Rotten flower

第1話

普通列車しか止まらない駅、雪は降り積もる。それぐらい冬。駅前の像には雪が付着していてそんな薄着で大丈夫かと感じてしまう。結局、そんな心配意味はなく全てはただの心配性という病だ。

家に手袋を忘れてしまった。指先を温めるように息を吹きかける。冷たさはこれからも増していくらしい。白い地獄だ。

通勤時だけは少し利用者がいるが真っ昼間、こんな時間中に使う人は早々といない。

「あぁ、寒い寒い。」

誰かがやってきた。かなり厚手の服を着ているようで動きは少し鈍い。

その人が時計から目を話した瞬間、電車は出発、次の電車は10分後だ。

「うむ。」

ちょっとしょんぼりしているが、少し立ち止まったあとなぜかこちら側にやってきた。

「寒いですね。」

こちらに話しかけてきた。髪は白く目は青い、長身で細身、体型だけ見れば健康的な男性と言えるだろう。彼は初対面なのにもかかわらず、「初めまして。」も言わずに話しかけてくるとは。

「えぇ、そうですね。」

私も一応少しイライラは感じたものの同意見だということを表明した。どちらにしろ、この人が非常識なことに変わりはないだろう。

「どこかにお出かけの予定で?」

私はすかさずなぜここに来たのかを聞いてみた。

「えぇ、どこかまでは言いませんが。」

「いえ、言わなくて結構です。」

「あなたはどこへお出かけする予定で?」

「なんとなく、暇なんですよ。」

「そうですか。」

何、その返事。そっちが聞いてきたんじゃないか。まぁ、暇だったことには変わりないし誰かと話せただけいいのだが。

「あ、電車の時間だ。」

「また明日話せますか?」

私の口からはいつのまにかそんな言葉が漏れていた。

「明日また会えれば。」

彼はそう言って駅に行ってしまった。もう20日過ぎてしまった私の期限はいつの間にか私の中では忘れてしまっていた。


昨日よりも雪は多く降っていた。像も心做しか寒いような表情をしていた。なぜここで待っているのか私にすらわからない。きっと心の中で彼のことを待っているのだろう。

今日もまた普通電車が発射したと同時に彼はやってきた。タイムマネジメントができないのだろう。

「今日もですね。」

諦めたかと思うと昨日と同じように私に話しかけてきた。

「また会えましたね。今日はどこに行く予定で?」

「昨日と同じところです。」

「そうですか。」

「雪すごいですよね。」

「こんな日は僕は嫌いです。」

「なんでですか。」

「悪い思い出があるので。」

どんな思い出なのだろう。私にはわからない。きっと私には到底理解できないことなのだろうが。

「あ、では。」

電車の時間になると彼は昨日と同じように駅に向かって走っていった。

「明日また会えれば!」

大声で叫んでいった。彼のその言葉は私の頭に響いた。


次の日彼は来なかった。その次の日も、その次の日も。

きっと彼は行ってしまったのだろう。もう会えなくなってしまった。49日の期日を守れなかった私も悪いのだが。

彼は3、4日目ぐらいなのだろう。意外と早めに審査に通ったのだろう。

会いたくないが、また会えたら、話をしよう。してほしい。新しくなった地球について。

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