第82話 集落への勧誘(8/20)
武装グループ襲撃後、深夜の食事提供を終えた僕は自衛官の女性に尋ねる。
「この避難所の人たちを、自衛隊の拠点で保護する事は出来ませんか?」
「……私の所属する拠点でも、近隣の避難民の受け入れはもちろんやっているけど、もう殆ど一杯なの……物資も不足気味と聞いているし、悪いけど急な大人数の受け入れは難しいと思うわ」
「そうですか……」
夜中だから子どもたちは食べてすぐ寝てしまったようだったけど、ずっとここに居続ける訳にもいかない。
武装グループの再襲撃があるかもしれないし、襲撃で崩れたバリケードから感染者が入り込んで襲われるかもしれない。
実際に何体か入り込んだので、その都度僕が倒している状況だ。
でも僕がこのまま真理だけを連れて集落に帰ってしまったら、この人たちはどうなってしまうのだろうか。
リーダーや男手を失ない、女子供、老人、生き残り男性で運営していけるのか。
たぶん無理そうだし少なくとも次の襲撃には耐えられないだろう。
やはり一度、僕達の集落に避難してもらうしかないかもしれない。
ーーーーー
僕は非難所の皆に向けて話し掛ける。
避難民も僕が食事を提供した事が分かっているので全員が耳を傾けてくれた。
「みなさん! この避難所は武装グループの襲撃を受け壊滅的な被害を受けたと思います。避難所のリーダーや主だった方たちも亡くなってしまったそうです。これからの生活をどうしようと不安に思う方も多いと思います。国からの援助も今となっては期待出来ない状況です」
僕は一旦話を切って皆の様子を伺った。
皆、真剣に僕の話を聞いてくれている。
「僕はここから少し離れたところの集落に所属しています。田舎ですが、川や田畑もあって何とか文化的な生活を送れています。みなさんが良ければ一旦そこに避難してみませんか? 老若男女は問いませんが僕への詮索はしない事が前提です! 道中の安全は保証します。希望者は手を上げて集まってください!」
僕が避難を提案すると、100人近くの避難民の方が手を上げてくれた。
自力では生きていけそうにない女性、子供、老人が多いけど、人を属性で差別するつもりは無い。
「提案を受け入れてくれた方はありがとうございます! 僕と一緒に来ない人にも少量ですが物資を提供しますし、この避難所の物資は全て残して行きます! 一緒に行く人は、今から一時間後に出発しますので、夜間ですみませんが出発準備をお願いします!」
僕がそう告げると、皆はいそいそと出発の準備を始めるのだった。
ーーーーー
皆の準備中、僕は女性自衛官に話し掛けられた。
「これから何処に行くのか教えてもらえる?」
「北の方とだけ、あなたは自衛隊の拠点とかに戻るんですよね?」
「ええ。でも……あなたの力は一体何なの? 怪我を、それも重傷を治療出来る能力に、虚空から物を取り出す能力、武装グループを倒した力も、まさかとは思うけど、神様なの?」
「いいえ、僕は神ではありません。ただの高校生です。でも僕はそう言える存在に出会った事があります」
「……」
「忠告させてもらいます。僕の事は他の人に話さない方が良いですよ。僕の事を詮索したり利用しようとしたり僕の邪魔をしないで下さい。これが守れないなら、あなたやあなたの所属するところに天罰が下るかもしれません」
「わかったわ。その方が良さそうね。言っても誰も信じないでしょうし」
「ですね。それでは、あなたにはこれをお渡ししておきます」
僕はアイテムボックスに格納していた小銃と、リュックに入ったサバイバルセットを渡す。
何処まで行くか知らないけど、この物資で一週間は生きていけるだろう。
ーーーーー
僕の誘いに乗った人達は真理を入れて100人ちょっといた。
さすがにこの人数を一度に移動させる陸の乗り物は思い付かない。
だけど2台だけなら何とか
僕は避難所近くの道路を
観光バス周辺の感染者もサーチで捕捉し、サイコバレットを連射して倒してゆく。
真理と女性自衛官は僕の後に着いてその様子を全て見ていた。
「あなた何でもアリなのね。どうせ銃弾とかも効かないんでしょう? 敵に回したら恐ろしそうだわ」
「銃弾は……まあそうですが、僕は善良な人を攻撃したりしませんよ?」
「そうよ! ひー君はとっても優しいんだから! ごめんね口を出して……」
女性自衛官の皮肉に軽く答えたら、真理が少しムキになって反論する。
だけどすぐにその資格が無いと思ったのか謝ってきた。
「優しいのは立ち回りを見ればわかるわ。自分の得にならない治療行為や食事提供もそうだし、弱者を見捨てられないんでしょう? そういう貴方だからこそ、その力を得たのかもしれないわね……」
「僕はこの力を生きるために使います。僕と仲間で生きてゆくためにね」
そう、生き残る事が白蛇さんとの約束なんだ。
この超能力で仲間を守って、この世界を生き抜いて行くんだ。
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