第120話 避難民への対応(12/18〜12/25)

大勢の避難民をゲートに通した後、パパは避難民の代表である坂部さん副代表の奥田さん達と協議し、ホワイトフォートに住む上でのルールを設定していった。


とりあえずこの大人数のグループは避難民のリーダーの名前を取って、坂部避難民グループと名付けられた。


その間に避難民の方は各自の名前を記録させていただいた上で、応急的に門近くに用意したテントで休んでもらう事になった。

もちろんテントや毛布はアイテムボックスからの持ち出しだ。


負傷者は高校の養護教諭だった川上京子先生に出張していただいて、簡易的な治療テントで開設した臨時治療院で対応してもらった。


幸いにもゾンビウィルスに感染している人は一人もいなかったんだけど、もしかしたら白蛇さんの結界のお陰なのかも知れない。


避難民への食事も明日奈さんと莉子さんや、悠理さん麾下の高校生達にも協力してもらい、おにぎりや味噌汁、簡単なおかずなどの炊き出しを行なった。

避難民の方は今までの食事事情がよほど悪かったのか貪る様に食べるのだった。


その後、僕は丸一日ぐらいかけて、ゲートに近い200軒ほどの家の電気・ガス・水道の整備を行ったので、今回やって来た坂部避難民グループの人はその家を使う事が出来るようになった。


パパと避難民のリーダー達との取り決めで、とりあえず来年の春まではホワイトフォートで暮らせる事になった様だ。


来年の春以降は残りたいという希望者をパパの方で選別し、合格した者だけを受け入れる事になるとの事。


希望者は必ずいるだろうから責任者として坂部さん、奥田さんはここに残りたいという申し出があったようだが、それはパパの方で保留にしたそうだ。


今までの人口が650人程だったので、正式な住民ではないにしろ約1000人ぐらいがホワイトフォートで暮らす事になったんだ。





ーーーーー





坂部避難民グループの人達がやって来て一週間、ホワイトフォートのあちらこちらで問題が発生していた。


まず、集約店舗での食料品や各種生活用品の買い占めが発生した。


集約店舗は全て無料で対価が不要のため、坂部避難民グループの人達が大量に買い占める人が多く出て、店員さんが注意をしても聞かない人がいた結果、自炊している元からいた住民や、お年寄りなど本当に必要な人まで物資が行き渡らない事になってしまった。


小谷静香さんのグループが営む服飾系の商品も同様で、一人で一度にたくさんの物を持って行ってしまって、商品が枯渇して困っているとの報告があった。


悠理さん麾下の高校生達が営むパン屋もまた同じで、パンが焼き上がっても直ぐに坂部避難民グループの人達が全て持って行ってしまい、給食用に焼いたパンまで勝手に持って帰ってしまった人もいて、昼食が届かないなど学園にもかなりの混乱が生じていた。


無料の食堂でも坂部避難民の人達が自分達はお客様だと、毎日毎食に大挙してやってきて我が物顔で振る舞っているとの事。


今までホワイトフォートに居た人達は徐々に生活が改善して行ったので、それに合わせて馴染んでもらっていた事もあり、あまり問題は起きなかったのだけれど、今回参加した坂部避難民グループの人達は、何も無いところから急に物資が溢れるところに来てしまった為、確保しておきたいという心理が働いているのでは無いかと思う。


ホワイトフォートの代表であるパパはこの事態を知って激怒し、坂部避難民グループは食堂や店舗への立ち入りは一切禁止となってしまい、この一件でリーダーの坂部さん達との折り合いも悪くなってしまった様だった。


僕もパパから各種の在庫の補充などを命じられて大忙しとなった。





ーーーーー





でも悪い事ばかりではない。

今日はホワイトフォートで迎える初めてのクリスマスだ。


僕達は事前に告知した上で少しだけ雪がちらつく中、街の中央広場でアイテムボックスから沢山のチキンやピザ、クリスマスケーキ、子供達へのクリスマスプレゼントのおもちゃを取り出して、皆さんに配布していった。


「メリークリスマス! これどうぞ〜」

「はい、おもちゃだよ!」

「いっぱいあるからね〜」

「ケーキもチキンもありまーす!」

「は〜い、どうぞ〜」

「おう、これ持ってけ!」


「わ〜! ありがとう!」

「やったー!」

「わ〜い! おもちゃだ!」

「ケーキ美味しそう!」

「まあ、美味しそうなチキン!」

「大っきいお兄ちゃん、ありがとう!」


明日奈さん、莉子さん、悠理さん、綾音さん、茜さん、虎太郎さん、光司君、美久ちゃん、明人君達も皆がサンタコスプレで、ケーキや、小さな子供たちには袋に入ったおもちゃを配ってくれる。


こんな世の中だけど、配る僕達も貰う住民の方も皆が最高の笑顔だ。

とりわけ、おもちゃを貰った子供達の笑顔は輝いていた。


僕は、いや僕達はこれからもこの笑顔をずっと守り続けてゆきたいと思う。


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