第33話 ドラゴンスレイヤー
ローズ、アンネリーゼさん、俺の三人が同じ部屋で一晩過ごすという素敵なハプニングが起こった。
その後、怒り散らすローズをなだめるアンネリーゼさん。
アンネリーゼさんは俺たちより少し年上という感じだった。
「どうどう」
「猛獣じゃない!」
「なら、落ち着いてください」
「だって!」
「どうどう」
「だから、違うって言ってるわよね?」
「まあ、今日は用事がありますので帰りましょう」
「それが嫌なのよ」
「ダメですよ、それはそれ、これはこれです」
「むぅ」
年長者のアンネリーゼさんはローズを簡単になだめて連れて帰っていく。
流石アンネリーゼさんって感じかな……まあ、年の功かな?
ローズはなだめられたと言っても少し不満がある顔をしながら部屋を出ていく。
「失礼しました」
アンネリーゼさんはドアを閉める前に一礼をして俺に頭を下げる。
「あ、そうだ。サムさん」
「はい」
「今度はお屋敷へいらして下さい」
「え?俺なんか行ってものですか?」
「はい、私の名前を出してもらえば大丈夫です。私はアンネリーゼ=フレミング と申します。以後、お見知りおきを」
アンネリーゼさんは再度、頭を下げてからドアを閉める。
アンネリーゼさん……綺麗な人だったなぁ。
でも、どこかで聞いたことがある名前だな。
どこだっけ?
その後、いくら考えても思い出せないので、俺は諦めて普通に学園に登校する。
学園に登校するとまたしても自動車が校門前に停車する。
はいはい、また王子様が黄色い声援を受けるのね。
よかったよかった。
俺は我関せずとスタスタと校舎へ向かって歩いていく。
どうせ、聖女モニカ様も乗っているんですね。
なるべく顔を合わせたくないのでスタスタと歩く。
「おい(ヒソヒソ)」
「ああ(ヒソヒソ)」
ん?なにやら様子がおかしい。
皆、校門へ視線を向けて話をしているのだが、黄色い声なども一切ない。
アンソニー殿下が下りれば必ずと言っていいほど女性たちが騒ぐのに女性達も驚いた表情で校門へ視線を向ける。
俺はあまりにも気になったので振り返り校門に止まっている自動車へ視線だけを動かした。
「なっ……!」
あまりの驚きにうめき声のような声が出る。
自動車から降りようとしているのは、あのドラゴンスレイヤーのポルトンだった。
あまりの体の大きさに少々使っているので運転手に引っ張り出してもらっている。
ただ、俺が驚いたのはその後だった。
ポルトンの後から降りてきたのはまさに真っ赤なバラと言ってもいいぐらい美しく着飾ったローズだった。
「ポルトン様、私は体調不良のためこのまま失礼させていただきます」
「ええ、構いませんよ、マイハニー」
「……では、失礼します」
ローズはポルトンに一礼をし再度、車に乗り込みそのまま帰っていく。
俺があっけに取られているとポルトンがズカズカと巨漢を揺らしながら俺に近づく。
それと同時に取り巻き達もポルトンの後ろに集結する。
そして、ポルトンは俺の正面で止まり指をさして宣言する。
「おい、キサマ」
「なんですか?」
「忠告しておく。俺とロゼッタ公爵令嬢は昨晩、婚約を正式に行った」
「へぇ」
俺は正直、かなり驚いた。
ただ、あまりに驚くとポルトンの思うつぼのような気がして平静を装う。
「いいか、今後、俺のハニーに近づくな、少しでも近づいてみろ……このドラゴンスレイヤーが黙っていないと思え」
「あ、そうですね」
こいつはあの状態で自分がドラゴンスレイヤーであることに一切の疑問を抱かないなんて……こいつはある意味で大物だな。
俺は淡々と回答していたが、取り巻きはどうも俺のことが気に入らないようだ。
「真剣に聞いているのか?」
「ええ、まあ」
「ポルトン様はあのドラゴンを倒したすごい人なんだぞ」
「すごいですね」
取り巻きAとBはかなり興奮している様子。
その後も、ポルトン様とやらすごさを語りだそうしたのだが、ポルトン本人に止められる。
「おい、もう行くぞ」
「あ、待ってください。ポルトン様」
「おいていかないでください」
俺の横を通って歩き始めるポルトン。
だが、何か言い忘れたのか振り向き再度、指をさして宣言する。
「貴様はこの学園ではゴミ以下だ。そのことは忘れるなよ」
その後、俺に宣言をしたポルトンはスッキリした顔で校舎へと歩いていく。
取り巻き達も俺に指をさして、何か言うのかと思ったら……指をさすだけだった。
何がしたいんだ?
ああ、ポルトンの真似がしたかったのか?
可愛いな。
それにしても、ローズのやつ……何かあったと思ったが婚約か……しかも、相手はポルトン。
何とかしてやりたいが、何もできないだろうな。
まあ、話ぐらいは聞いてやってもいいか。
授業が終わったらローズの元へ行こうと思った。
しかし、俺の教室前で何故か聖女モニカ様が俺を探しているのだ。
まさか、また戦場へ行かされるのか?
今度はどこへ飛ばす気だ?
……………………よし、今日は休もう。
そうだ、授業よりもローズが心配なのだ。
うん、そうしよう。
こうして俺は本日の授業をさぼることにした。
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