第4話 妹と、Vtuberの話①

※Vtuber要素は少なめです。興味ない方はブラウザバック推奨








俺とさゆりは、現在電車に揺られている。


目的地は『アサヒテラ』というスイーツ専門店だ。


そこの最寄り駅までは40分程だろうか。


まぁまぁ長い時間である。


その間、俺たちの間に会話はない。


さゆりはイヤホンをして目を閉じ、自分の世界に入っている。


だから俺も、イヤホンをしてモニカちゃんの過去配信を見ることにした。


とりあえず、昨日のアーカイブをつけてコメント欄を開く。



携帯に待機画面が映る。

こういうのもあれだが、割とそのクオリティは高かった。


ゆったりとした音楽に合わせ、お皿のような物に細かな雪が積もってゆく。


それはモニカちゃんのモチーフである、


『チリツモ』


を体現してるようだった。


コメント欄には



Na-kun:

入り待ち


山里のタケのこ:

待機


モニカファン【公式】:

待機


漢検2級持ち:

コンモニカ〜


ヨシオ:

仕事なので挨拶だけ。コンモニカ〜


昨日のメンバーがコメントを残していた。


…やがて画面は移り、モニカちゃんの姿が現れた。


『………はーい。


みなさん!コンモニカ!

塵も積もれば山となる!

の精神で!配信活動中の

チリツ モニカでーす!


よろしくねーん!


……みんな入り待ちありがとー!』


山里のタケのこ:

コンモニカー!


モニカファン【公式】:

コンモニー!


漢検2級持ち:

コンモニカ〜


ヨシオ:

こんもにか!


ねりまきの翁:

コンモニカァ!



『はーい。コンモニカ〜。』



そこからチリスナーとモニカちゃんの雑談が始まる。


モニカちゃんがその日体験したこと、チリスナーの本日の晩御飯、最近購入したもの。


など、色んな話題が飛び交っている。


それに俺は、


俺ならここではこんなコメントをするな。

今このコメントしたらウケそうだな。

などと考えながらアーカイブを視聴した。




━━━30分程経った頃。


ピロンッ!


通知音と共に画面の上の方にメッセージが表示された。


ん?なんだ?


とりあえず、メッセージを長押しして確認してみる。


すると


『佑ってVtuber見るんだね。』


?!


勢いよくさゆりの方を見たが、さゆりは全く気にした様子も見せずに携帯を見ている。


ピロンッ!


また何か来た。


『名前なんてゆーの?』


少しだけ困惑しながらも俺は返信をした。


『…チリツ モニカってVtuberさんです…。』


俺が悪いわけではないのだが、なんとなく妹にVtuberを見てることが少しだけ恥ずかしくなって、敬語になってしまった。


それも、さゆりはアニメや漫画に興味をあまり持たない子で、クラスの中心にいるような子なのだ。


……?

でもさゆりはVtuberって単語を知ってるのか。


なら意外と興味があったりして…?


『…ふーん。後で調べてみる。』


えぇ…。なんかちょっと怖ーい…。


なんか、


『さゆりもVtuber好きなん?ウェーイ!』


みたいなこと聞いたら怒られそうな勢いだわ。


文字だけど。



そんなこんなで、電車は目的の駅まで着いた。


あれからさゆりからVtuberの話題はなく、それはそれで少し怖いが、気にすることでもないか。とすぐに思考を変える。


「…で?こっからどっち方面に行くんだ?」


「んーとねぇ……。こっち。」


携帯とにらめっこしながら歩き出したさゆり。


「ここから5分くらいだってさ。」


「へーん。結構近いのな。」


「まぁ、人気スイーツ店だからね。」


さゆりは時々携帯を見ながらどんどん進んでいく。


行動の速さが女子高生なんよなぁ。


人も休日ということもあり、なかなかに多い。


その中をぐんぐん進む姿に慣れを感じる。

やっぱ陽キャだわ。


「……あ、ほら!見えてきた。」


さゆりが指差す方を見る。

するとそこには、いかにもといった店が建っていた。


外装もキレイで女性や若者の好きそうなポップなカラーに、それでいてどこか大人びた雰囲気も漂わせている。


ここ、配信とかで話題にしやすそうだなぁ。


もしかしたら顔の知らないVtuberとか食べにきてないかなぁ。


とか、そんなことを考えてしまう。


すっかりVtuberにハマっているな俺。


「……?どうしたの佑。


…あ、もしかしておしゃれすぎて入るのが恥ずかしいとか〜??


ぷぷぷ。」


「え?い、いやいや。全然そんなことないけど?

むしろ社会勉強として普通に入りたいまであるが??」


「ふっ。

何それ。いいから入るよ〜。」


しょうもない絡みをした後、俺はさゆりに手を引かれ『アサヒテラ』に入った。



外装もオシャレなら、もちろん内装も申し分なく、甘い香りで漂っている。


「うわぁ〜〜……!


私実はここにきたの初めてなんだけど、キレイだし、すごくいい匂いがする……!」


目でわかるくらいテンションが上がっているさゆり。


かくいう俺もテンションは上がっていた。


席に案内され、店員さんにメニューを渡される。

簡単に注文方法や、テイクアウトについての説明を受け


「ゆったりとした時間をお過ごしくださいませ。」


と言って、店員さんは去って行った。


「…ねね!何食べる?バウムクーヘンは外せないよね。

…あ!これも美味しそうじゃない?!


これも!これも!」


「そうなぁ…。確かに全部美味しそうだな。」


写真付きのメニューを2人で見せ合い、頼むものを決める。


さゆりがものすごく悩んだせいで、注文するだけで20分くらいかかったのは気にしないことにしよう。


とりあえず、言っていたバウムクーヘンを筆頭に、個人的に美味しそうだと思った物を

腹と、財布の無理のない範囲で頼む。


「せっかくだしさ、お父さんお母さんにもこのバウムクーヘンお土産に持って帰ろうよ。」


さゆりの提案に乗り、一つテイクアウトしたところで、あとは待つ時間となった。



………。


こんな時って妹とどんな話するの??


さっきまでは、お互いテンションが上がっていたから会話も弾んだけれど、今は楽しみだね〜。とか、そんなことしか言えない。


どーしまちょー!!

と悩んでいるところに


「……で、電車の時の話に戻るんだけどさ。


佑っていつからVtuber見てるの?」


さゆりからVtuberの話題が出た。


「自衛隊にいた時?入隊前はそんな話してなかったもんね。」


「…いや。つい昨日だよ。

Vtuberの配信見たのは。」


嘘はついてない。


「へー。


じゃあそんなに知ってる訳じゃない?」


「う〜ん。そうだなぁ。

別に詳しいとかそういうんじゃないな。」


「詳しいかとかはどうでもいいんだけどさ。


今ってVtuberたくさんいるんだよね。

だから知ってる人は少ないのかなって。」


あぁ、種類ね。理解理解。


「そうね。今んとこ1人しか知らんな。」


「…それがさっきのモニカさん?」


「そうそう。」


「ふーん。」


意外と食いついてくるな。

なんだ?本当にさゆりはVtuberに興味があるのか?


ちょっと気になってきたな。


「……なぁ。さゆりって……。


さゆりもVtuber見てるのか?」


「私?見てないよ?」


「……?あれ?」


あ、見てないの?

見てないんだ……。


「あ、あぁ。そうなのか。

…そうか。」


なんとなく、さゆりがVtuber好きで共通の趣味ができたと思って1人喜んでいたが、どうやらそんなこともなかったらしい。


だが、それならどうして?


「…え、じゃあなんでVtuberの話をそんな聞きたがるの?」


「………友達が好きだって言ってたから。」


あ、あー。友達ね。友達。お兄ちゃんその子となら仲良くなれそう!


あれだな。友達の好きなもの好きになりたい現象か。


わかるわかるそう言うのあるよね。















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