第78話 佐々岡さんを集落へ(8/20)

夕方に何とか歩ける程度まで二人が回復したので、僕は一旦二人を連れて集落に戻る事にした。


「佐々岡さん、二人を僕たちの集落に連れて行こうと思うんだけど、それで良いかな? あ、そこには明日奈さんもいるよ!」

「明日奈ちゃんも! ほんと?」


「うん。僕の家族や途中で出会った人達もいて、集落全体だと200人はいるんだ。かなり田舎だけど、今はここより遥かに過ごしやすいと思うよ。学校だってあるし」

「えっ! 学校まで?」


「うん。明日奈さんが先生なんだ。中学生以下限定の学校だからね。秀彦君も入れるよ。給食も出るし。もし良かったら、佐々岡さんも学校の先生になってくれないかな?」

「うん。そんな平和な生活があるんなら行きたい! 行ってみたい!」

「僕も学校行きたい! 給食食べたい!」


集落の話を聞いて佐々岡さんも乗り気みたいだ。

秀彦君も学校と聞いて凄く喜んでいる。


「良かった! なら今から行こう! 二時間掛からないで行けると思うよ」

「そんなに近いの?」


「えっと、距離は少し遠いんだけど……魔法の絨毯って知ってる?」





ーーーーーー





「二人とも怖くない? 夜で下は見えないから大丈夫だと思うけど」


「そりゃあ怖いわよ!!」

「僕、怖くないよ! 男だから!」


「そっか。秀彦君は偉いね!」

「ちょっと! 立っちゃ駄目よ秀彦! 座りなさい!」


僕たちは夜の空を絨毯に乗って集落に移動中だ。

佐々岡さんは絨毯を浮かせる僕の超能力に凄く驚いていたけど、弟の秀彦君は楽しそうだった。


移動中、僕は簡単にだけど佐々岡さんに超能力の事を伝えておいた。

誤解を受けないように、佐々岡さんたちを避難所に送り届けた時以降に今使っている能力が目覚めた事も伝える。


佐々岡さんは驚きながらも意外と超能力についての知識があるようで、僕が服を透視していないかとか問い詰めてきたりしたけど、僕はそんな能力は持っていないと否定したんだ。





ーーーーー





集落に戻った僕は、直ぐにキャンピングカーに二人を連れていった。


「明日奈ちゃん! 来ちゃった!」

「莉子ちゃん! 何で!」


明日奈さんは佐々岡さんと顔を合わせると凄くビックリしていたけど、それがおさまると今度は凄く嬉しそうになった。

二人で向かい合って両方の掌を合わせてピョンピョン飛んで喜んでいる。


「明日奈さん、佐々岡さんの弟の秀彦君もいるからよろしくね!」

「うん。それは良いんだけど、これはどういう事なの?」


「ゴメン。説明している時間はあまり無いんだ。僕はこれから直ぐにまた東京に行ってくるよ! 佐々岡さんと秀彦君にシャワーを浴びてもらって、温かい食事を食べさせてあげて。それからパパを呼んで一緒に佐々岡さんから話を聞いておいて。僕が急ぐ理由もそれで分かるはずだよ!」


僕はそう言うとキャンピングカーの水や燃料の補充だけ行って、佐々岡さんにある質問をして直ぐに東京に向けて旅立つのだった。





ーーーーー





僕は再び絨毯に乗り、サーチで表示される真理の方向に向かう。

僕が急いでいるせいか念動力テレキネシスで飛ぶスピードが上がっている様な気がする。


佐々岡さんは大勢の人間の襲撃者に襲われたと言っていた。

たぶん大規模な襲撃者の武装グループがあるんだろう。

警察署のような武力を持たない市役所や区役所の避難所は、武装したグループに襲われたら撃退するのは困難だろう。


真理のいた避難所は佐々岡さんがいた避難所とそれほど離れていないし、武力に関しては微妙だった。

大勢の武装グループに襲われたらひとたまりも無いだろう。


今現在は真理は無事だけど何か胸騒ぎがする。

そう思う事自体が何かのフラグなのか……

とにかくなるべく急いで真理のいる避難所に向かい、本人を確保しよう。


途中、集落を出る寸前に名前を聞いておいた佐々岡さんのご両親をサーチで検索したけどヒットはしなかった。


恐らく亡くなられたのだろう。

あんなに幸せそうな家族だったのに。

僕の作ったおにぎりを美味しいって食べてくれて……


絶対に許さないぞ!


素晴らしい命の大切さを感じず、平気で他者を傷つける者達よ。

神罰の代行者として、いずれ僕が必ず罪を償わせてやる。

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