第6話 捜査終了
「はぁ⁉︎犯人が捕まったから捜査終了⁉︎」
富永慶介の自宅を訪ねてまもなく、松村から連絡が来た。
「仲川、すぐ本部に戻れと命令だ。」
「来たばかりなのに?」
「富永さん、犯人が捕まったそうです。また、お話を伺うかも知れませんが、今日は失礼します。」
「ええ…わかりました。」
刑事が来たと思ったら、なにも話せないまま犯人が捕まったという事態に、富永紗矢は困惑した。
「仲川、犯人は自首して来たそうだ。」
「え、あれだけの騒動を起こして自首?」
富永紗矢に軽く会釈をし、一之瀬は車を走らせた。
「
「毒ガスを仕組んだ形跡はありませんでしたけど…。では、今度は犯行に使用された毒ガスの入手先を調べます。」
「それがな。」
松村はよく聞けと言わんばかりに間を置いた。
「捜査は犯人が捕まった、で終了だ。」
一之瀬は松村の顔をじっと見た。
「そういう事だ。」
これ以上調べられると困る上層部からの圧力。犯人を適当にでっち上げて、揉み消すらしい。
「それと渡辺が他に三人、
「なにがどうなってるんすか?」仲川がぼやいた。
「終了だって事だよ!」
一之瀬が仲川の背中をバンッと叩いた。
「イテっ!一之瀬先輩、痛いっすよー!」
コンサート会場での捜査は打ち切り。でも、まだまだ終わらない
殺された両親。人質に取られた妹。この殺戮を断れば、妹はどうなってしまうのか。私は
「
マーティンがハーブティーの用意をしていると、ゆづりの部屋からバイオリンの音色が聴こえて来た。曲はヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲の【G線上のアリア】。正確にはアウグスト・ヴィルヘルミが考えた、バッハの原曲のニ長調をハ長調に移調し、G線だけで曲全部が弾けると言う仕掛けがある曲だ。
(曲が終わるまで、お茶は後にしよう)
マーティンはゆづりの曲に耳を
留置所では、覚醒剤の切れた渡辺剛志が何かを叫んで暴れていた。
「あいつらが!ブツの代金!代わったんだ!借金が…借金チャラで!あははは!俺がやった!俺が、俺が、俺が?やった?あー、チャラだ。ひひひひひ…。」
壁に頭突きや体当たりをする。そしてズボンを脱ぎ、
「なぜ
知らせを聞いた松村は怒鳴り散らした。見回りの警察官が来た時には、渡辺剛志は捻ったズボンで首を締めた為、意識不明だった。
「来た時は、拘束確認しました。」
「どうなってるんだ、一体…。」
首に指を当たると、まだ息はある。
「救急車だ!病院に運べ!」
渡辺剛志は病院に運ばれた。救急入口で待っていたのは橋本医師だった。
しばらくして、橋本が集中治療室から出てきた。
「残念ですが…」
「くそっ!」松村は壁を殴った。
「ここは病院です。乱暴はおやめください。」
「ああ、すまない。」
「看護師に書類を持って来させます。では。」
松村を後にし、橋本は
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