第84話 白蛇さん再び(8/21)

「……起…なさ…」


僕は誰かに呼び起こされた様な気がして目を覚ました。


そして辺りを見回すと真っ白い空間にいた。

たしかキャンピングカーで寝たはずなんだけど……


「やっと起きたかしら?」


声がした足元を見ると、なんと白蛇さんがいた!


「し、白蛇さん!」

「ふふっ! 畏まらずとも良いわ。あれから頑張っている様ね」


僕が慌てて跪こうとすると白蛇さんが止め、逆に僕を褒めてくれた。

嬉しさが込み上げて来るけど全部白蛇さんのお陰だ。


「そんな! 全て白蛇さんのお陰です! 毎日凄く感謝しています!」


「ふふっ! 知っているわ。あの祠は実は私と繋がっているの。アイテムボックスにあった頃からあれを通してあなたをずっと見てたのだけど、やはりあなたは私が思った通りの人間だった。力を手にしても決して驕らず、命の大切さを感じて他者を思いやる優しい心を持っている。このまま精進してゆきなさい」


「ありがとうございます。感謝してもしきれない想いです」

「その心はもちろん届いているわ。他の神に羨ましがられるほどなのよ!」


僕は感激した!

ちゃんと白蛇さんに僕の感謝の祈りが届いていたんだ!


「それと、今日はいくつか話があるのだけど、まずは力の使い方を教えるわ」

「力の使い方ですか?」


「そうよ。まず、あなたは町にバリケードを築きたいと思っているでしょう?」

「えっと、はい。その通りです!」


「そのやり方を教えてあげるわ。超能力も随分馴染んで来たようだから、便利な操作系の能力を主にね」


白蛇さんがそういうと僕の頭の中に知識が入り込んで来る。


風操能力エアロキネシス…風を操る

水操能力アクアキネシス…水を操る

火操能力パイロキネシス…火を操る

土操能力グランキネシス…土を操る

電操能力エレクトロキネシス…電気を操る

透視クレアボヤンス…物体を透視する


「まずバリケードを作りたければ土を操るのよ。この操作系の能力全般は一定期間だけど固定化が出来るから、地面から土を盛り上げて固めれば強力なバリケードになるわ」


なるほど。

これは……凄い! 魔法みたいだ!


「ふふっ。それぞれ攻撃にも使えるわよ。それと住むところが問題になっているようだけど、間に合せで良ければ水操能力アクアキネシス電操能力エレクトロキネシスを住宅に接続して固定化すれば水道と電気は暫くは自由に使えるはずよ。生活排水は地下に穴を掘って溜めておいたものを定期的にアイテムボックスに入れて破棄すれば良いわ。透視クレアボヤンスがあれば土操能力グランキネシスで穴も掘れるでしょ」


なんとありがたい!

これでユニットハウスなどを設置してしまえば立派な住居になるかも!

でも、透視能力か……


「まあ、透視能力があるとは女の子には言わない方が良いわね……。念力サイコキネシスは温度も操れるから、水操作と組み合わせれば氷も作れるし、お風呂の湯も張れるし、雨だって降らせられる。電気を操れば一瞬で充電したりも出来るわ。後は自分で使い方を工夫するのね」

「こんな凄い能力! ありがとうございます。これで皆を守って行けそうです!」


「引き続き頑張りなさい。それと私の祠の効果だけど、無病・豊作の効果があるわ。祠のある領域内は病気は少くなって、井戸や川の水質も良くなり作物は豊作になるの。それと例のウィルスも無効にしてあげるから、領域内で死者が出ても新しく感染者になる事は無いわ」

「そんな凄い効果が! ありがとうございます!」


これで集落が内部崩壊してしまう心配が無くなって自給自足も捗りそう。

大変ありがたい効果だ。


「最後に少し悪い話ね」

「えっと、悪い話ですか?」


「ええ。ウィルス感染者の一部で変異が始まっているわ」

「変異、ですか?」


「そう。今までは感染した人間を徐々に死に追いやったり、死んだ人間を本能のままに動かしていたウィルスだけど、一部の個体は変異して人間を超越した存在に変化しているようなの」

「そ、それは……」


「アメリカ合衆国という国に最初に変異した個体が現れたのだけど、一体で数百人の人間を殺しているわ。そしてその犠牲者も新たな感染者となったのよ」

「そんな、それじゃあアメリカは……」


「いいえ。あの国は巨大で国力も高いから、まだまだ人間は健在よ。それに備えていた人も多いしね、だけど次々に変異した個体が現れたら、持ってあと数年というところでしょうね。その警告もする必要があったのでここに来たのよ。でもこれが自然に発生したとも思えないのよね……」

「えっと、その変異体が来たらどうすれば良いでしょうか?」


僕は急に恐ろしくなって白蛇さんにお伺いを立てる。


「戦うのよ! あなたがね。念力サイコキネシスは神に認められた者だけが持つ無敵の力よ! いくらでも応用が出来るわ。それにあなたには私が造った神器……ゴホン。とにかく100%使いこなせば、例え変異体が1000体来ても大丈夫のはずよ!」

「僕がそこまで使いこなせますか?」


「……私の祠の結界を破らないと、ウィルス感染者や変異体が領域内に入れないという定義を特別に新しく作っておきましょう。頑張って生きるのです!」


白蛇さんの声で、僕の意識は急速に薄れていくのだった。

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