第79話 襲われる避難所(武田真理)

ひー君が振り返らずにこの避難所を去ってから半月以上が過ぎた。

私はあれからずっとここで後悔の日々を送っている。

幼馴染のひー君を裏切ってしまった後悔を。


達也君も死んでしまって今の私は本当に一人ぼっちになってしまった。

一緒にここに来た同じ高校の人達も、達也君と先輩達が亡くなってから微妙に避けられている感じがする。


その人達が亡くなった時の、ひー君も参加してくれた調達時の物資がまだ結構あるのと、その後も小規模な物資調達を続けている様なので、食糧に関してはまだ大丈夫みたい。



この避難所には二日ほど前から自衛隊の男女二人がやって来ていた。

皆が噂するには最近避難所が武装したグループに次々と襲われているみたい。

自衛隊の人達はそれを警告するのと、少数ながらも護衛として来てくれているみたいだった。


武装グループに襲われた避難所は物資を奪われ、女性は凌辱されて後の者は皆殺しになるそうだ。


いつかここにも来るんじゃないかって、みんながひそひそと噂をしている。

自衛隊の人が来てくれたけどたった二人だし、もし武装したグループに襲われる事があれば覚悟するしかないんだろうな。


それも私への罰としてはふさわしいのかもしれない。

そんな事を考えながら眠りについたところだった。





ーーーーー





(カン! カン! カン! カン! カン!)


避難所に非常事態を知らせる音が聞こえる!

辺りも騒がしくなって、皆も飛び起きたようだ。


「襲撃だ! 武装したグループの襲撃だぞ!」


(パン!)(パパン!)

「があああ!」


少し遠くで銃声と叫び声の様な音が聞こえてくる……


(パン!)


(ズダダダダッ!)


(パン!)


「ぎゃあああ!」


怖い!

だんだん近付いて来てるみたい!


皆、どうして良いかわからずに立ち尽くしていると、不意にドアが蹴飛ばされて開き、乱暴そうな若い男達が何人もやって来た。


「ひゃっは〜! こりゃあ美味しそうなのがいっぱいじゃねえか〜!」

「うお、女子高生だぜ! ラッキー!」

「おいおい! 程々にしろよ?」

「男と子どもは死刑! 女は慰みものだ!」

「後から大勢来るからな、早い者勝ちだぜ!」


武装グループの人達が、私達の居住区までやって来てしまったようだ。

自衛隊の人達はもう殺されてしまったのだろうか。

私は怖くて全く動く事が出来なかった。


少し離れていた女子高生達が男達に組み伏せられ、乱暴に服を破かれてゆく。


「いや〜っ!」

「やめて!」

「ヤダッ!」


「うるせっ!」(パシッ!)

「黙れ!」(ガッ!)

「この! 殺すぞ!」(ゴッ!)


女子たちは悲鳴をあげて抵抗したけど殴られてしまう。

そして抵抗したら殺すと脅されて、もう抵抗を辞めてしまったようだ。


「こ、殺さないでくれ! 頼む、まだ小さい子供がいるんだ!」

「ひはっ! ダメダメ!」

(パン!)


命乞いするも、無情にも殺されていく男性たち……

そして私にも金髪ピアスの若い男が近付いて来る。


やはりこれは私への罰なんだろうか。

だとしたら他の人を巻き込まないで欲しかった。


私も殴り倒されて服を破られ上半身は裸にされる。

これからされる事をかんがえると諦めたはずなのに心が悲鳴を上げる。


見知らぬ男に床に組み伏せられて胸が鷲掴みにされる、気持ち悪い!

これなら今直ぐに殺された方がましだ。


「いやー! 助けて! ひー君!」


もう思い切り抵抗して殺されても良い!

そう思って目をつぶって叫んだその時、私に覆いかぶさっていた男が部屋の壁まで吹き飛ばされて物凄い音を立てた。


(ドゴオッ!)


な、何が起こったの?


私はゆっくりとそれを行った人物に目を向ける。

そこには背が高く神々しいほどの青白い光を纏った人が立っている。


その人物をよく見ると、それは私が裏切ってしまった幼馴染のひー君だった。

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