第73話 物資の調達へ(8/13)
僕は知らないうちにアイテムボックスに小さな祠が入っているのに気付いた。
屋根に美しい白蛇が描かれた小さいけど綺麗な祠だ。
白蛇さんにはいくら感謝しても足りないぐらい感謝している。
丁度良いので学校の隣に配置して毎日手を合わせるようにしよう。
もしかしたら何か凄いご利益があるのかも知れない。
もちろんご利益など何も無くても感謝の心は絶対に変わらない。
今までも貰い過ぎているぐらい充分に助けられたからだ。
学校の名前も白蛇さんにちなんで、〈白蛇学園〉と名付ける事にした。
そして責任者となる初代学園長にはパパになってもらったんだ。
昨日はあれから新しく作った学校の見学者が何組か訪れた。
簡単にだけど給食も出るという説明をすると、連れられた子供達は凄く喜んでいたようだ。
結果として中学生1名、小学生2名、幼児1名が追加で学園に通う事になった。
明日奈さんも忙しくなる事だろう。
ーーーーー
僕は朝の訓練と超能力修行、白蛇さんの祠の手入れをして朝食を摂った後、パパと合流して物資調達の集合場所に向かった。
集合場所には既に7、8人ほどの男性達がいて、それぞれが長い獲物を持ち、大きいリュックを背負っている。
僕たちが実質最後だという事なのでトラックの荷台に上がり込んだ。
メンバーはお年寄りと中年の方が多く、聞けばこの仕事を割り当てているのに参加しない若者たちがいるようなのだ。
一歩間違えば死に繋がる仕事なので怖いのはわかるんだけど、他の人に押し付けたままなのはどうかなと思う。
集落の入口を開けてもらい、僕たちは感染者の多い街の中央部を目指す。
出て5分もしないうちに感染者が進路上に現れる。
「くそっ! 今日は多そうだな!」
「若いゾンビ一体だ! 三人がかりで行け!」
高齢の人の号令で、中年の男性三人が獲物を持って荷台を降りようとした時、僕はサーチで感染者が複数来ているのを知っていたので制止した。
「待って下さい! ここは僕が行きます!」
「何だって! 危険だ!」
「おいおい!」
「子供一人じゃ無理だ!」
男性たちは僕を
「いや、コイツにやらせてくれ! その方が安全だ。冴賢、やれ!」
「うん、わかった!」
僕はすぐに荷台を飛び降りるとバールに
続けて左右から近付いて来ていた別の感染者にも、こちらから走り寄ってバールを一閃して倒し、何事も無かったかのようにトラックの荷台に戻る。
物資調達の男性たちは皆、10秒にも満たない僕の立ち回りに驚愕している様だ。
「おおっ!」
「すげ〜!」
「強いな〜君!」
「こりゃあ、この
「うんうん!」
「冴賢、良くやったぞ!」
どうやら僕は皆さんに力を認めてもらった様だ。
これで以降の戦闘が楽になる。
きっと僕が多少出しゃばっても文句は出ないだろう。
バールを使った戦闘なら全力で良いと事前にパパからお墨付きをもらっている。
変に力を抜いて戦って無駄な犠牲者を出すよりはよほど良いだろう。
僕たちはトラックに乗って、街の中心部に近い食糧品店や薬局を目指して進んで行った。
ーーーーー
走りながら聞いた話では今日の主目的は薬みたいだった。
集落に喘息の小学生が一人いて、もう薬のストックが切れてしまったらしい。
喘息も軽んじれば呼吸困難で死に至る病気だそうだ。
小学生なら薬が無いと不安だろうし実際に苦しんでいる事だろう。
僕はそれを聞いて、今回の調達で必ず喘息の薬を見つけようと決めた。
もし見つからなかったらアイテムボックスから不自然にならないように取り出せばいい。
考えているうちにトラックが処方せんを扱う薬局の近くに横付けされる。
サーチで見るとこの車の周りに5体、店内にも2体の感染者がいるようだった。
「皆さんはまだ車から出ないで下さい!」
僕はそう言うと、車に群がってくる感染者を近い順から倒してゆく。
一瞬だけ
僕がパパに頷いて合図するとパパに続いて皆がトラックから降りてくる。
僕はドアをバールでこじ開けてドア付近にいた感染者2体を倒し、店内に入って感染者がいない事をアピールする。
「店内はもう安全です! 皆さんで薬を探して下さい」
僕は小声でそう告げると外の見張りについて、ふらふらとやって来る感染者の対応を行なった。
そして5分ぐらいして店内から歓声が湧き上がった。
「見つけたぞ! 喘息の薬だ!」
「やったな!」
「ははっ!」
「みんなありがとう! うちの子どもの為に……」
中年の男性が薄っすらと涙を流して喜ぶ。
皆は男性の肩や背中を叩いたりして激励をしている。
中年男性の涙とはいえ、他者を想って流す涙は僕にはとても美しい物に思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます