第4話 夜会
エリザベス先生の女体をこれでもかと拝んだ日の夜。
ヴォルディスク王立学園伝統の夏季休暇前・親睦パーティが開かれた。
ただ、この親睦パーティは通称「夜会」と呼ばれる。
本来、夜会とは社交界や上級階級などでパーティやイベントのことを指すが、学園のパーティーなので平民なども参加する。
ただ、ドレスコードはあるので平民であれ皆、普段着ではないフォーマルな服装で来場していた。
そして、当然のことながらダンスパーティも組み込まれており恋人がいる生徒は一緒に参加してダンスを楽しむ。
また、恋人がいない生徒はこの場……夜会での出会いを期待する生徒も男女問わず大勢いる。
俺は着替えるのに少し手間取ったがなんとか間に合うことができた。
モカに渡していた洗濯物が見つからなくてちょっと焦ったが何とかなったな。
いつもモカ任せなのを少しばかり反省する。
走ってきたので息を整えていると俺に向けての囁く声が聞こえてくる。
「あいつ、やっぱり来たな」
「ああ、爆発しろよ」
「くそ、アイツさえいなければモニカさんは……」
何やらやっかみが聞こえるが俺はそれを無視する。
だがそんな、嫌われ者の俺に声を掛ける人物がいる。
「よう、勝ち組」
白いスーツを纏った男が俺のところへやってくる。
こいつの名前はカーツ。
なんとも陽キャ、ウェイ!って感じで馴れ馴れしい男だ。
ただ、こいつは決して悪い奴じゃないんだよな。
「カーツか……って勝ち組ってなんだよ」
「お前にはモカちゃんがいるだろ」
「ふっ、まあな」
俺はカーツの言葉に少々、鼻が高くなる。
高く成るどころじゃないな、まさに天狗だな。
「俺はこれから探すぜ」
「まあ、お前ならすぐだろ」
俺は決して嫌味でも何でもなく、カーツがその気になれば恋人の一人や二人作るのは朝飯前だろう。
だってさ、逆立ちしても絶対に勝てないほどイケメンだもん。
だからみな、こいつと何かするときは絶対に彼女連れてこないからな。
こいつになびかなかったのはモカぐらいだよ。
「そんなことはないよ」
「なんだろう、その面でその謙虚な姿勢は腹が立つな」
「おいおい、お前と同じ田舎の貧乏男爵子息なんて相手にしてもらえないよ」
「結婚相手としては別ってことか」
「まあな」
本当にそうなのか? っと疑問を持つが……
それよりもテーブルには色とりどりの花が飾られており、その花に負けないぐらい豪華な料理も並んでいる。
「カーツ、この夜会の料理ってこんなにも豪華なんだな」
俺は正直、もっと簡素な立食用の料理だと思っていたので驚いていた。
「いや、どうやらあの人が在籍しているのが大きいらしいぞ」
と、友人のカーツが教えてくれる。
「もしかして、第二王子か?」
俺はカーツに尋ねる。
「だろうな」
なんとなくだが、そうだろうと思っていたことが当たったようだ。
「本当、俺たち男爵家の芋料理と比べたら……クッ」
「泣くなサム、思う存分楽しもうじゃないか」
あまりの料理の質の違いに驚きと興奮で泣けてくる。
いや、芋料理も美味しいんだけどね。
見た目の豪華さがあまりにも桁違いだ。
「あ、カーツくんここにいた」
声のするほうに視線を移すと、少し離れた場所から駆け寄ってくる少女の姿があった。
彼女の茶色いボブカットに光があたり、光り輝くように見えた。
なんとも親しそうにカーツに近づく女性はすぐさまカーツの右腕にしがみつく。
「おや、バレた?」
「もう、探していたんだよ」
彼女は少しほほを膨らましながらカーツを見上げる。
「ごめん、アリーシャ」
カーツは、特に悪気はなかったが、謝罪することにした。
しかし、彼の謝罪はめんどくさいというのを一切に顔に出さずに爽やかな笑顔というオプション付きだ。
イケメンスマイルのおかげなのは目に見えていた。
右腕にしがみつく彼女の頬は高揚し赤くなりながら「仕方ないな」っと呟くように許していた。
カーツ……爆発しろ
「なんだ、カーツここにいたのか」
と、逆サイドからカーツの左腕にしがみつく女性が現れる。
逆サイドの女性はアリーシャと違い胸が大きく開いたドレスを着ている。
「ルアナ、その……当たってる」
ルアナって確かカーツの幼馴染だっけ?
俺と同じクラスだから知っていたが、なんだそういう関係だったのか。
「なんだよ、アリーシャは良くはあたいはダメなのか」
ルアナの性格はガサツそのものだが、体はとても発育がよく、まるで大玉スイカ2つがカーツの腕を挟み込むような状態だ。
そして今、目のまえでカーツを取られるまいと自分の武器を使ってカーツに迫っているって感じかな。
ルアナも女の子だったんだな……教室の様子からは想像が出来なかったが……
「もうルアナばかり意識しないでよ」
ルアナの反対の腕に更なる圧力をかけるアリーシャ
「ア、アリーシャ!」
「むう……」
アリーシャの反撃にカーツが反応する。
その反応が気に入らないルアナは更なる圧力をカーツに与える。
ただ、大きさの比較は一目で分かるほどの違いがありルアナの圧勝だ。
「えっと、向こうの料理がおいしそうだから行ってくるよ」
カーツはその場から動いて現状を打破しようとするのだが
「いいね、行こう」
「おう、いいぜ」
しがみついた腕から離れない2人にため息をつくカーツ。
また、カーツの見えないところでカーツを挟んでいがみ合う女性2人。
「サム、すまない。俺は向こうのテーブルへ移動するよ」
「ああ、爆発しろよカーツ」
「うるさい!」
カーツは2人の女性と腕を組んで移動する。
その後ろ姿を見送りながらふっと我に返ると音楽が聞こえてくる。
しかし、その音楽はずっと流れていたものだった。
先ほどまで濃いメンバーと一緒にいたせいでBGMを聞き逃しているだけなのだ。
ってか、俺はさっきまで一体、何を見せられていたんだ?
クソ、カーツのやつめ……イケメンはやっぱり敵だな。
「にしても、モカ遅いな……」
ロフトの傍で待っていてと言われたのだが一向に現れる気配がない。
ただ、闇雲に探し回ってすれ違う可能性があるので、その場で音楽を聴きながら料理を楽しんでいた。
『ロゼッタ、今この瞬間を持ってお前との婚約は破棄する!』
「ん?」
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