第18話 追って来る者(6/2)

結局は僕も同行し、まずは佐々岡ささおかさんの自宅を目指す事にした。

目的地まで現在地から直線距離で10kmほどの距離がある。


僕は物資の入ったリュックを背負ってバールを手に持ち、その後ろから桑田さんと佐々岡ささおかさんが続く。

なるべく感染者の少ない方向に迂回しつつ進んだ。


「待って、この先に感染者が歩いてるから、少し止まってやり過ごそう」


僕はそう言って二人を停止させる。

そしてサーチ結果の通りに感染者が数人纏まって横切っていった。


「凄い! 良く分かったわね」

「たまたまだよ。少し影が見えたんだ」


僕は適宜、サーチを使っている事を誤魔化しつつ感染者を避けて進んで行く。

佐々岡ささおかさんは足を怪我しているのでゆっくりとだが確実に進み、やっと200mぐらい進んだところで、サーチで複数の青い反応が後方からやって来る事に気付いた。


「人の声がする。隠れて!」


僕は二人に指示して息を潜める。

二人は少し怯えた表情で頷いて建物の陰に隠れた。





ーーーーー





「畜生! まだ見つからないか! 何処行ったんだ!」

「こっちの方に人影が見えたんだろ!」


「お前ら! 女がいるなんて、本当なんだろうな!」

「もし嘘だったら、どうなるか分かってるな?」


何やら男が7人ぐらいやって来て叫ぶ。

そのうちの一人は見覚えがあった。

桑田さんの幼馴染だ!


僕は驚愕して桑田さんと目を見合わせる。

他に制服の男子が二人いるが、たぶん佐々岡ささおかさんを襲った人達だろう。

そして明らかに一般人では無い人達と一緒だ。

何か嫌な予感しかしない。




(ガタンッ!)


男達を見て動揺した佐々岡ささおかさんが、近くの瓦礫を倒してしまったようで、大きな音がしてしまった!


「誰だっ!」

「あっちの方だぞ!」


男達が集まって来て、僕達は囲まれてしまった。





ーーーーー





明日奈あすな!」

桑田さんの幼馴染が叫ぶ。


「へえっ! 上玉じゃねえか」

「やっと見つけたぞ!」


チンピラのような男達が女子二人を舐めるように見て話した。

僕の存在は目に入っていないようだ。


僕は怖いけど桑田さんと佐々岡ささおかさんの前に立つ。

膝がガクガクと震える。


「ぼ、僕達に、何か御用でしょうか?」


僕は震えながらも桑田さん達を守るため、男達に尋ねた。

桑田さんと佐々岡ささおかさんも酷く怯えている。

何とか見逃してくれないだろうか……


警察の取り締まりが出来ない無法状態が続けば、いつかはこの男達のような輩が現れると思っていたけど、早すぎるだろ!

運が悪い事に彼らは一般人ではなく元々がそういう人達に見える。


「御用と来たか、へへっ! そんな物決まってるだろ? 特別サービスだ。女を置いて消えていいぞ!」

「ああ、ぶっ殺されたいんなら別だ!」

「ぐひっひっひ!」

「二人とも高校生にしちゃあいい体してんじゃん!」


桑田さんの幼馴染と男子二人は気まずそうにこっちを見ている。

恐らく男達に脅されているのかもしれない。


仲間のところに連れて行かれれば、彼女達は慰みものにされるのだろう。

佐々岡ささおかさんは恐怖で涙目になり失禁してしまっていた。


「私だけに、してくれませんか?」


桑田さんが男達に叫ぶ。


驚いた僕が振り向くと桑田さんは覚悟を決めた瞳だった。

そして僕と目が合うと、僕の上着の端を持ってブルブルと震えながら涙を流す。


桑田さんも凄く恐ろしいはずだ。

でも僕達の為に犠牲になろうとしてくれている……


「あ!? 駄目に決まってんだろ? 二人共だ!」

「逃さねえよ?」


男達はあくまでも二人を連れて行ってしまうつもりだ。

佐々岡ささおかさんはさらなる恐怖でしゃがみ込んでしまった。


僕は……喧嘩なんかした事も無い陰キャだ。

でも男だろ! 桑田さんの覚悟を聞いたか?


それに僕は白蛇さんに力をもらったじゃないか!

ここで彼女達を護れないでどうする?

この男達は悪だ、倒さないと!


僕は覚悟を決めて静かにバールを構えて目を閉じた。

目を閉じると不思議と怖さが無くなった。

身体の震えが止まる。


サーチで見ると男達は全員が黄色い点になっている様だ。

敵対すると色が変わるのか? 点だけで男達の位置も分かる。


これならゲームだと思えば……

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