第5話 身を切る改革
「モフモフの一員として、みずから身を切るニャ!このしっぽ切り落とすニャ!」
なんと猫は「みずから身を切る改革である」として、チャームポイントだったしっぽを、根本から切り落として見せた。
人々はあまりの残酷さに目を覆った…しかも、これはただのパフォーマンスではない。しっぽがなければ清潔度も増し、トイレ後の汚れ落としも簡単になり、すなわち資源節約となる…
やはり猫は口先ばかりの人間の政治家とは違う。人々は賞賛した。
「待つニャ!安心するのはまだ早いニャ!」
猫は毛を逆立てて叫んだ。
「まだいるニャ!モフモフが!」
演説台から走り出した猫は、警備しているニンジャ・マスター岡田…ではなく、その横にいる松村ニンジャの胸元に喰いついた。
―危なかった、思わず反射的に手裏剣で迎え撃ってしまうところだった―!
自分の右手を左手で必死に抑えるニンジャ・マスター岡田。隣りに立っていた松村の胸元からは、一匹のゴールデンハムスターが猫によって引きずり出され、残酷にも首を噛み折られた。
「つ…つよしっ…。」
松村は膝から崩れ落ちた。
「―おえっ…。」
岡田は久しぶりに見た生物の死に、吐き気がこみあげた。
猫は悠々とハムスターを咥えたまま、演壇に戻ると、これでどうだ、という顔をして見せた。人々は喝采をした。岡田の横では、茫然自失とした松村が、猫に引っ掻かれた胸元を押さえていた。
おいおいと泣き続ける松村ニンジャを隣に、ニンジャ・マスター岡田は最悪の気分だった。最高の仕事人集団「スペイス・ニンジャ・カンパニー」に、違反集団のモフモフ連がいたとは!
「だって、今日の午前中まで、小動物の飼育は禁止じゃなかった…」
松村は嗚咽をあげる。
「法律は即時立法、即時施行である。お前も知っているだろう?」
「つよしは、部屋に迷い込んできたときから、すべてを分け与えて暮らしてきた家族です。僕は…僕は…どうしたら…。」
たしかに、何年もかけて育ててきたペットを取り上げられてはたまらんところもあるだろう。しかし、すべてはスピード感が命なのだ。かつての地球にあった日本地域のように、合議制でテレテレと三歩進んで二歩下がっていては、宇宙時代には生き残れない。
明日も任務、センキョの二日目だ―早く休まなくては。岡田はベッドに入った。
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