第76話 幼馴染を探しに(8/18)
真理をこの集落に連れ戻す事を決意した僕は、パパ達にその事を告げ夜になるのを待って絨毯で空を行くことにした。
たぶん東京までは、空を行けば二時間も掛からないで着けるだろう。
夜間だから誰かに見られる心配も少ないはずだ。
僕は出発前にまずサーチで真理の位置を探る事にした。
その前に、ここで一度サーチの機能を再確認してみる。
白蛇さんから授かったサーチという能力は、僕を中心に半径1kmちょっとの範囲内の対象を正確に僕に教えてくれる機能だ。
僕がこれまで生きて来られたのは、この能力があったからだと言っても過言じゃないぐらいお世話になっている。
普通は感染者の位置などわからない為、映画みたいに不意に横やら後から襲われて危なくなる所だけど、感染者の正確な数と位置を事前に教えてくれるので、その心配をしなくて済むのは凄く大きい。
探査距離は熟練度の様なものがあって成長しているのか段々と伸びている。
検索も固有の名前やカテゴリにも対応している超優れ物機能だ。
もし検索で同姓同名の人がいたらどうなるかわからないけど、自分の知っている人で絞られているか、何らかの優先順位があるのかも知れない。
これは原理もわからないので深く考えても仕方が無いところだ。
対象はまずは大きく色で判別する事ができる。
・赤は感染者(ゾンビ)
・青は生存者
・黄は悪意がある者や敵対者
他の色があるかどうかはまだわからない。
そしてサーチ反応の大きさで、ある程度の年齢を判定できる。
もしかしたらこれは単純に体の大きさなのかもしれない。
・小さい反応:子ども
・大きい反応:大人
男女の違いはハッキリとはわからないけど何となく固そうであれば男性、そうでなければ女性という感じだ。
次は色の濃さで、青色は濃い青〜薄い青で健康状態を表しているみたいだ。
パパを見付けた時は重傷だったので薄い青になっていたはずだ。
集落で見かける健康そうな老人にも薄い人もいるので、もしかしたら残り寿命も関連しているのかもしれない。
・濃い青:健康
・薄い青:危険
最期に、サーチは範囲内にいない場合は対象の方角を矢印で指し示す。
矢印の向きはもちろん方角なんだけど、空からサーチすると立体的な角度で方角を示すので三次元的な探査も出来るみたいだ。
さらに距離に応じて矢印の大きさが変わるのと、色の変化は範囲内にいる時と同じ様に健康状態を判別できる。
・大きい矢印:近い(近いけど範囲外)
・小さい矢印:遠い(範囲外)
上記を踏まえて武田真理を固有の名前で検索した時、方角は東京の方を指し示し、矢印は小さいのでかなり遠く、色は濃い青色なので健康な様子だった。
たぶんあの避難所でまだ暮らしているんだろう。
もし真理を迎えに行く避難所に何らかの技術者がいたら、この集落に引き抜くのも良いかもしれない。
ーーーーー
僕はペルシャ絨毯の上に乗り
この前の絨毯と同じ型だけど、あれは鶏にフンを一杯されてしまったので廃棄して新しくした物だ。
「じゃあ行ってくるよ!」
「ああ、任せた! よろしく頼む!」
「冴賢! 気を付けるのよ!」
「お兄ちゃん、頑張って!」
「冴賢くん、気を付けてね!」
「冴賢さん、卵の回収と鶏の世話は任せて下さい!」
「ひさとお兄ちゃん! 気を付けてね!」
家族と、明日奈さん、光司君、美久ちゃんが見送りに来てくれている。
これから最大三日間、僕は東京に行って真理を探してここに連れ帰る予定だ。
基本的に何も無ければ明日中にでも連れて来る事が出来るだろう。
パパからは、もし不測の事態が起こった時でも三日以内には必ず帰還しろと言われている。
そのため、キャンピングカーの汚水処理や燃料と水タンクの補充、冷蔵庫の食材などは目一杯にしてあるので、三日間は僕が戻らなくても大丈夫なはずだ。
念のため、明日奈さん、光司君には婦人警官の米倉たちの拳銃、パパにはこの集落にいたならず者たちの拳銃をそれぞれ預けてある。
僕はみんなに手を振りながら薄暗くなった空に舞い上がり、それから東京方面に飛び立つのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます