『レザボア・ドッグス』

「My way, or High-way(俺のやり方か、逃げ出すかだ)」


【概要】

 裏社会のボスに集められた6人のプロ犯罪者。綿密な計画の宝石強盗を行おうとする。だが、強盗の最中に警察の待ち伏せに遭い失敗してしまう。

 命からがらアジトに戻った時に「この中に裏切り者がいる」という一言で、互いが疑心暗鬼になる。


 いったい、誰が裏切り者なのか、本当に裏切り者がいるのか?

 そもそも、何が起こったのか?


 回想していく形で話が進む。


【登場人物】

ミスター・ホワイト:熟練の犯罪者。重傷を負ったオレンジの身を気遣う。

ミスター・オレンジ:麻薬の仲買いのチンピラ風の男。

ミスター・ブロンド:サイコパスと呼ばれる暴力的な男。

ミスター・ピンク:独特の価値観を持つ若い犯罪者。ダイヤモンドを持ち帰る。

ミスター・ブルー:初老の犯罪者。犯行後死亡したことが伝えられる。

ミスター・ブラウン:「ライク・ア・ヴァージン」の解釈を披露する。頭に被弾し死亡。

マーヴィン・ナッシュ:ブロンドに誘拐された若い警官。拷問を受ける。


【所感】

 とにかくスタイリッシュさと暴力さがえげつない映画。

 前回紹介した『ガタカ』が静的なスタイリッシュさとしたら、こちらは動的なスタイリッシュさです。後に大監督となるタランティーノのデビュー作。ここでは細かい映画評はしないつもりだけど、こいつは、本当にすげぇなって思った映画。


 特に小説の参考になる部分は、話の展開におけるスピード感。省略の妙技。


 オープニングで食事を済ませた六人の男達が「じゃあ、行くか」と、ちょっと仕事でもしてくる感じで店を出た後、一気に、話を飛ばして、強盗に失敗した後になります。


 この大胆さ。省略技術の凄さ。


 主人公のホワイトが撃たれたオレンジを引きずりながら、アジトに戻り、他の連中が帰ってくるのを待ちます。

 このシーンだけで、強盗が失敗したことがわかります。そして怪我をしたオレンジを医者に見せることも出来ず、途方にくれます。


 そこへ、帰ってきたパープルが「俺たちの誰かが裏切っている」というわけです。


 敢えて宝石店の襲撃シーンを見せないことで、よりその後に展開される「対話」と「回想」で何が起こっているのかが、見る側を惹きつける原動力になっていきます。「一体、何故、こんなことになったんだ?」というところからスタートですからね。


 それぞれの視点から、時間軸を何度も巻き戻し、徐々に何が起こったのか見えてくる仕掛けです。

 構成の勝利ですね。


 途中まで観客は、まるで舞台を見るように、この悪党たちの話し合いを眺めます。更に、遅れて帰ってきたブロンドが、警察官を誘拐してきて、「こいつを拷問して、誰が裏切り者か聞こう」ってやるわけです。


 そして、裏切り者は、名乗らざるを得ない状況に……。スリリングですね!


 裏切り者という犯人捜しの前半と、裏切り者が誰か分かった後、彼がどう切り抜けようとするかという後半の面白い流れとなります。


 暴力描写が注目されがちの作品ですが、実はストーリー展開や、大半が回想で進むというシチュエーションが、小説作りのヒントになりそうです。


 ネタバレしますが(このエッセイは書き手の為に書いているので、ネタバレ上等で進みます)、撃たれて瀕死の重傷だった人物こそ、実は警官側の男だったというのは、見る側を欺くにはいいアイデアだなと思いました。


 こういう騙し方、嫌いではない。


 潜入捜査モノで言えば他にも「インファナル・アフェア」などがありますね。ハリウッドでリメイクもされました。


 この作品の大胆に話をぶっとばして、それぞれが回想するという構造は、ラノベにも転用できそうです。

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