第166話 恨みを抱く者(四人のジェネラル)

俺の名前は大田剛介おおたごうすけ、かつて高校生だった者だ。

死んで生まれ変わった今はアルファと呼ばれている。


俺は小さい頃から体が大きくて喧嘩も強く、面倒くさいから武道はやってなかったが生まれながらの強者だった。


東堂達也とは同じ中学の先輩後輩の関係だったが、中学の時に目立つ男だった達也を〆てやろうと校舎裏に呼び出し、その時にどうやら俺の親の務める会社の社長が達也の親だったらしく、それを達也から知らされた俺は奴にヘイコラする様になった。


そんなカードを持っていたとは用心深い奴だと思ったが権力者には逆らえない。

長い物には巻かれろという事だ。

突っ張るのはいいが生活出来なくなっては困るし、何だかんだで親に迷惑は掛けたくないしな。


パンデミック発生時、中学の後輩だった達也たちと共に逃げて避難した俺は、達也にそそのかされて、荒井冴賢という男と敵対した。


見た感じ強そうには見えなかったんで楽勝だと思ったが、信じられない事に俺以上に力が強く、何よりその氷の様な表情から意思が強そうに見えた。

まるでこの世の地獄でも見てきたかのようだ。


俺は達也に、奴はやべえ敵対するとかねえぞと言ったが受け入れて貰えず、奴の取り巻きと共に奴を罠にハメる事に手を貸すことになり、結果として足を斬られて失血して死ぬ事になった。


くそっ! だから言ったのに!


だが邪悪そうな神に救われた俺は、奴への復讐を誓って魂を売り渡したんだ。

どうやら達也が王様らしく立場は変わらないが、まあそれは良いだろう。


神に新しく生やして貰った足は凄え早く移動できるし、皮膚を硬くする事も出来る様だ。


この力で今度は奴を、荒井冴賢を潰してやるぞ!





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俺の名前は杉下康太すぎしたこうた、高校生だ。

でもそれは少し前の話で、今はベータと呼ばれている。


俺には幼馴染の女がいた。

同じマンションに住む桑田明日奈だ。

明日奈は小さい頃から可愛くて、成長するに従って更にスタイルも良くなり、俺は明日奈を自分の物だと考えた。


男らしく強引にしなければと考えた俺は、真面目な明日奈に対して独善的に、そして自分の彼女であるかの様に振る舞った。

嫌がっているふりをしているが明日奈も本当は嬉しいはず。


高校は明日奈の親から入手した情報もあり、塾にも通ってなんとかギリギリで同じ学校に入学する事が出来た。

クラスが別になってしまったが偶に友人に会いに俺のクラスに来ている様だ。

だが本当は俺に会いに来ているんだろう。


そんな中、パンデミックが起こり、俺はクラスの友達や明日奈の友人も連れて崩壊する学校から逃げ出した。


明日奈は荒井とか言う男の事を気にしていたが、そんな奴ほっとけばいい。

無理やり連れ出して逃げた俺達は夜になってビルに隠れたが、その状況で他の奴が暴走して明日奈の友人を襲おうとした。


俺はそれを見て見ぬふりをする。

始まったら、この際明日奈は俺がいただいちまうか? そう思った矢先、二人して走って逃げてしまった……


その後、ゾンビを避けつつ逃げ出したが全然見つからない。

そのうちならず者達に目を付けられ、女がいると聞いた奴らに急かされて探す事になった……まずいぞ、これは。


やっと見つけたと思ったら例の荒井とか言う奴と一緒だった。

隙を見て明日奈だけ連れて逃げようとしたが、荒井がならず者を一瞬で叩きのめしたんだ。

あいつ、こんなに強かったのかよ!


残りの者達と一緒に逃げ出したが、逃げた先でならず者に報復として刺し殺されてしまった……くそう、あいつのせいだ……俺の女を取りやがって!


そして邪悪な神に救われた俺は、凄い力を手に入れた。


待っていろよ荒井冴賢、明日奈は俺の女だ!





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俺は都内で暴れまわってた武装グループのリーダーだった男だ

今はガンマと呼ばれてる。


俺はスラムで生まれ育ち、親も俺には関心が無かった。

この世には神もいなけりゃ仏もいねえんだよ。


アウトローだった俺はパンデミックが始まった頃、やりたい放題に暴れ回った。

そして自分の王国を作ろうと思ってたんだ。


だがそこに一人の男が現れた。


ソイツは神の如く青白く輝き、俺達じゃあ全く歯が立たなかった。

たぶん軍隊でも同じだろうな。


俺は両手足を斬られてダルマの様になって殺された。


だが俺が苦しんで死んだ後、暗闇で俺に囁く声が聞こえた。

もっと暴れたくは無いかと。


俺はその声に頷く。

そして最強の肉体を手に入れたんだ。


もっともっと暴れ回り、俺を受け入れなかったこの世界を目茶苦茶にしてやる!





ーーーーー


私の名前は米倉綾よねくらあや、警察官よ。

今はデルタと呼ばれているわ。


地元の大学を卒業して警察官採用試験に合格した私は、警察学校を経て警察官になった。


絶対に警察官になりたい訳ではなかったのだけど、父と伯父が警察官だった事もあり、大学の皆と同じ様に普通の会社勤めよりはマシだと思えたからだ。


そんな中パンデミックが発生し、私達警察官は配属された警察署に立て篭もって大勢の避難民を保護する事になった。


そしてある時、近隣の避難所から警察官の応援の要請があったので、二人の男性警察官と向かう途中、ならず者の男達に騙されて捕まってしまい、仲間は殺され私は凌辱された挙げ句、元から囚われていた女性達と共にアジトに監禁される事になった。


絶望する私達だったけど、ある日突然救われる事となった。


一人の男子高校生を名乗る者が、ならず者達を全員倒したと言って私達を解放し、奪われた拳銃も返してきたからだ。


現場を見に行くと不可解の連続だった。


鋭い刃物の様な物で切断されているたくさんの死体。

硝煙の匂いがして銃を撃った形跡があるけど不自然に床に落ちている弾丸。

明らかにおかしい。


それに一緒に警察署に戻る時も、感染者の動きが手に取る様にわかるみたいだったし、倒す時も全て一撃だった。


こんなの絶対普通じゃない。

この子は確実に何かを隠している。


それとなく聞いてみたけど、はぐらかされてばかりだ。

そして警察署まで到着した時、直ぐに行ってしまうと言う。


何とかしてこの子の秘密を暴きたい!


もし暴いた秘密が私が使えるような物なら、私は署の英雄になれるかも知れないし、そうでなくとも昇進にも繫がるかも知れない。


その後、無理に逮捕して引き留めたけど上司に大目玉を食らった上に逃げられ、同僚をそそのかして再度逮捕に行ったり、公務執行妨害を理由に拘束しようとしたけど、全く敵わなかった。


最後にあいつに顎を砕かれた私は避難所で痛みに苦しむ毎日だった。

そして最期にはゾンビの大群がやってきて、私を含めて避難所の人間は皆が死ぬ事になってしまった。


邪悪な神が私に問う。

神の使徒である荒井冴賢に復讐したくないかと。


あいつが私に全てを話していれば私は痛い思いをしなくて済んだし、こうやって死なずに済んだのかも知れない。


私は邪悪な神に魂を売ることを選ぶ。

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