第15話 ハーメルンの復讐
グリム童話、ハーメルンの笛吹きのハーメルンは、ドイツ連邦共和国ニーダーザクセン州の工業都市ハーメルン=ピルモント郡の郡庁所在地である。
1284年、ハーメルンの町で大量発生したネズミ。ある日、色とりどりの布を繋ぎ合わせた服を来た不思議な男が現れ、報酬と引き換えにネズミを退治することを住民たちと約束した。住民たちは、まさか本当に男がネズミを退治するとは思ってなかったため安い約束だった。
男が笛を吹くと町中のネズミが一斉に集まり、男の後をついて行った。男はそのまま川まで歩いて入り、ネズミたちを1匹残らず溺死させることに成功した。男は報酬を求めたが、町の住民たちは男との約束を守らず報酬を支払わなかった。
男は一度街から立ち去ったが、6月26日。再びハーメルンにやってきた。笛を吹きながら町を歩いてくと、家から子どもたちが次々に出てきて男の後ろをそのままついていった。子どもたちは、二度とハーメルンの町に戻ることはなかった。その数130人。
子供の頃、お母様から聞いたお話。とても怖いお話。いつか私もハーメルンの笛吹き男に連れ去られてしまうのではないかと、耳を塞いだ。
お母様は
「音楽は人々を幸せにするけれど、不幸にもするの。音楽に隠された秘密があるのよ。」
「秘密?」
「そう、秘密。」
お母様は左手の人差し指を口元にあて、優しく微笑んだ。
ハーメルンの住民たちが報酬さえ支払っていれば、子供たちを失う事はなかったのに。いや、もしかしたら報酬を支払っていても、笛吹き男は子供たちを連れて行ったかもしれない。いや…そんな単純な話ではないだろう。ここまで人を操る事ができる男は、もっと計画的だ。男がハーメルンに来たタイミングが良過ぎる。ネズミが大量発生した理由を考えれば、男はハーメルンを下調べしていて、住民たちが報酬を支払えない事も計算済みだったはずだ。子供たちを最初から連れ去る気でいた。ただ住民たちを後悔させるためではない。全ては先の先まで計画した実験だった。
なんてね。
物語を深読みするのは好きだ。しかし深読みし過ぎると、どんどん現実離れしてしまうから加減が必要だ。
コンコン…
「どうぞ。」
「ゆづり様、紅茶をお持ちしました。」
「ありがとう、マーティン。」
「なにかお考え事でも?」
「今回…一之瀬君のお陰で、橋本を殺せて良かったわ。おまけにアリバイも作れたし。私は、ずっと病院で一之瀬刑事の弟を看病していた、その小さな証言で大きな効果がある。でも関わるのは今回までよ。」
「果たして、あの彼が諦めますかな。」
「大丈夫。もう彼の目に私は映らないから。」
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