第86話 水道と電気の復旧(8/21)
僕は歓迎会様に各種バーベキュー用具と肉や野菜などの大量の食材、それを調理したりする台とかをアイテムボックスから取り出し、歓迎&顔合わせ会の準備自体はママに一任した。
「さあ〜みんな、歓迎会の準備頑張りましょうね〜」
「「「はーい!」」」
ママが明日奈さん、佐々岡さん、各棟からお手伝いの班員たちに指示して準備を行ってゆく。
光司君は夜店の焼きそばを作りたいとの事なので、せっかくだから機材や食材等を用意してあげた。
美久ちゃんもお祭りみたいだという事で凄く乗り気だったけど、火傷などに気を付けて調理してもらえればと思う。
歓迎会の準備の間、僕とパパは集落の各家庭の水道と電気を復旧して回る予定だ。
まずは一番近い武田さんの家からだ。
(ドン、ドン!)
「武田さーん!」
パパが武田さん家の玄関を叩いて呼び出す。
「はい?」
真理の母親が顔を出した。
パパの後ろにいる僕を見て少し顔が強張っている様だ。
たぶんだけど真理に真相を聞いたんだろう。
「あ〜お宅の電気と水道を復旧させに来たんです。ガスは使えていますか?」
「え、ええ。ガスは使えます」
「じゃあ電気と水道だけか。冴賢、頼む」
「うん」
僕は武田さん家の水道と電気の引き込み口を見つけ、
「OK。パパ終わったよ」
「わかった。武田さん! 水道と電気が使えるかを確認して欲しい」
「ええと、わかりました。真理、水道は出る?」
「出たわ! 電気もつくみたい! これでお風呂にも入れる!」
「荒井さん、これは一体?」
いつの間にか真理も出てきて確認に加わった様だ。
最後はオジサンも出て来てパパに状況を尋ねた。
「今、集落のインフラを復旧して回ってるんです。あ、今日の夕方は新しく来た避難民の歓迎と顔合わせ会がありますので、全員で来て下さいよ」
「え、ええ」
「わかりました」
「ひー君、私も行って良いの?」
真理が出て来て僕に聞いてくる。
「……僕の歓迎会じゃないからね。来てくれて問題は無いと思うよ」
「そう……ありがとう」
真理は少しホッとした顔だ。
そして真理の両親が神妙な顔で僕に謝罪してきた。
「冴賢君、申し訳無かった。真理に全て聞いたよ、君が言ったことは全部本当だった。疑った私たちを許して欲しい。そして真理が申し訳ない事をして本当に済まなかった」
真理の父親、武田さんが申し訳無さそうに言って僕に頭を下げる。
「本当に疑ってゴメンなさい。まさか冴賢君を真理が見捨てるとは思わなくて……でも真理は流されてしまっただけなのよ! 東堂とかいう人にそそのかされていたみたいなの、真理を許してあげて!」
「お母さん、もうやめて! 私が悪かったの……」
真理が最後は母親の言葉に被せるように叫んだ。
言い訳は出来ないと自分でもわかっているんだろう。
「いえ、僕は許していますよ。ただもう昔の様な仲には戻れないだけです」
僕がそう言うとパパは何も言わず、武田さん一家は悲しそうに目を伏せていた。
ーーーーーー
その後、僕とパパは集落中を駆け回って夕方迄にインフラを復旧させていった。
ガスが切れていた家庭にはアイテムボックスから取り出して交換も行なった。
これで集落の各家庭ではお風呂にも毎日入れるし、掃除、洗濯、炊事などあらゆる家事が捗る事だろう。
冷蔵庫や電子レンジ、お湯を沸かす電気ケトルの復活も凄く大きい。
かなり現代的な生活を取り戻せるはずだ。
もし家電の不足があれば、申し出てくれれば新品を用意できる事も伝えておく。
ご高齢の家庭や小さい子どものいる家庭には、特に喜びが大きかった様で物凄く感謝される事になった。
パパは行く先々で皆に集落の代表や責任者になってくれと頼まれているようだ。
それはたぶん今回の事だけではなく今までの積み重ねであり、それだけ集落の人達から信頼されているという事なんだろうと思う。
さすが僕のパパだ。
僕はパパを凄く誇らしく思った。
これで後は強固なバリケードを構築して安全対策を行ない、徐々に食糧生産量を増やして行けば自給自足生活を送れるようになるはずだ。
とりあえず1000人が豊かな生活を送れる町を目指して頑張ってゆく事にしよう。
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