第173話 敗北、真理と達也(5/2)
あれからも僕達サイコ部隊は、達也達と激しい戦いを繰り広げていた。
僕は達也と一対一で、虎太郎さんと悠里さんがペア、綾音さんと茜さんもペアで変異体達と戦っている。
僕と達也は良くてなんとか互角、サイコ部隊の皆はかなり押され気味の様だ。
元々向こうの方が数が多いし、ジェネラルと呼ばれる個体の能力も不明だから後手に回るのも仕方がない。
「きゃあっ!」
「くそっ! 大丈夫か!?」
見ると、米倉=婦人警官のジェネラルから飛び道具の様な銃弾が発射され、虎太郎さんが倒れた悠里さんを庇うようにハンマーで防いでいる。
そのまま動かずに変異体達を牽制している様だけど、その虎太郎さんの片腕は負傷したのかダラリと下げられていた。
そのままではまずいと思った僕は二人の盾になる様にサイコバリアを生成し、二人に襲いかかる変異体にサイコバレットを撃って援護する。
「どこ見てやがる! オラァ!」
よそ見して油断していた僕に、達也の豪快な蹴りが飛んでくる。
(ゴッ!)
「ぐあああっ!」
これはアバラが何本か折れたかも……
僕は転がった後、空に逃れつつ脇腹に手を当てて
結構重症だったと思ったけど数秒で回復した。
ふう、これならまだ戦える。
……
「茜!」
「お姉! 助けて!」
どうらや茜さんがピンチみたいだ。
明日奈さんの幼馴染に似たジェネラルの一体に、上半身をぐるぐる巻きにされて拘束されてしまった様だ。
綾音さんも、達也の先輩に似たジェネラルと変異体達に追い詰められている。
とりあえす僕は達也を警戒しながらパワーアップしているサイコバレットを放ち、茜さんを拘束しているジェネラルの腕を集中砲火で切断する。
茜さんは何とか残りの拘束を自力で外して難を逃れた。
これはバラバラに戦ってもまず勝てないだろう。
僕は更に牽制で戦場全体にサイコバレットをばら撒いて、
(みんな、バラバラに戦っては駄目だ! 一旦僕の近くに集まって!)
((((了解!))))
……
何とか校庭の中央部に集まった僕達は、達也を先頭に変異体に半包囲される形になった。
悠里さんは足を撃ち抜かれた様で、虎太郎さんに肩を借りている状態だ。
その虎太郎さんにしても片腕を怪我しているみたい。
綾音さんは長い髪と衣服の一部が焦げている以外は健在だったけど、茜さんは細かい打撃を受け続けたのか満身創痍だ。
「冴賢! くたばりやがれ!」
その時、達也が僕達に向け腕をクロスさせて斬撃を放ってきた。
まずい! サイコバレットを丸ごと消し去った攻撃だ!
僕は前に出て、自分と皆を守る様にサイコバリアを展開する。
(バリン!)
バリアが簡単に割れてしまった!
あの黒い爪はサイコバリアも無効にするのか!
「ぐうっ」
余波で僕も少なくないダメージを負う。
「死ねっ!」
そこに再度飛び込んで来た達也の黒い爪が、僕に向かって来た!
ヤバい! サイコアクセル!
とっさにサイコアクセルを発動してスローな世界に入った僕は、心臓を狙ってくる達也の攻撃を躱そうとする。
サイコアクセルは体感時間を引き伸ばせるだけの能力だ。
心臓への攻撃は何とか躱したけど、達也の爪が僕の肩に食い込む。
「がああああ!」
僕は電撃で撃たれた様な、体中が痺れる痛みを感じて倒れた。
これが
(
アイジスの言う通りにサイコ纏いも解除されてしまった。
ううう、身体に全然力が入らない……
「冴賢殿!」「隊長!」「大将!」「冴賢君!」
サイコ部隊の仲間が僕を心配して叫んでいる。
「ふ〜。覚悟はいいか? 死ねえ!」
くっ、これまでか……
サイコ部隊のみんな、逃げて……
「やめてー!!!」
この絶体絶命の状況で幼馴染の少女の声が。
あの時、達也と一緒に僕を裏切った幼馴染の真理の叫び声が響いた。
ーーーーー
突然飛び込んで来た幼馴染の真理が、今にも僕を殺そうとする達也の前に両手を広げて立ちはだかった。
「お前! 真理じゃねえか! 生きてたのか!」
「東堂君……お願い、ひー君を殺さないで!」
「や、やめろ……真理……逃げるんだ……」
達也が嬉しそうに、真理は決死の覚悟を決めたような表情で会話する。
「まさか、ここで冴賢と一緒にいるとはな。お前、俺と一緒に冴賢を見捨てたじゃねえかよ、忘れたのか?」
「もちろん覚えてる! ずっと、ずっと、ずっとそれを後悔してるの! あの時、なんでひー君を助けなかったんだろうって! でも、そんな私をひー君は助けて迎え入れてくれた!」
「まあ何でもいいや。冴賢はここで絶対に殺す! お前は俺と一緒に来いよ。人間の中でお前だけは生かしてやってもいい! 今の俺はゾンビどもを操れるんだぜ? 世界が滅びる様を安全な特等席で見せてやるぜ!」
「私は一緒になんか行かないし、貴方なんか大嫌い! 貴方のせいで私はひー君を一度失ったの! その時に気付いた! 私が本当に大切にしたかったのは、ひー君だったって!」
真理の言葉を聞いて、達也の顔が怒りで険しくなる。
「何だと! 俺の事が好きだったんじゃねえのかよ!」
「確かにそう思った時もあったけど、それは錯覚だったわ! あの時の私は貴方が持つステータスに憧れていただけ。私が本当に好きなのは、一緒にいて心が温まるのはひー君だけなのよ!」
「いい度胸だ! お前の魂も喰らって、俺の糧にしてやるぜ!」
「いいわ! 私はもう死ぬ事なんて怖くない! 私が恐れるのはひー君を失う事だけ!」
「ちっ! お前も、冴賢も、何もかもぶっ殺してやるぜ!」
「ま、真理……」
その時、殺られる寸前の僕達の前に多数の煙が立ち上がり、視界を覆い尽くしたんだ。
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