第381話 強味を押し付ける

「ッ!! ギャギャギャッ!!!!」


「フッ!!!!」


「っ!? ギャアアアッ!!!!!」


クリスティールから氷斬波が放たれたと思えば、今度はエリヴェラから聖斬波が放たれる。

当然、ゴブリンキングはそれらを対処しなければならない。


エリヴェラがクリスティールに伝えた内容は……ひとまず、頑張って削ろうという内容だった。


クリスティールとエリヴェラの二人で戦っていようとも、ゴブリンキングが強敵難敵であることに変わりはない……が、ゴブリンキングとしても、二人は中々に放っておけない厄介な人間であった。


「乱れ、裂きッ!!!!!!」


「ギャァァアアアアッ!!!!!」


乱れ舞い、迫りくる氷刃の連撃に対し、再び戦斧に岩石を纏い、対抗しなければならない。


結果として、クリスティール双剣技、乱れ裂きはゴブリンキングにダメージを与えることはなかったものの、魔力を消費されることに成功した。


「ホーリースラッシュッ!!!!!」


放たれるは聖光の斬撃波。


防げる……弾ける。

嫌なタイミングで放たれたため、回避という手段は取れないものの、ゴブリンキングは聖剣技、ホーリースラッシュに対して対応は出来る。


ただ、モンスターとしての本能が叫ぶ。

あの聖光には……触れるなと。


「ッ!!!!!」


結果的に、ゴブリンキングは難無くホーリースラッシュを粉砕した。

しかし、聖光という属性は、間違いなくゴブリンキングにストレスを与えていた。

ついでに……魔力を消耗させることにも成功。


「はッ!!!!!」


「っ、ギッ!!!」


今度はクリスティールからゴブリンキングの足元に氷斬波が放たれた。

足を斬ることが目的ではなく、地面に着弾した際……地面を、ゴブリンキングの足を凍らせることが目的。


それに直ぐ気が付いたゴブリンキングはあっさりと躱し、岩斬波を放ち、クリスティールに攻撃を放つが……その背後を、エリヴェラが狙っていた。


「ギギャッ!!!!!!」


「っ!!!!!! 流石、王と言うべき、か!!!」


ゴブリンキングは背後からの接敵に気付いており、岩斬波を放つ勢いそのまま、エリヴェラに向かって凶刃を叩きつけた。


エリヴェラも一旦丸盾を宙に放り投げ、両手で聖剣を握って渾身の一撃で斬撃を叩き込もうとしたが……このままでは分が悪いと判断し、退きながら空中で丸盾をキャッチ。


当然、ゴブリンキングとしては是非とも狙いたいチャンス……ではあるが、それをさせないのが生徒会長、クリスティール・アルバレシア。


「っ!!!!」


「むっ……これまた、流石王だと……言うべきでしょうか」


特大の岩斬波をなんとか凌ぎながら、クリスティールは双剣の片方のみに……剣先のみに冷気を集中させ、渾身の突きを放った。


範囲は非常に狭く、貫通力もそこそこといった程度だが、冷却力が非常に優れていた。

ふれれば、間違いなく体の一部を凍らせる。

ゴブリンキングであれば、渾身の力を込めてなんとか破壊することは出来なくもないが、必要な集中力と時間から……それだけに意識が向いてしまえば、聖剣から氷刃にその首を狩られてもおかしくない。


だからこそ、絶対に躱さなければならなかった。


こうして、クリスティールとエリヴェラのヒット&アウェイに近い戦法により、ゴブリンキングの魔力が順調に削られていき、ついでにストレスも溜まっていく。

まだ軽い切傷ぐらいしかダメージは与えられていないものの、二人の作戦通りに事が進んでいると言っても過言ではない。


三年生の中でもトップクラスの学生と、二次職で聖騎士に就いた超新星が組んでおきながらその程度の戦法しか取れないのかと笑う者がいるかもしれないが……それは、ただゴブリンキングという怪物の強さを知らないだけ。


(今のところ、削れては……いますね)


(知っている。知っていた……知っていたとはいえ、やはり体が振るえる程恐ろしいね)


ただのBランクモンスターではない。

同族を、群れを束ねる王が、戦王が放つ圧。


二人はなんとかしてゴブリンキングを削れているものの、二人の魔力と精神力も削られていた。


真正面から戦って勝てるのであれば、苦労しない。

二人は確実に……絶対にゴブリンキングを倒す為に動く。


「ハァアアアァァアアアアアアアアッ!!!!!!」


「ッ!!?? ギャァアアアォォオオオオッ!!!!!」


冷静に淡々と攻撃を放ってきたかと思えば、今度は一変して雄叫びを上げながら聖剣を振るい、斬りかかるエリヴェラ。


ゴブリンキングとしては驚きながらも、望むところではあった。

もう一人の人間の位置も冷静に把握しながら、聖剣を盾で弾き、岩斧を振るい、今度は自分が強敵を削らんと暴れる。


「ッ!!!」


「疾ッ!!!!!」


徐々に徐々に……エリヴェラのみに意識が集中しようとした瞬間、鋭い氷針がゴブリンキングの顔先を通った。


なんとか踏みとどまり、直撃は避けたものの、今度はクリスティールが先程までとは違い、覚悟を決めた表情で二振りの氷刃を振るい、迫りくる。


上等だと、今度はそちらを潰してやろうと、ゴブリンキングは岩斧を振り抜き、叩きつける。


「ッ!! っ!!!!! ギャギャギャッ!!!!」


「ッ……っ………………ふっ!!!!」


だが、届かない。

果敢に攻めるも、クリスティールはなんとか数分という短い時間ではあるが、その間にゴブリンキングが取った攻撃パターンから動きを予想。


靴裏に纏う氷、一部の地面を凍らせて移動する独特な動き、回避によってなんとかゴブリンキングの猛攻を凌ぎながら、自身も氷刃を振るっていた。


「ッ!!!!!!!!!」


岩斧が当たらないなら、自身の体も含めて攻撃しようと、盾技……シールドバッシュを発動。

盾で攻撃を行うという、どういう意味だ? という疑問が浮かぶスキル技ではあるが、ゴブリンキングはその技と同時に突進のスキルも同時発動。


結果……クリスティールが直撃すれば、文字通り交通事故にあったかのように吹っ飛んでしまう。


「っお、と。やはり、恐ろしい王ですね」


しかし、クリスティールは滑る様に……出来る限りながら状態を逸らしながら前方に移動。

ゴブリンキングの足をくぐる様に移動し、なんとか轢かれずに済んだ。


「セヤッ!!!!!!!!!」


「ギっ!!!!!」


そして、今度はエリヴェラが戦士の形相で斬りかかる。

先程までと何が違うかというと……主に、魔力量が違っていた。


相手の魔力量は削り、自分たちはなんとかして回復する。


二人は存分に複数人で戦う強味を相手に押し付け、順調に激闘を進めることに成功していた。

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