてくれてありがとう。

:モーマンタイさ

:謝らないで!興奮しちゃう!

:↑まず全裸がおかしいことに気づいた方がいいと思う。


『今日も元気だね〜皆。

待機画面は結構こだわったから嬉しいなー。


可愛いのは当たり前でしょー?

でも改めて言われるとやっぱ嬉しい!


いつも思ってたんだけどさ、全裸待機って何?今日は思い切って聞いちゃう!


謝ったら興奮するのー?変な人だねー?』


……へー。この子は結構コメント読んで返事してくれるんだな。

ちらほら読まれてないコメントもあるが、

基本的にどのコメントも読まれているイメージがある。


「…この子なら、ちょっと面白くなるかもしれない。」

そう思って俺は、


佑:

初見です。


とコメントした。

ここまでは今までと同じ。


『……お!

初見の人がいるぞー!

えーっと……?


……タスクさん?かな?間違ってたら謝る!』


お。この子は『ゆう』って読まないんだな。

別にどうでもいいことなんだけど、やっぱ本名だからむず痒くあるな。


佑:

はい!合ってます!


『おー!よかったー!

じゃあ、タスクも私たちの『お友達』になってくれるー?』


《コメント》


:この配信に来た時点で君も友達さ。

:俺たちずっと前から友達だよな!(初めまして)

:うっうっうっ。ここでは友達沢山いるのに…

:お前もお友達にならないか?

:全裸待機は結構前に流行ったネットミームというか…

:初見さんいらっしゃいませ!

:ワイノワイノ…

:ガヤガヤ…


ふむふむ。なかなか悪くないのでは?

友達っていう響きも気に入ったし、声もビジュアルも可愛い。

コメントもけっこう読んでくれる。

登録者1万人だけど。


たまに見にくる分にはいいのではないだろうか。

1万人もいれば面白いリスナーさんもいるだろうし。


決めた。この子推すわ。


佑:

こちらこそ宜しくお願いします!


『皆ー。脅迫みたいにしたらダメだよー!

自分の意思でお友達になってくれないと意味ないもん。


……あ!本当?!お友達になってくれるの!?

やったー!』


えぇ…すっごい喜ぶじゃん。なに?この子、

1万人もお友達がいるのにまだ喜んでくれるの?

あらやだ。もっと推しちゃう。


《コメント》

:こちらこそって、佑くん。君、初見で万由里ちゃんから告られたみたいな感じ。羨ましいぞ。


:俺も初見の時こちらこそお願いしますって言えばよかったわ。俺の場合 えぇ?!マジ?!友達なってくれんの?!なるなるぅ!!だったもんな


:佑くん恐ろしい子だわ


:初見だからってゆるさないぞ!万由里ちゃんは僕のだぞっ!!


…ははっ。

意識して打ったコメントじゃなかったけど、それぞれが面白い反応をしてくれる。

楽しいな。もっとコメントしようかな。


モニカちゃんのところとはまた違う、

別の楽しさを俺は感じることができた。




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