10話 決意
昨日の散々な気分が拭えないまま日曜に。
「俺は」どうしたいのか。
改めて考えてみるが、未だに答えはわからない。
自分から行動を起こさなければ、これから先何も変わらないのはわかっている。
小説や漫画の主人公のように、何もしなくても上手くいく人なんてこの世に存在しないだろう。
恋愛で考えても、非モテ男子のことを軽いキッカケで好きになる女の子なんていないし、何より非モテはチャンスがあってもそれをモノにするだけのコミュ力や行動力がないのだ。
それができる非モテがいたら、とっくの昔に非モテではなくなっている。
悲しくはあるが現実なんてそんなものである。
他力本願でトントン拍子に事が上手くいくほど人生は甘くない。
耳にタコができるほど聞く言葉ではあるが、自分を変えれるのは自分しかいないのだ。
ただ、俺にはその一歩を踏み出す勇気が出ない。
その一歩を踏み出して失敗したらどうなるのだろう。
今ある現状が崩れて、何もしなかった時よりも惨めな思いをすることになるんじゃないのか。
考えても仕方ないことでうだうだと頭を悩ませる俺は本当に面倒な人間だなと思う。
ただ、昨日のことを経て、なんとなく今のままじゃダメなことはわかる。
昨日の夢と違う世界線を辿るために、今俺ができること。
それは、井上さんからもらったルーズリーフのお礼の件。
少し前に、「井上さんにもらったルーズリーフのお礼はしない」と決めたわけだけど、
なんだか自分の中でモヤモヤしたものがずっと残っていた。
「……決めた。」
明日、井上さんにちゃんとルーズリーフのお礼をしよう。
別にやましい想いがあるわけではない。
井上さんに何か恩を売って、彼女とお近づきになりたいということではないのだ。
井上さんは綺麗だと思うが好意を寄せているわけではないし、何よりこのままだと俺が釈然としない。
そこまで恩知らずな人間ではないのだ。
それに、何か自ら行動を起こすための「キッカケ」としてはちょうどいい。
嫌な顔される可能性もあるが、別にお礼を渡すくらいなら何も難しいことはない。
いきなり面識のない異性に告白する、といった大それたことはできないが、面識があって俺のことを嫌ってるわけでもない人に感謝の意を伝えることぐらいなら、俺にだって頑張ればできるのだ。
できることから一歩ずつ。
人によっては一歩にも満たないような些細なことかもしれないが、臆病な俺にとってはこれでも大きな一歩だ。
勉強と同じで、こういうのも一歩ずつ自分のできることから積み上げていくのが大事だろう。
とりあえずこの想いが冷めぬうちに、お礼の品を買いにスーパーに向かう。
あまり高価なものを渡すと確実に引かれると思うので、お返しとしてノートとチョコレートを袋に入れて渡すことにした。
これなら不自然じゃないし、井上さんに不審に思われることもないだろう。
なんとなく緊張してきたけど、自分の意思で行動を起こせている、という事実が少し誇らしかった。
昨日は変な夢を見て最悪な1日を過ごしたが、
あれは俺が変わるための小さな「キッカケ」だったのかもしれない。
俺はその小さな「キッカケ」を活かそうと自分なりに一歩を踏み出している。
ほんの少しだけ、自分を好きになれた気がした。
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