第23話 魔道具店内

昨晩のことを思い出し俺は再度、溜息をつく


「はぁ」


それにしても盛大にふられたものだ。

いや、フラれてすらいない。

見向きもされていないのだ。


「男として見れない……か……」


前世では盛大に捨てられたが……何度味わっても失恋というものは胸が締め付けられる。

そして、辛いからこそ更にエリザベス先生の顔が頭にこびりついて離れない。


何をしていても浮かんでくる好きな人の笑顔や照れた時の顔。

泣きそうだ。


「成長がないな……俺」


クヨクヨしている自分を俯瞰して見れるようになっただけマシなのか?

前世の時は感情に任せていたからな。


吸いなれないタバコにやけ酒と……麻薬に手を出さなかっただけヨシとしておくか?


気持ち切り替えないとな。


カランコロン


店のドアが開く。

お客さんだ。

流石に仕事中に辛気臭い顔をするのは良くない。

この店のオーナーにも、何よりこの店を紹介してくれたエリザベス先生のためにも。


にしても、この店のオーナーはあまり魔導具屋って感じがしなかったな。

整った顔立ち金髪で日焼けしており如何にも陽キャウェイって感じの男だ。

確か年齢は30歳と若かったよな。


まあ、なんにせよ非モテな俺とは正反対で気に入らないが仕事は仕事だ!

自分の感情は捨てよう。


「いらっしゃいませ」


入ってきた客に営業スマイル&首を垂れる。


「あら、生きていたのね」


しかし、入ってきた客の態度は悪かった。

それもそのはず


「……って、なんだローズか」


入ってきた客はこの店には部不相応な客だ。

この店の魔導具は一般庶民が扱う値段のものばかりだ。

金に物を言わせて最高級を求める人は用がないはず。


「失礼な店員ね」

「冷やかしか?」

「エリザベス先生に言われて様子を見に来たのよ」

「へぇ」

「あら嬉しくないの?愛しのエリザベス先生が心配してるのよ」

「……別に~」


俺はあえて白々しく装う。

だって、フラれたばかりだなんて言えるものか!


「というか、なんで俺の愛しの人がエリザベス先生なんだよ」

「見てれば分かるわよ」

「………………」


え?俺ってそんなに分かりやすかったのか?

もしかして、そんなところがエリザベス先生に知られて……

嫌われていたのか……。

男として見れないは建前で気持ち悪かったとか……


「のおおおおおおおおおおおおお」


その場で頭を抱えてふさぎ込む。


そして、俺は自分の行動や浅慮な思考、行動を悔いる。

どこだ……どこで間違えた!


「ちょっと、いきなり頭を抱えて、どうしたのよ?」

「いや、別に……」

「ええっともしかして、気にしてる?大丈夫よ、先生は一切、あなたの気持ちになんて気づいてないわよ」

「………それは、それで悲しい」


昨日のことがあるから余計にエリザベス先生の顔が思い出されて胸に棘が突き刺さる。

流石に一晩で回復できるほど人間出来ていません!


いや、それよりも


「なあ」

「なによ」

「なんでお前は俺がエリザベス先生が……そのなんだ……愛しの人だって思ったんだ?」

「見ていればわかるわ。あなた、先生を見るときと私を見るときの目つきが違うもの」

「そんなに変えているつもりはなかったが、分かりやすかったのか?」

「いえ、些細な変化よ」

「じゃあ、なんでわかったんだよ」

「それは、うらや……おほん、悪役令嬢の感よ」


ローズは胸を張って言い張る。


「ぷっ。なんだよ、それ」

「面白いでしょ」

「ああ、最高だよ」


あれ?悪役令嬢?

そのフレーズを知っているということは?


「それよりも聞きなさい」

「ん?なんだ?」

「その愛しの人、エリザベス先生がお見合いするのよ」

「…………は?」

「私が聴いた情報によると明日のーーーーーー」


エリザベス先生が結婚?

ちょっと待て、早まるなエリザベス先生!


いや、もうフラれた外野がああだこうだ言う権利はないよな……。


待て!

お見合いってもしかして、無理やりだったりするのか?

それならば放っておけない。

強くあるが脆いところもあるエリザベス先生だ。


エリザベス先生の結婚相手は彼女に相応しい人であるべきだ。

じゃないと俺が報われない!


「おい、詳しく!」


居ても立っても居られないとローズの肩をつかみ食い入るようにローズに迫る。


「ちょっと、近い……近すぎる」

「あ、すまん」


あまりにも勢いよく近づいたせいであと少しで唇が接触してしまうところだった。


「で?」


ローズと距離を取り再度、聞き込みを開始する。


「待って、あなたが変なことするから心臓がーーーーーー」

「おう、そうか。すまん」


しばらくの間、ローズの呼吸が落ち着くまで待つことに。

そんなに激しく迫ってしまったのか?

そんなこともないような気がするが、まあ仕方ない。

今はローズの回復を待つしかないな。


しばらくするとローズの呼吸は落ち着き話ができるようになる。


「もう大丈夫よ」

「ああ、すまなかった」

「そうね、どこから話しましょうか」

「頼む、教えてくれ」

「えっとね、まずは相手なんだけど、30歳の男性、まあこの店のオーナーよ」

「え?マジ?」

「マジ」


もしかして、俺のために先生は身を売るようなこと……。

いや、俺のためってことはないか。

だったら、一体、どういった理由が?

まさか、本当にエリザベス先生、結婚するつもりなのか?


ならば、エリザベス先生には幸せになって欲しい

オーナーはエリザベス先生に相応しいか俺が見定めなければ。


いい男でなければ、エリザベスはやらん!

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