第30話 グランドナイト
聖女モニカ様の私室から一変して俺は埃っぽい場所で仕事をしていた。
今日は勇者として出陣する王子様の初戦場となるフォーライト平原へ来ていた。
「本日はよく集まってくれた」
アンソニー殿下が兵士たちの前で指揮をするための演説を行う。
「このアンソニーは勇者としてこの戦場の指揮を執る」
勇者軍は総勢50名
アンソニー殿下と聖女モニカを筆頭にマギネスギヤ、歩兵、後方支援の3つの部隊で構成されている。
「数としてはこちらがかなり劣っている……だが、優秀な諸君ならばこの戦況を乗り越えられると信じている。」
兵士たちは皆、やる気になっているのは確かだ。だが……
これから始まるのは命のやり取りだ。
「誰一人欠けることなく戦闘が終わることを勝利の条件とする」
そのため、かなり緊張した面持ちでアンソニー殿下の演説を聞いていた。
「更に、この戦場でカギとなる聖女モニカを紹介しよう」
アンソニー殿下がモニカの紹介を行うとモニカがゆっくりと壇上へ上がる。
登場と同時に風が吹くとボリュームのある銀髪が光り輝く。
「「なっ」」
聖女モニカの神秘的な姿に兵士たちは声を漏らす。
ただ、この時のモニカの姿は正直、俺は誰にも見せたくないと思ってしまった。
際どいラインのレオタードの上に素材がレースのドレスで服が肌の露出を抑えるという機能が仕事をしてないからだ。
兵士たちは別の意味で興奮している。
「「「ゴクリ」」」
そして、視線が集まっているのは聖女モニカも分かっておりそれに応えるべく小さく手を振った。
「「「「うおおおおおおおおおおおおお」」」」
それに反応する男どもは雄たけびを上げる。
ついでに全員、鼻の下が伸びているのだが……まあ、仕方ないか。
モニカはアンソニー殿下の隣に立つとアンソニー殿下はモニカを抱き寄せ剣を掲げる。
それを合図に兵士たちが一斉に槍などの武器を地面に叩きつけて音を鳴らす。
ガシャン!ガシャン!
リズム良くなる音に気合が入る兵士たち。
若干名、鼻血を出しているが……大丈夫か?
「更にもう一人紹介したい。この戦場に駆けつけてくれてたポルトン=ウブリアーコ騎士爵だ」
アンソニー殿下に紹介された人物はかなりの恰幅の良い男性で普通なら「戦えるの?」って心配になりそうだが、彼はマギネスギヤ部隊のリーダーでもある。
そして、彼の功績は輝かしいもので付いた二つ名が……
「すごい、グランドナイトだ」
「あれが……本物か」
「迫力があるな」
そう、ポルトンはソロで難易度SSSを3層まで踏破したことが認められ王国からグランドナイトの称号を与えられ、学園の生徒ながらに騎士爵を賜る実力者だ。
って、いうか俺が出ていくとき3層から雑魚が道をふさいでいたので掃除した結果だろうが……。
「この俺がいるからには安心してくれ、この俺が剣となり盾となり皆を勝利に導こう!」
ポルトンは兵士の前に立ち皆を奮い立たせていた。
と、メイン会場では大盛り上がりであるが俺はというと会場から少し離れた場所にいた。
メイン会場の内容は遠隔操作された小型ドローンから送られてきた映像を見ている。
ただ、俺も一応、兵士として参加しているためパリッとした真新しい軍服に袖を通して働いていた。
一体、どうしてこうなった?
まあ、答えは簡単だった。
ようは俺を戦場に向かわせるための演技に俺はまんまと引っかかったということだ。
聖女モニカ様も男を手玉に取るのが上手くなったものだ。
「はぁ……なんだかなぁ」
まあ、それに釣られた俺はまだまだだと反省をする。
それと同時に聖女モニカ様はもう俺の知っているモカとは全く別人になっているという事実に俺は落ち込む。
昔はあんなにも仲良かったのにもう無理なのだろう。
まあ、今は生きて帰ることを目標にしますか。
幸いにも俺の軍服の腕章に紋様などは入っていない。
このことから後方支援兵であることを意味する。
そして、なんと俺自身が配属しているのはマギネスギヤ部隊だ。
これからやる作業はマギネスギヤのメンテナンスだ。
「おい、早くポルトン様のマギネスギヤを掃除するんだ」
デッキブラシをもってポルトンが乗るマギネスギヤをメンテナンスしていた。
「了解です」
そのメンテナンスと言えば聞こえはいいが……ただの掃除だ。
「マスター、報告があります」
俺にウィンドウ画面にて話しかけたのは白くて丸っこいブリキのおもちゃ。
それにしても白桃から話があるのか?
なんだろうか?
「100m級のドラゴンがこちらに来ています」
「は?」
これまた、でかいドラゴンが来ているな。
今日はレッドドラゴンハントの予定だが……これ無理ゲーじゃない?
なんでもドラゴンの肝が必要な人がいるらしくそのために勇者に出動要請が出たとか。
ただ、100m級のドラゴンって、王子様もついてないな。
100m級のドラゴンなんて小国が亡ぶレベルだぞ。
「位置の特定はできているのか?」
「偵察用のドローンを向かわせています」
「俺のマギネスギヤの準備も頼んだぞ」
俺たちが敵の情報と戦略を話し合っていると偉ぶった声が近づいてくる。
「おい、独り言なら仕事が終わってからにしろ」
ちなみに白桃の写ったウインドウ画面を第三者が見ることが出来ないため独り言を言っているように思ったのだろう。
そして、嫌悪感がする声の主は案の定、俺の大嫌いなポルトンだった。
俺に近づいて、わざわざふんぞり返って立っていた。
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