第309話 少し醒める
「イシュドから見て、アンジェーロ学園の面々はどうだい?」
「ん~~~……まっ、相変わらず気になるのはエリヴェラじゃないっすかね」
イシュドが自分たちが他国であるカラティール神聖国に向かっても構わないと思った要因。
そんな彼は存在的にも、成長具合から見ても注目度が高い。
「エリヴェラ君ねぇ…………最初の試合で、あなたがバーサーカーソウルを使いながら……剣技の裂空? を使った時は~、さすがに不味いって思ったけど~~……まさか意識を保ったまま、耐えちゃったもんね~~~」
「そうなんすよ。しかも、壁に激突しなかったっすからね。あれを見た時はテンション上がったな~~~」
「それに関しては俺も同意だね」
他の強化系スキルをストップし、魔力を纏うのストップした状態とはいえ、狂戦士の真骨頂であるバーサーカーソウルを三次職に転職しているイシュドが発動したとなれば……兎にも角にも恐ろしいの一言。
正直なところ、シドウもアリンダと不味いと思い、少し焦りを感じた。
「ところで、二日目の夜あたりから、ステラさんに細かい技術指導をしてるけど、あれは良かったのかい?」
シドウの故郷である、大和にも武術という既で戦う技術や技が存在する。
だが、イシュドが使う五体を使った戦い方は、それらとはまた違い一種の技術であることにシドウも気付いていた。
だからこそ、簡単に教えても良い技術ではないと思っていた。
「あれなんすよ。ちょっと色々あって?」
何があったのかをザっと話すと、シドウとアリンダは共にニヤニヤと笑みを浮かべながらウィスキーを呑む。
「なるほどなるほど……ふっふっふ。いやぁ~~~~~、若いってのは良いね~~~~。そう思いませんか、アリンダ先生」
「ちょっと~~。シドウ先生ぇ、私たちだってまだまだ若いじゃないですか~~。まぁ、でも……なんて言うか、良い意味で青臭さを感じるかな~~」
ステラも、イシュドが身に付けた技術が、どれだけ重要な財産なのか理解している。
だからこそ、出来ることななんでもするし、払えるものならなんでも払うと伝えた。
「やっぱり、イシュド的にはこう……ワクワクしちゃったのかい?」
元々そういった下の話は苦手ではく、更にウィスキーを呑んで多少酔いも回ってるからか、シドウは本当に普段は浮かべないニヤニヤ顔を浮かべていた。
対して……イシュドは特にニヤニヤと笑みを浮かべられていることに関して、ツッコむことはなかった。
基本的にそちら側に回ることが多いからこそ、今回の事を話せば今度は自分がニヤニヤと笑みを浮かべられると解っていた。
「なんか前にもあったな~~って思ったっすね。まっ、当然ワクワクムラムラしたっすよ。つか、どんな男でも……去勢? してるような男じゃなかったら、絶対に雄の本能が刺激されるっすよ」
「な~んだ。随分冷静ね~~……それで、その欲をなんとかして退散させたんだ~」
美人教師……と言えるアリンダから見ても、ステラの容姿は非常に整っていた。
加えて、クリスティールとステラの試合を観戦してる最中に話していたイシュドとフィリップの会話から察するに、巨乳好き。
そんなイシュドからすれば、ステラからのそういった提案はまさに垂涎物と言える。
イシュドが欲望には忠実なタイプであるということもあり、よく耐え切れたなと思ったアリンダ。
「顔面をぶっ叩いたらなんとか出来たっすね」
「荒技ね~~。でも、本当にそれだけで退散出来るものなの?」
「そこはあれじゃないっすか、個人的な考えが影響してるんじゃないっすかね。俺は確かにステラとやれるならやりたいっすけど、そういう流れでやるのは多分気分が乗らないし、後俺は……責任とったりするの嫌なんで」
前半の理由はそれなりに良い理由であるにもかかわらず、後半に関してはド屑な発現を堂々と口にするイシュド。
しかし、ウィスキーを呑んで多少酔いも回ってきたからか、大人二人がケラケラとその堂々としたド屑発言を聞いて笑った。
「あっはっは!!! 本当にハッキリしてるね~~。そんな発言して、ビンタされなかったの?」
「ちょっと驚いてはいたんじゃないっすかね。でも、割と納得してくれてたと思うっすよ。俺はまだまだ遊びたいからこそ、責任を背負う様な真似はしたくないんで」
「ふっふっふ。ある種の清々しさがあるからこそ、ステラさんも納得出来たんだろうな」
武士……侍であるシドウから見ても、まだまだ遊びたいから責任を取るような真似をしたくないという発言は、本当によろしくない。
だが、イシュドという人間をそれなりに知っているからこそ、そこが良い点に感じた。
「とはいえ、ステラさんは覚悟を持ってその発言をしたんだよね。その点に関して、何か言われなかったかい?」
「言ってなかったような、言わなかったような…………けど、とりま貴族令嬢が言う様なセリフ、提案じゃないじゃないっすか。それ考えると、俺マジで大人の判断出来たと思わないっすか」
イシュドの言葉に、大人二人はグラスを持ちながら何度も頷いた。
雄としての欲を抑え、人間の男としてなんとか良い判断を下した。
それだけではなく、イシュドは大人としても……政治的な意味も込めて本当に大人な判断を下せたと言える。
「その通りね~~。仮に……本当に二人がやっちゃったとして~~、それがバレちゃったら……本当に本当に本当に面倒な問題になっちゃてたよね~~。最悪、私がクビ切れれてもおかしくないかも~~~」
今回の交流会の監督者は、アリンダとシドウではあるが、実質的な監督責任者はアリンダである。
シドウはあくまで補助であるため、カラティール神聖国で何があった際、まず責任を問われるのはアリンダとなる。
本当に首を切られることはなくとも、教職から追い出されることは十分にあり得る。
「ステラさんはステラさんで、財産と捉えている技術だからこそ、そういった提案をしてしまったんだろうね……ん~~~~、若さだね~~」
最初こそニヤニヤと笑みを浮かべていた二人ではあるが、改めて当時の状況を冷静に整理してみると……冷や汗が流れるのを感じ、若干酔いが醒めてしまった。
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