第121話 悪化する治安(12/25〜12/26)

クリスマスでケーキやおもちゃを住民の方に配布した後、僕達は解散して各自ケーキとかおもちゃを持ち帰り、クリスマスパーティーは個別開催とした。


僕達も自宅に帰って明日奈さん、莉子さん、秀彦君と美味しい料理とケーキ、クラッカーなども鳴らして楽しいクリスマスパーティーを行なった。


プレゼントでおもちゃを貰った秀彦君は凄く喜んでくれた。

こんな大変な世の中になって親御さんも亡くなってしまったけど、秀彦君の記憶に残る楽しい一時になればと思う。


それから僕は明日奈さん莉子さんそれぞれと二人だけの時間を作って、アイテムボックスから探して事前に準備しておいたペアリングをプレゼントとして贈った。


二人とも凄く喜んでくれて、節度を守りつつだけど恋人同士の甘い雰囲気を楽しむのだった。





ーーーーー





楽しいクリスマスの翌日、ホワイトフォート内でのサイコ武器の展開を検知した僕はサーチで表示される場所に急いだ。


着いてみると、憤怒の形相をした茜さんが綾音さんに両肩を抑えられていた。

茜さんは展開したサイコブレード(薙刀)を持ち、その直ぐ側には斬られて血みどろになった男達と、乱れた衣服を押えて泣いている高校生の女子が二名いる。


綾音さん茜さん達救助隊員には事前にサイコストーンを渡してあるので、それを使ってサイコ武器を展開したんだろう。


坂部避難民グループは様々な問題を起こして食堂や店舗を出入禁止になってしまった為、住民は自力で食料購入を出来ない。


そこで定期的に必要な人数分の食料品等を届けるようにしている。

女子達は悠理さん麾下の高校生達で、それを手伝ってくれている人達だと思われた。


「綾音さん、茜さん! 一体どうしたんですか!?」

「冴賢殿……」

「こいつらがっ!」


「……うう」

「うあっ……」

「……た、助けて」

「ぐうっ……」

「い、痛え……」


綾音さんは僕を見て申し訳なさそうにし、茜さんはまだ激昂している様だ。

倒れている数人の若い男達は死んではいないけど皆がかなりの重症に見える。


僕は茜さんのサイコ武器を消去して高校生の他の女子に泣いている女子二人を頼み、男子には手分けしてパパと治療院の川上京子先生を呼びに行ってもらい、その間に綾音さん達から話を聞く事にした。


簡単に話を聞くと、大人数の参加により治安の悪化を懸念した綾音さん達が自主的に手分けして見回りを行ってくれていたところ、茜さんが叫び声を聞いて駆け付けると、女子二人が男五人に襲われているところを発見したとの事。


そして、それを咎めたら男達が茜さんにも襲い掛かって来たので、サイコ武器を展開して撃退したという事だった。

綾音さんは男達を殺さない様に茜さんを宥めてくれていたとの事。


「これは! 将司、大丈夫か! なぜ、こんな血だらけになって……」

「お、親父……痛えよ……そこの女にやられたんだ……」


「何だと! よくも将司を! この殺人鬼め!」


坂部避難民グループのリーダーの坂部さんがやって来て、自分の息子が血だらけになっているので切れまくっている様だ。


そこにやっとパパや川上京子先生も駆け付けて来てくれた。

パパ達とは家が近いので、虎太郎さんもついでに連れてきてくれた様だ。


川上先生は直ぐにその場で斬られた男達の応急処置を始める。


「冴賢、緊急事態だと聞いたが、これはどういう状況なんだ?」

「荒井さん、この女が人を襲ったんですよ! なぜこんな危険な女を野放しにしておくんです! 私の息子をどうしてくれるんですか!」


「待って下さい。茜さんは悪くありませんよ。そこの人達が女子高生を襲っていたそうですから!」


パパからの状況確認に坂部さんが割り込んで来たけど、僕は簡潔に茜さん達を擁護した。





ーーーーー





僕は綾音さん茜さんを交えてパパに状況を説明した。

念のため襲われたという女子二人にも、パパが個別に事情を聞いた。


既に川上先生による簡易的な治療は終わっており、男達は怪我もあって青い顔で横たわっている。

一応手加減はしてくれた様で、直ぐに死ぬ様な怪我では無い様子だった。


「その男達は一ヶ月後に壁外に追放だ。流石に今直ぐだと殺すのと変わらないからな。このホワイトフォートでルールを守らず治安を乱す者は許さん!」


「そんな横暴な! 裁判も無しにこちらが悪いと決め付けるのはおかしいでしょう! 女達が誘ったのかも知れない!」


「バカを言え、裁判所なんか何処にある? それに平坂家はここで救助活動にも多大な貢献をしてくれているんだ。今回は状況証拠とその証言だけで十分だ。代表である俺の決定に従えないのなら、今直ぐにここを出て行っても良いんだぞ!」


坂部さんがパパに一喝されて黙る。

周りにいた坂部避難民グループは皆が不満そうな感じだった。



その後パパと少し話した後、サイコストーンを再生成して茜さんに手渡した。


「茜さん、これ新しいサイコストーンです。今回は未然に暴行を防いでくれてありがとうございました。綾音さんも助かりました。パパからもお礼を言っておいてくれと言われています」


「いいえ! 私は思わず切れて暴れちゃっただけで……」

「茜が少々やり過ぎましたので、荒井殿と冴賢殿にそう言ってもらえると助かります。婦女子を手籠てごめにしようとするやからは許せませんが」


取り敢えずパパの指示で、今後の坂部避難民グループへの食料品運びは男性限定とし、さらに男性を中心とした自警団を組織して見回りを行なう事になった。


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