第107話 集落の充実(10/22〜11/2、サイコボウ)
この前助け出した高校生達を迎え入れてから10日ほど経ち、集落の人口は550人程度になった。
あれから高校生達は生徒会長の細井さんに振り分けてもらい、男女別にいくつかの家に別れて生活してもらっている。
避難先だった学校の生活と異なり、電気・ガス・水道や各種の家電、お風呂が使えて三食食べられ安全なので、希望に満ちて生き生きと生活している様子だった。
感染から回復した養護教諭だった川上京子先生は、集落で唯一の治療院を少数の生徒と一緒に開いてもらい、ちょっとした怪我の治療をしたり僕が卸した薬を取り扱ってもらっている。
この集落にはお年寄りも多いし、持病を抱えた人もいるので大助かりだ。
それに料理好きな高校生達でパン屋も始めてもらっていて、これも凄く好評だ。
給食用のパンもついでにここで焼いてもらい、お昼に届けてもらっている。
生徒達も今までと違った色々なパンを食べられることが出来て満足そうだった。
また高校生達は他にも食堂の手伝いや、美容院の見習い、農業、養鶏など自分達で野菜を育て始めたりもして、まだまだ生産性は低いけど集落での生活に意欲的に取り組んでくれている。
その中から勉強が得意な数名で白蛇学園を手伝ってもらえる事になり、明日奈さん、莉子さんの負担もかなり減った様だった。
今後人口が増えるに従って生徒数は増えると思うので、ある程度多くなったらまた増員が必要になるかも知れない。
もっと生活に余裕が出来れば中学までではなく高校や大学を作り、希望者にさらなる学びの場を与えるのも目標としている。
壁の外の話では、変異体の出現で生存者の救出を急ぎたいところだけど、パパの指示で一人では動けず、今のところ虎太郎さんとのペアで動いている。
けれど、僕の超能力で作成した武器が使える事が虎太郎さんとの実験で分かったので、それを使って救助活動をもっと組織的な物にしても良いかと考えている。
ーーーーーー
「あの……すみません」
「あ、生徒会長の細井さん、こんにちは。今日はどうされました?」
前に救出した高校生達を纏める生徒会長の細井さんが、僕達の家を訪ねて来た。
自前の弓も携えて何やら神妙な様子だ。
「はい。壁の外に出る救助隊に私も入れて欲しくて、それを言いに来ました」
「えっ、救助隊にですか!? もの凄く危険ですよ?」
僕は驚いて戸惑った。
確かに壁外への救助隊を募集はしているけど、もの凄く危険な仕事だ。
パパに認められたメンバーは、今のところ僕と虎太郎さんしかいない。
悪いけど非力そうな女性である細井さんに務まるとは思えなかった。
「危険は承知の上です! 私、元弓道部で弓が得意なんです。運動神経も良い方ですし、あの……女性では参加は駄目でしょうか……」
弓が得意か、遠距離なら危険は減るとは思うけど……でも確かこの人って……
「そう言えばあの時、学校の校庭で感染者に弓で応戦していましたよね? 僕、遠目ですが見てましたよ! 凄かったです」
「いえ、私なんか! 弓は連射出来ないので、結局最後は追い込まれてしまいましたし……」
僕はサイコブレードとサイコバレットで遠近両方の対応が可能だけど、虎太郎さんは近距離専門なので、弓で遠距離から援護できる存在がいれば、より安全に救助活動が出来るかもしれない。
僕は試しに彼女の弓を真似て
青白く輝くサイコボウだ。
「それは! 弓ですか?」
「はい。何となく作れるのかな? とやってみたんですが、良く考えれば矢が無いですよね? これ」
僕がダメ元で弓を引いてみると、何と青白く輝く細い矢が現れる!
ビックリしてそのまま上の方に発射してしまった。
僕が慌てて爆発しろ! と念じると矢は空中で爆発を起こして消滅した。
「ふう、ビックリした。大丈夫でしたか?」
「はい……その弓を私にも見せていただけますか?」
「どうぞ。僕以外の人が使えるかどうか、わかりませんけど……」
細井さんはサイコボウを手に取ると綺麗な所作で弓を引いた。
するとやはり同じ様に矢が現れる。
原理は分からないけど、そう言う物なのか……
その後、色々と実験してみた結果、僕の
百発百中とは行かないけど命中率と威力も高く、これなら変異体が腕でガードをしても腕ごと貫けそうな感じだ。
さらに僕がやったみたいに爆発させる事も出来るようだったけど、上手く着弾時に爆発させる事は出来なかったので、この辺は練習が必要なのかも知れない。
サイコボウを使えば細井さんは今後は遠距離戦力として役に立ってくれそうだ。
救助隊に参加出来るかどうか、後はパパの判断に任せようと思う。
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