第4話 修道院から
サライは孤児たちを集めた。
じっとしていない子。まじめに聞こうと話を待つ子。部屋の隅にいる子。
どちらにせよ、室内にいてもらわなければならない。
今日は「新入り」が来るのだから。
修道院直属とはいえ、サライ一人で回している孤児院にもやっと人員補充がなされたのだ。
そろそろ到着するはずだ。
その修道女は扉を鳴らして入ってきた。サライは握手を交わす前に驚愕する。
修道女とは思えぬ、美しい見た目。
清潔なのは当たり前だが、そういうことではない。
銀の筋がほのかにただよう金髪、凍った湖のような瞳。陶器のような肌に長いまつげが影を落としている。
事前情報として、彼女は生まれてからの記憶を失っており、川に流されていたところを農夫に救われ、農夫の養子になるも彼の死後、修道院で教育を受けた……そう伝えられていた。
それから、聖歌隊の首席であることも。
修道院ではその容姿や成績により、ひどく陰湿な目に遭ったらしく、この孤児院に勤めることになった。
サライは驚きのあまり唾を飲んだが、その修道女、まだ年若い少女は憂いを隠すことなく立っていた。
「初めまして」
少女の澄んだ声はすべてを包むかのよう。
「あ、ああ。初めまして。会えて嬉しいよ」
子どもたちも少女に魅入っている。
「まずは自己紹介からお願いできるかな?」
「はい。私はピクス修道院から派遣された、ユーフラジーと申します」
挨拶もそこそこに、孤児院でのルールをみんなでおさらい。
食事の時間になり、ユーフラジーはてきぱきと配膳をした。
農夫の村にいた時、記憶のない分、料理などの家事の吸収も早かったそうだ。
ユーフラジーの作る料理は劇的においしく、孤児たちがとても欲しがった。お菓子もたまに出され、このミネット孤児院はまたたく間に名を広めた。
ついに小学校に通える学力の孤児が出始め、修道院からの予算も下りた。
ユーフラジーが孤児みんなに文字を教えたのだ。
サライは彼女を気に入って、妹のように扱った。
サライ自身、不遇な人生だったがやっと心を許せる存在に出会ったと思っている。
孤児もまとまって行動ができるようになり……というよりはユーフラジーにまとわりつき、いつでも離れないようにしていた。
孤児もユーフラジーの登場で劣悪な環境から離れ、人に信頼を置けるようになった。
ユーフラジーはいつも孤児院にこもっていたが、サライから外出の許可が出された。
彼女は子どもをつれて、公園に行くことにした。
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