第74話 鶏を飼おう(8/13〜8/16、テレキネシス対象数3)

その後、僕たちは物資の調達で食糧品店をいくつか周り、ある程度の物資を回収することが出来た。


トラック一杯とまではいかないけど、トラックの荷台と僕以外のリュックは一杯になったようだ。

僕のリュックが空なのは、皆さんから戦闘に集中して欲しいとの事で荷物は持たされなくなったからだ。


そしてお昼過ぎぐらいの時間には全員が無事に集落に帰り着くことが出来た。

喘息の子どもを持つ男性はトラックを降りると一目散に家へと帰って行った。

それを皆で温かく見送ってから集落共通の倉庫に調達の戦利品を格納する。


こうやって集落で一旦集められた物資は、なるべく公平になるよう頭数で必要量が分配される様になっているみたいだ。


パパを拳銃で射った奴らがここに居た時には、力で物資を独占していたみたいだけど、既に排除済みなので管理者を一人置いて適正に配布出来る様になっている。


物資は基本的には農家の集まりであるのでお米が最も多く、温度管理の問題があるので生鮮食料品は置いておらず、あとは街からの調達で集められた缶詰や乾麺、保存食などが置いてある。


現状、肉や卵といった食材は集落の人は食べる事は出来ない。

僕らはアイテムボックスがあるから食べられるけど、これはかなり不公平だ。

アイテムボックスの存在を無闇に言いふらす事は出来ないので仕方が無いんだけど、自分達だけが良い食事を摂るのはどうしても罪悪感を抱いてしまう。


鶏が手に入れば集落の他の人達にも卵を食べさせてあげられるのになぁ? と考えながらサーチで確認すると不意にサーチ内に矢印が現れた。


これは生き残っている鶏の位置を指しているのか!

どうやら固有の名前でなくても検索は出来るみたいだ。

本当にこのサーチの機能には脱帽する。


僕はパパに鶏を連れて来ると告げ、キャンピングカーの裏に大き目のペルシャ絨毯を取り出すとそれを念動力テレキネシス浮かせ、それに乗って空に飛び立った。


童話の魔法の絨毯の再現だ。





ーーーーー





僕は集落の人に見つからないように山沿いにゆっくりと上空に上がり、鶏を指すサーチの矢印に従って養鶏場まで飛んで行った。


養鶏場ではたくさんの鶏が死んでしまっていたけど、なんとか生き残っていた30羽ぐらいを集めて確保し、絨毯に乗せてまた集落に戻った。


空を飛んでいる最中、アイテムボックスから鶏のエサを取り出してあげていたら鶏が僕に凄く群がってきて、ラピュ◯のワンシーンの様に揉みくちゃにされて大変だった。


途中落ちそうになったアクティブな鶏もいたけど、いつの間にか三つまで念動力テレキネシスの対象数が増えていたみたいで、超能力で絨毯に戻してあげる事が出来た。


また山沿いに集落に戻り、空き地の隅に屋根付きでスチール製の大きな鶏小屋をアイテムボックスから取り出し、連れて来た鶏を中に放して餌と水場を与えて放置しておく。


これで一週間ぐらいして栄養状態が良くなれば、きっと卵を産んでくれるだろう。





ーーーーー





あれから三日ぐらいして、餌が良かったのかポツポツと卵を産む鶏が増えてきたようで、今日は5個も卵が産んであった。


「うん。新鮮な卵だ!」

「昨日より2個も増えてますよ!」


僕は光司君と喜び合う。

光司君も養鶏の手伝いをしてくれてるんだ。


産みたての卵は回収したあと、産卵日の日付の札を付けた容器に入れて集落共通の倉庫で管理してもらう事にした。

それから、あらかじめ予約されていた人達に配られる事になる。


集落にはパパから卵が毎日少量手に入る事、スーパーで売られていた卵の様に消毒が出来ないのと、冷蔵での保管も出来ないので必ず加熱して食べるようにとの通達を出してもらっていた。


そのうちに毎日20個ぐらいは卵を産むだろうから、集落の今の人口だと十日に一回ぐらいは皆が卵を食べられるようになる事だろう。


鶏の中にオスも混じっていたようで全部は卵を産まないらしいけど、パパが言うには実はこれはかなりラッキーで、オスは繁殖用に利用出来るとの事だった。

そのうちに繁殖して数を増やせれば、もっと高い頻度で美味しい卵を提供できる事だろう。


牛や豚なども飼わないと肉も手に入らないし、早いうちに確保しておかないとそのうちに餌も食べれずに絶滅してしまうかもしれない。


僕は近いうちに畜産にも手を出そうかと考えるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る