3話 新クラスの面々

2年3組。

ここが俺の新しいクラス。


男子の席は右から順に詰められていて、

俺は7人×6列の並びの右端の席。


噂には聞いていたが、女子の数が想像より多い。


男子が13人に対して、女子はその2倍以上の29人。

なんだか少し肩身が狭い気分である。

その分男子同士での結束は強まりそうだし、悪いことではないかもしれないが。


最初のホームルームまでまだ時間があるので、みんな一旦荷物を席に置いて、1年次のクラスが一緒の人たち同士で固まって喋っている。


俺もホームルーム始まるまで、元1年1組の連中と喋っておこうかーー


席を立とうとした瞬間、前の席からクシャクシャに丸められた紙が俺の額に飛んできた。


「イテっ。なにすん……。あ、お前ーー」


目の前の席に、ニヤニヤしながら俺の方を見ている奴がいる。

コイツは1年の体育祭で同じ赤ブロックだった倉本航くらもとわたるだ。

組体操でペアになって少し喋ったぐらいだが、俺と同じく覇気がない適当な奴で、俺と同じく体育祭の時は先輩たちから目をつけられていた。


「よっ。元1組の真面目君じゃん。名前なんだったっけ」


「並川アキ。てか、いきなりゴミ投げてくんなし。そういや体育祭の時も小石投げてきたよな、お前」


「俺そんなことしたっけ?あんま覚えてないわ〜〜」


相変わらず適当な奴。

ただ、そのくせ成績はかなり良い。

成績上位者に常にランクインしており、なぜ1年のときに優秀クラスじゃなかったのかわからない。


数学が特に得意なようで、数学では必ず順位は1桁代にランクインしていた。


それなのになぜ文系を選択したのかというと、文系の方が楽そうだから、らしい。

俺も大概適当な方だが、ここまでのやつはあまり見たことない。

俺はそういう奴が嫌いではないし、むしろ面白くも感じる。

バスケ部に所属していて、休みもバスケ部同士で一緒にいることが多いようだ。


また、バレー部とバスケ部は同じ体育館で活動をしているため交流があるみたいで、

1年で俺と同じクラスだった宏樹とも仲が良いらしい。


「てか並川、他に知り合いいる?俺、他は藤吉遥希ふじよしはるきとバスケ部のマネージャーくらいしかわかんねえわ」


「けっこう元1組の女子がいるけど、俺あんまりその人たちと喋ってなかったから、話せる人ってなったらあとは山本くらいかも」


「山本はバレー部だから知ってるわ。あいつはマジで持ってる。」


「山本見てると1日1回は勝手にネタを提供してくれるからなあ」


山本竜樹やまもとたつきは俺と同じ元1組で、バレー部に所属している。

天然というか、不思議な感性を持っていて、

時折ミラクルなプレー(?)で教室に笑いを巻き起こす。


直近で言うと、何もないところで急にバランスを崩して倒れたり、

授業中に何を思ったか、急に1人でリズムに乗り始めたり。


何もないところから笑いを生み出す、0から1の男である。

しかも本人が意図せずにミラクルを起こしているのが余計ツボに入る。


そうやって倉本と話してるうちにホームルームの時間になり、新しい担任が教室に入ってきた。

倉本が担任の姿を見るなり露骨に嫌な顔をする。


「うわ、北村じゃん……。これ1年終わったわ」


「お前とは絶対相容れないタイプだもんな。俺もちょっとあの人苦手だけど……」


担任は、30代後半の女性で、時折厳しい面も見せることで有名な北村きたむら先生。


正直、俺もできるだけ温厚な先生を希望していたが、どうやら今回は担任ガチャに外れてしまったみたいである。


悪い人ではないのだが、正義感が強く、

授業中に居眠りしてる生徒がいると事細かに注意している。


「今日から2年3組の担任になりました、北村です。優秀クラスということなので、みなさんには学年を引っ張っていくような行動を期待していますね。みなさん1年間よろしくお願いします。」


パラパラと拍手が起こり、みんなの北村先生に対する反応が伺える。

厳しい先生が好まれることなど学校においてはありえないのだ。


今日はホームルームのみで解散のため、今日のところは一旦これで終了。


今日からほんの少しの春休みに入るため、このクラスが始まるのはまた1週間後である。


初日ではあるが、倉本と思ったより打ち解けることができたし、一応元同じクラスの山本もいるので、1人で浮くことは回避できそうだ。


部活も今日はオフなので、とりあえず今日のところは一旦これで帰ろうか。


その後、元1年1組の打ち上げとして、

仲の良い男子10人程度で焼肉に行き、ドリンクバーで多種多様なジュースをミックスされたり、許容範囲を超える量の肉を全員必死になって胃に詰め込んだりして、一年最後の日を終えた。


次の日の体調は当然終わってた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る