第72話 学校を作ろう(8/12)
集落の集会が終わって戻ると子どもたちが空き地で無邪気に遊んでいた。
今日がいったい何曜日なのか良くわからないけど、子供達には読み書きなどをきちんと学習させる必要はあるだろう。
パパとママにそれを相談してみたところ、やはり中学生以下は義務教育を受けさせた方が良いという結論になった。
僕もどんな状況だろうとも教育を
幸い教科書や文房具はアイテムボックスで用意出来るはずだ。
だけど勉強をする場所をどうしようかと考えた。
アイテムボックスで色々と検索した結果、小窓付きのコンテナハウスをキャンピングカーの近くに配置して簡易的な学校にする事にした。
コンテナハウスなら風雨もしのげて頑丈だし、ドアを閉めてしまえば仮に感染者に襲われた場合でも大丈夫だろう。
早速、アイテムボックスからコンテナハウスを取り出し、長机、椅子、黒板、吊り下げのLEDライトを配置していった。
奥には以前高校の屋上で使っていた簡易水洗トイレも配置する。
準備が出来た僕は、明日奈さんや子どもたちをコンテナハウスに呼び込んだ。
妹の玲奈も一緒だ。
「みんな聞いて欲しい! パパたちとも相談したんだけど、中学生以下の子どもたちにはここで勉強をして欲しいと思ってるんだ」
「ここを学校にするって事?」
明日奈さんが聞いてきたので、僕は教育に関しての自分の考えを話す。
「うん。教科書とかノートは僕が出せるから、英語はもういいとして最低でも国語と算数、できれば理科と社会なども義務教育の範囲内で教えていければと思ってるんだ」
「確かに教育は必要ね! じゃあ私は高校生だし、先生をやれば良いのかな?」
「うん、そうなんだ。お願いするよ! 手が空いてる時は僕も教えるね」
「やったー! 学校だ! ひさとお兄ちゃん凄い!」
「がっこうってなあに?」
「ふふっ。また学校に通えるなんて!」
「僕も義務教育を受けられるのは嬉しいです!」
「勉強かあ……」
美久ちゃんは学校と聞いて大喜びで、幼児は学校の意味がわかってないみたい。
他の小学生や、早苗ちゃんと光司君の中学生組も何気に嬉しそうだったけど、妹の玲奈は微妙に嫌そうだった。
とりあえず、中学生、小学生、幼児に別れて席に着いてもらい、教科書、ノート、筆記用具、絵本などをアイテムボックスから取り出した。
お昼までの時間で、中学生は教科書で自習、小学生は明日奈さんに教えてもらい、幼児組は僕が絵本の読み聞かせと、ひらがなの練習を行うのだった。
ーーーーー
「ほほう。結構本格的じゃないか」
「パパ! 見に来てくれたの? 明日奈さんも先生をやってくれるみたいだし、これで学校を始められそうだよ!」
「ああ。どんな感じかと思ってな。ちゃんと教科書もあるし目的は達成出来そうだな。玲奈はちゃんとやってるか? 明日奈ちゃんも先生の担当ありがとうね!」
「いいえ、これぐらいしか出来ないので。それに私、将来学校の先生になる事が夢だったんです!」
そうだったんだ、これは初めて聞く情報だ。
うん、明日奈さんなら先生のイメージに合うかもしれない。
「おお! なら尚更適任だな。高校生以上は何か仕事を割り振る事になってるんだが、明日奈ちゃんの仕事はこれで決定だな。集落にも中学生以下の子供が何人かいたと思うが、参加させて大丈夫か冴賢?」
「えっと、それほど大勢でなければ大丈夫だと思うよ。怪しまれないように椅子とかも後で少し増やしておくよ」
「じゃあ俺が集落の皆に声を掛けておこう。稼働時間はどうする?」
「そうだね……この状況もあるから、お昼を挟んで朝10:00〜午後3:00ぐらいまでかな。明日奈さんはどう思う?」
「うん、いいと思う。希望者には延長預かりも出来ると思うし」
「決まりだな! あと給食みたいな感じで昼食を出す事は可能か? 一度家に帰るのも面倒だし何か食べさせてくれるとありがたい。パンとスープみたいな固定メニューでもいいと思うが」
「出来ると思うよ。キャンピングカーのオーブンでパンを焼いておく事も出来るし、シチューやスープぐらいなら簡単に作れそうだしね」
「よし! じゃあそれで募集かけておくぞ。こんな状況なんで子供の教育を心配していた人もいたし、学校教育を受け持てばかなりの貢献になるぞ。ただ、教材とか食事とかは豪華過ぎると怪しまれるから注意してくれ」
パパはそう言うと、早速生徒の募集に行ってくれたようだ。
明日奈さんも思いもよらず夢だった教師を自分の役割に出来たので、生き生きと希望に満ちて子供達に勉強を教えてくれているみたい。
こうやって必要な事を一つ一つ積み上げ、みんなの力を合わせて良い集落にしてゆければと思う。
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