第83話 避難所からの帰還(8/21)

夜明け前のまだ薄暗い中、僕たちは集落に帰還してきた。


僕が避難所で全員を乗せた観光バスを空中に浮かせた時、女性自衛官や残る事を選んだ人たちは驚愕して何やら叫んでいたようだった。


でも彼らには残された物資と人数分のサバイバルセットを渡してある。

自分で選んだ道だ、後は自己責任で生存して行ってもらおう。


僕は自衛官や残された人達に正確な方角を特定されるのを避けるため、一旦あさっての方角に10kmぐらい進んでから集落を目指した。

少し迂回したのと、二つを同時に動かすのは初めてで慎重に進んだので、かなり時間が掛かってしまったんだ。


白蛇学園近くに観光バス二台を静かに停車させると、アイテムボックスから簡易水洗トイレを四つ取り出して周辺に配置した。

避難民に一旦朝までこのまま待つこと、外にトイレを用意してある旨を伝える。


次に白蛇さんの祠に感謝の挨拶をした僕は真理だけを連れてバスを離れた。

僕達の集落に真理の両親がいる事は移動中に伝えてあるんだ。


「武田さんの家はこっちだよ。着いてきて」

「う、うん。ありがとう」


僕は、五分ぐらい歩いて着いた武田さんの家のドアを叩く。

電気が通っていないからインターフォンは使えないんだ。


(ドン! ドン!)

「武田さーん! 開けて下さい! 荒井です!」


そして早朝に何事かと驚いて出てきた真理の両親が、真理と対面する。


「お父さん! お母さん!」


「おおっ! 真理! 無事で良かった!」

「真理!! 冴賢君、真理を連れて来てくれてありがとうね!」


「いえ、それでは」


両親と抱き合う真理は何か話したそうだったけど、パパ達がした約束を果たした僕は早々に引きあげた。


その足でパパのところに行き、真理を武田さんに引き渡した事と100名ほどの避難民を新たに連れて来た事を話す。


パパは驚いてバスを見に行き、起きてきた明日奈さん、光司君とも合流した。


「観光バス二台で100人の避難民かあ。こりゃあこれから大変だぞ」

「えっ! このバスで100人も!」

「100人ですか!」


「うん。勝手な事してゴメンだけど……」


僕は皆に避難民を集落に連れて来た経緯を説明した。

それを聞いて武装グループが暴れている事に驚ているようだ。


「まあ連れてきたのは仕方がないんじゃないか? しかし武装グループとはリアル北○の拳だな。こりゃあここも防御を固めないとな」

「でも冴賢くんらしいわ。丸ごと連れてきちゃうだなんて」

「僕たちは早めにここに入れてもらって良かったです」


僕は今後の事を皆に相談する。

まずは住む所を考えないと。


「とりあえず、どうすれば良いかな? ずっと観光バスって訳にも行かないし」


「うーん。いずれここのバリケードを拡張したいと思ってたんだが、まだバリケードの構築方法を思いついてないしな。お前のアイテムボックスで、何か団地みたいな物は出せないのか?」


「団地は無理だよ……商品みたいに買える物でないと駄目みたいなんだ」


この後、皆であれこれ考えながらアイテムボックスを検索した結果、最終的には16畳のコンテナハウスを8棟取り出して空き地に展開した。


100人で16畳(8畳+8畳)✕8棟、128畳だから一人当たり一畳以上となる計算だ。

しかしこれで空き地がかなり埋まってしまった……誰かに怒られないかなこれ。


コンテナハウスの他、パーソナルスペースを確保する間仕切り、寝具、とり急ぎのペットボトルの水200本、朝食用に菓子パン4種類、200個をアイテムボックスから取り出した。


その後、簡易水洗トイレとキャンピングカーの汚水処理や水タンク、燃料の補充、冷蔵庫の食材とパンの材料、鶏の餌の補充などをして、僕は疲れが溜まっていたので一旦昼前まで仮眠を取る事にした。


避難民のコンテナハウスへの割当や、物資の配布などはパパの采配に任せよう。


僕は予想以上に疲れていたらしく、キャンピングカーのベッドですぐに意識が薄れていくのだった。

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