生意気な後輩に頼まれて腹パンした結果。

燈外町 猶

生意気後輩ちゃんは、ヌルくて甘くて誰にでも優しい先輩のことも好きだけど、もっと踏み込んだ関係になりたいと前々から思っていて……なにか良い方法がないか考えて考えて考えた! その結果がコレだよ!!

「先輩……私、無敵になってしまったかもしれません……」

 圧倒的な可愛さと壮絶な生意気さを併せ持つ後輩・坂月さかづきから呼び出され、気怠い放課後、わざわざ一年生の教室に立ち寄った。

「どういう意味?」

「酸素を大量に取り込めばハイになってどんな痛みも消えるらしいです! 先輩、空手やってましたよね? ちょっと私のこと叩いてみてくれません?」

「はいはい」

 くだらないと思いつつさっさと帰りたいので肩に軽くパンチ。かな~りやさしくしたつもりだが、それでも可愛い後輩に手を上げた罪悪感は否めなくて胸糞が悪い。

「これで満足?」

「ちょ、舐めてるんですか? それともバカなんですか? 痛みを消せるか試したいんです。痛くなかったら意味ないでしょう? ねぇねぇ先輩? 意図わかってますぅ~? ほんと先輩ってそういうところありますよねぇ~甘いというかヌルいというか~」

 坂月は机に座って制服をめくり、その薄くて白い腹部を晒すと挑発的な笑みを浮かべ唇を小さく舐めた。

「はい、どーぞ♡」

 よしわかった☆ 本人の希望だからね☆ 別にイラッと来たわけじゃないよ☆

「あっ」

 こいつ――バカ過ぎる。ちょっと勢いを付けて、ビビったら寸止めしようと思ったのに! わざわざ体を前に突き出すなんて――。

 やがて私の硬い拳と坂月の柔らかい腹は――


 ――パンッ


 ――暮れなずむ教室に、乾いた音を響かせた。


×


「んお"っ! ひっひぃ"……はぁはぁ……んすぅ~はぁ……あぁぁ"……ふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅふぅ……ふぅ~~~……しゅ、すごいぃ……ほんとに、ノーダメージ、です……」

 お腹を擦りながら荒い呼吸を繰り返す坂月。

「無理があるでしょ」

 私が呆れ気味に言うと、坂月は机に両手をついて腰を突き出してきた。

「いやほんとなんです。もう苦しさも痛みもないんです! なんなら今お尻にキックしてもらっても構いませおふぅ"!?!? うぅっ……ひゅっ……ふは……んん"……ふぅふぅふぅふぅ……くっ……はぁはぁはぁはぁはぁ…………ノー、ダメージです……」

 床にしゃがみこんだ坂月を見下していると、別に面白くもないのに口角が上がってくる。なんだろう……この感覚……。

「坂月」

「ひゃ……ひゃい……」

 私から声をかけられた坂月は口元に弱々しい笑み、そして瞳をたっぷりと潤ませてこちらを見上げる。

「……もう一発」

「ひぇ……♡」

 まさかこんな、気怠いだけだと思っていた放課後に――後輩の新たな可愛さと自分の新たな一面を知るなんてね☆

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