第14話 2つの事件
ビル高層階のレストラン。朝の清掃員により、男女6人の死体が発見された。
「全員、国会議員とその妻です。死因はまだ不明ですが、毒物の線が濃いかと思われます。他殺の可能性が濃いですね。」
発見から現状を聴き、一之瀬晃は遺体を確認する。目、鼻、口、耳…全てから血が流れている。その他の外傷はない。
「事件前後と思われる時間の、建物内や近辺の防犯カメラ、全部あたってくれ。」
この遺体の状況は、あの時のコンサート会場の事件とよく似ている。だがしかし、空間が違いすぎる。
「この料理を出したシェフや他の従業員は?」
「それが…場所だけ貸し切りで、料理は別だったそうです。」
「この料理の出どころを調べてくれ。」
ひと通り見てまわった所へ仲川が汗をかきながらやってきた。
「仲川、一旦戻るぞ。」
「えー!せっかく来たのに。」
「じゃあ鑑識の手伝いにまわるか。」
「えー…それは遠慮します。」
「心臓を一発で撃ち抜かれてる、か。」
松村はしゃがんで、倒れている男の遺体を眺めた。顔はどこかで見たことがある。
「ただいま身元が判明しました!築附総合病院の医師、
名前を聞いて思い出した。捜査本部で、チラッと見ただけの写真の男だ。
「公園の防犯カメラに映ってないか、管理事務所に行ってくれ。あとは目撃者がいないか、付近の聞き込みを頼む。」
この広い公園だ。目撃証言は難しいだろう。松村はため息をついた。
目が覚めるとそこに天使が寝ていた。僕は死んで天国に来たのだろうか?前髪から覗く長いまつ毛。人形のように整った顔。白い肌に薄いピンクの唇…。神代ゆづりだ。椅子に座り、壁にもたれかかって寝ている。そうか、これは夢か。いや、これが走馬灯か!こんなにも幸せなら、死んでも悪い気がしない。
「あら、目が覚めたかしら?」
看護師が入ってきた。同時に、ゆづりも目を覚ます。
「あ、はい!あの、ここは…?どうして僕はここにいるのでしょう?」
「昨日の夕方、あなたが熱射病で倒れたと、神代さんがここに連れてきてくれたのよ。覚えてない?」
「神代さんが僕を抱えて…。」
「安心して。抱えたのは、ウチの執事だから。」
「あ、はい…。」
「神代さん、昨夜からずっと付き添ってくれてたのよ。帰ってもいいって言ったんだけどね。」
「そうなんだ、ありがとう神代さん。」
「大丈夫なら、お家に連絡した方がいいと思う。」
「そうだね。」
そう言うと一之瀬亮は
「うわ、ヤバい!母さんから鬼着信が…。」
くす…
一瞬だけ。ゆづりが笑った。一之瀬亮は、ゆづりの笑った顔を見逃さなかった。
「じゃ、私は講義があるので帰ります。一之瀬君、お大事に。」
「あ、ありがとう!神代さん!」
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