第5話 妹と、Vtuberの話②
※Vtuber要素薄めです。
「お待たせいたしました!!
こちらご注文のものになります!」
さゆりと話していると、店員さんが様々な種類のスイーツを運んできた。
「ありがとうございます!」
それをみながら、さゆりと俺は目を輝かせてスイーツを見ていた。
「…テイクアウト頂いた品は、お会計の際に
お渡し致しますね〜。
それでは、ごゆっくりお過ごしください!」
そしてぺこりと礼をし、離れていった。
「見てよこれ!すごくない!」
さっきまでのVtuber話の空気はどこへやら、
はしゃぐさゆり。
写真を撮りまくったり、
「…来たよー!これ美味しそう〜!」
と言いながら動画を撮っているみたいだ。
そして俺も、次の配信の時にコメントできるように、今この瞬間の感動を記憶に残しておきたい…!
さゆりの邪魔をしないように、俺も自分の携帯で写真を撮った。
━━━━結構長いね。
俺が満足して、さゆりの撮影会が終わるのを
待っていたのだが、なかなか終わる気配がない。
いくら友達に送るにしても長すぎる気がするが、まぁ最近のJKはこんな感じと言われれば何も言えない。
俺の声が動画に入るのもどうかと思って、
長くない?
と声をかけることもできないし、どうしたものか……。
うん。どうすることもできないね。
「………よしっ。
お待たせ佑。
食べよっか!」
お。やっと終わったか。
まぁ、ここを教えてくれたことに免じて許してやるか。
俺も早く食べたい。
…ちなみに、俺たちが頼んだのは
ガトーショコラ、ロールケーキ、ミルクレープ
シュークリームが二つずつ、少し大きめのフルーツタルト。
そして、お目当てのバウムクーヘンだ。
それを俺たちは、できるだけ長く、ゆっくりと
味わって食べた。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「……いやー。美味かったな〜。
特にあのフルーツタルト。あれはやばい。
もしあれがもう少し安かったら買い占めてたレベル。」
「…そうだね!
佑が全部食べたせいで私は一口も食べられなかったけどね!」
見るからに不機嫌そうなさゆり。
いやお前も二つあったガトーショコラどっちも食べたじゃん……。
「あれはしょうがないでしょ!?
だってチョコの甘さも絶妙で、ココアパウダーのほんの少しの苦味とめちゃくちゃマッチしてたし、なんといってもあのなめらかな生地!
しっかりしてるのに、口の中でホロホロと解けて味が脳に直接届く!みたいな!」
お、おう。めっちゃ語るじゃん…。
それくらいここのガトーショコラが美味しかったってことね。
なんだろう。さゆりにどこかオタクみを感じるなぁ……。
面白いんで、やめないでもらっていいですか?
そんな感じでさゆりのガトーショコラベタ褒めタイムがしばらく続き、俺はそれに相槌をうちながら来た道を帰っていく。
すると
「………佑。代金払ってくれてありがと。」
……おや?今日はちゃんとお礼言うんだな。
いつもなら、奢るのが当たり前でしょー?
って感じで全く悪びれなかったのに。
「ん?あぁ。気にすんな。こちとら数日前までしっかりとお仕事をしててお金もあるんだ。
むしろ今までの方が大変だったくらいだよ。
てか、どうしたんだよ。お礼なんて。」
教育隊で辞めた奴が何を言ってるんだって話だが、給料はしっかりと入ってるんだから働いてたってことでいいよね?
「……いや、今にして思えば辛い思いをして辞めて来た次の日に、こんなところまで連れ出しちゃって、疲れてないかなって。
それに、結構高かったじゃん。お代。
だから、着いてきてくれたことと全部払ってくれたことに対する、お礼。」
……驚いたな。
俺が入隊する前までは、絶対そんなこと言わなかったのに。
高校に入学して、少し大人になった。ってことなのか?
確かに、代金はなかなかに高かった。
それはなんとなくわかっていたが、珍しく割り勘にしようとするさゆりを制止して全額払ったのだ。
「ははっ。
まさか、さゆりの口から俺の事を気遣う言葉が出るとはな!
なんだ?なんやかんや俺としばらく会えなかったのが寂しかったのか〜?
可愛い奴だなぁ〜!」
「は、はぁっ!?
何?私がお礼言うことがそんなに珍しいわけ?
もういい!2度とお礼なんか言わない!」
「ははは。
……お礼を言いたいのはこっちだよ。
さゆり。俺はちゃんと理解してるぞ。
俺が辛い思いをして帰ってきたから、楽しい思いをさせたくて俺を連れ出してくれたんだろ?
現にちゃんと楽しかったし、美味しい物も食べることができた。
だからお金くらいは払わせてくれよ。」
「……別にそんなこと思ってないもん。
高校生にもなって奢られるのが嫌だっただけだもん。」
ふ。
図星を突かれたときに「〜〜もん。」って言うのは変わらないな。
…うん。いい気晴らしになったし。
なんやかんや辞めたことで気が沈んでいたから、今日は本当に来て良かった。
普通は高校生になって兄と出かけてる。ってことの方が恥ずかしいと感じるものだと思っていたが、可愛い可愛い我が妹には気ににすることではないらしい。
━━━━━数時間後、広い広いYtubeの世界で
一つの待機所が立てられた。
そのタイトルは
お友達に紹介されたバウムクーヘン食べて来たよ!!#雑談 #Free talk #Ytuber #初見さん大歓迎!
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