#7 悪報
私はメディさんと一緒に森の中をかけていた。走っている途中、メディさんは、心配の表情をずっとしていた。仲間たちは少しづつ、体力の限界がきたとかで道端に座って休憩しながら来ていたりする。もしかしたら、ヘインの隙をついて抜けてきた人間たちに既に殺されているかもしれない
「…メディさん、これ、どこに向かってるんですか?」
「この森の近くに、隠蔽魔術で隠されている異形擁護派の人たちの里があるので、そこまで向かっています」
「…人間たちがいるんですか?」
この後に及んで、人間たちのことは信用できるのだろうか、という不安が私の脳裏を過ぎる。ヘインたちの村のこともあってか、私は元からなかった人間に対する信用をさらに失っていたからだ
「大丈夫です。彼らは信用できます。それに、ヘインさんのことも気がかりです。一刻も早く増援を呼ばないと、確実に死んでしまう…それだけは、それだけは絶対に嫌なんです」
私の疑問を見透かしたようにメディさんは私へそう言う
メディさんはその里の人たちにヘインの増援をお願いするつもりだったそうだ
「間に合うんですか?」
「間に合わせるんです…!そうでもしないと、私は…!」
メディさんの焦りの表情が顕著になってくる。
「見えました!里の術式です!」
目の前に魔法陣が見える。あれが、隠蔽魔術の術式魔法陣…
「飛び込みますよ!」
「は、はい!」
私たちは、真本陣の中へ飛び込んだ
〜〜〜〜〜〜〜
「着きました。これが、異形擁護派の里です」
「ここが…」
「ん?おお!これはこれは!お久しぶりですなメディ殿!」
立派な門を潜ったと思えば、少し小太りの男性が、こちらに向かってきていた
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「ええ!近頃は異形擁護派の人も増え、里は賑やかさを増すばかりだ。あなたたちのおかげです!感謝しておりますぞ!」
「それはよかったです」
そしてメディさんは本題に移る
「…今は時間が惜しいんです。頼みたいことがあるのですが、よろしいですか?」
「相当深刻なようですね。どうぞ、なんでもおっしゃってください」
「此処の里で、腕利きの傭兵がいると聞きました。その方を森へ向かわせて欲しいのです」
すると男は、少し訝しげな顔をして
「それは構いませんが、一体どうされたんですか?」
「…帝国の兵士の一軍隊が、私たちの村へ侵攻してきたんです。それをヘインさんが足止めしてくれてるのですが、あまりにも数が多すぎるので…」
男は、驚きの表情をしてから、頼みを快諾してくれた
「そう言うことでしたら今すぐ向かわせましょう!おい!『獅子』!」
「ここに」
『獅子』と呼ばれるフードを被った人が唐突にそこに現れた
「森へ向かいヘイン殿の補助に向かえ!急ぐのだ!」
「御意」
また消えた…不思議の雰囲気の人だった。すると男が
「そういえば、この方は…?」
「この前、私がここへ来た時に話した新しい仲間です。」
「あ、初めまして。『メープル・ウィート』と言います」
「これはご丁寧にどうも。『ラルフ・バクウ』と申す者です」
ラルフさんは丁寧に自己紹介をしてくれた
「立ち話もなんです。さぁさぁ、里の中へ」
「お気遣いありがとうございます。」
そして、私たちは里の中へと入っていった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は森の中を駆ける。恩人の元へと
「クソ、帝国の人間ども…もし仮にヘインさんのこと殺してたりしたら、タダじゃおかねぇからな…」
俺は過去に異形を他の傭兵から守ったことがある。その時に重症を負わされて瀕死になっていたところを俺はヘインさんに助けられたのだ。あれ以来俺は、ヘインさんのことを敬愛している
「…!!!嘘だろ、おい…!」
血まみれで倒れているヘインさんを見つけた
「脈は…ある、微かにだが…けどこのままじゃ…」
確実に死ぬ。それが日を見るより明らかだった
「クソが!時空魔法『停滞化』!」
俺は自身が持つ『時空魔法』で今のヘインさんの状態を今の状態のまま悪化させないようにした。
「来たのが俺で本当に良かった…!」
俺はヘインさんを背負い、里へと急いで向かった
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「なぜ、村の位置がバレたのですか?」
「捕虜にするはずだった帝国の兵士に、位置情報魔法が仕掛けられてあったんです。…そのせいでバレました」
「なんとも狡いことをする奴らですね…帝国の人間に碌な奴はいませんから、あまり、捕虜にしようなどと、画策しないほうがいいのかもしれませんね」
よくよく話を聞いてみると、この人、ラルフさんはこの里の長だったそうだ
「…『獅子』から連絡が来ました。いまからこちらにくるそうです」
「ありがとうございます。…最悪の報告も、覚悟しなければいけませんね」
メディさんはさっきよりも表情を硬らせた。
「…ただいま戻りました。長」
「!!ヘインさん…!?」
『獅子』は血まみれで、傷だらけのヘインを背負っていた
「大丈夫なんですか!?」
「…結論から申し上げますと、無事ではないですね、私めの魔法でこれ以上状態は悪化しませんが、逆に良くもなりません。脈も微かにある程度でしたし、おそらく、あのままでしたら確実に死んでいたでしょう」
「ぁ…」
メディさんは腰を抜かしたのか、涙ぐんだ瞳になっていた
「私の…せいで…私が…弱い…から…!」
メディさんは今にも泣き出しそうな声で、肩を震わせながら己を卑下した
「メディ殿…」
「…メディさんは何も悪くありませんよ。まだ意識が回復して何時間かしか経ってないですけど、少なくとも、私よりも、強いです。人のために泣けることって、素晴らしいことですよ」
「違います…!そう言う意味じゃない…!私が戦えてたら…こんなことにはなっていないんです…!私が弱いせいで…ヘインさんはこんなにも無理をして…!」
今にも慟哭しそうな感じでいたから、咄嗟に私はメディさんのことを抱きしめた
「確かにそうかもしれません。そこは否定し切れないところです。でも、メディさんだけじゃないです。悪いのは、私含めメディさん以外の異形の人たちも悪いんです。あの中に戦えるメンバーがヘインさんしかいなかった。みんな、ヘインさんの強さにかまけていたんだと思います。知り合ってそんなに経っていないし、あんまり里のみんなと話していない私が言うのはダメだと思うけど…責任はメディさん1人だけじゃないんです。…それに、全面的に悪いのは
「メイプル…ちゃん…」
メディさんは私の顔を見上げて、そうですね、といい
「今、悲嘆するのはやめにしましょう、それにまだ、完全には死んでいないんです。私が、治せばいい、この傷も、全部…!」
そう言ってメディさんは異形を使い、ヘインさんの治療を始めた
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