第2話 公園でカードを払いました
「それじゃあまた明日ね」
「うん、また明日」
真昼は天と別れた。
明日は土曜日だから学校はないけれど、家も近かった。
しかも天は明日はオフだった。
と言うことで一緒にカードショップに行くことになったのだ。
ついにルールを本格的に覚えないといけなくなった。
真昼はやっぱり憂鬱で、顔には一切出さなかったけど、「はぁー」と溜息を吐いていた。
「上手くできるかな……」
天と別れた真昼は本音を吐いていた。
スマホをチラッと見てみると、『リンクル☆マジカル』について調べていた。
「本当凄い盛り上がりだよね、このカードゲーム?」
『リンクル☆マジカル』は稀に見る売り上げを記録している新しいカードゲームだ。
いわゆるTCG(トレーディング・カード・ゲーム)と呼ばれるジャンルで、対戦したりカードを集めてコレクションしたりする人が多くいた。
「どうしてあんなに複雑なルールなのに、みんな覚えられるのかな? 興味が薄いから覚えられないよ」
真昼は夕方の公園近くを歩きながらボヤついていた。
でも確かにカードのイラストを見ていたら、カッコいいモンスターや可愛いモンスターがたくさんいた。
多分遊ぶ人だけじゃなくて、カードを集める人もたくさんいるはずだ。
「もしかしてそれで売れてるのかな?」
真昼は色々考えながら、公園の近くを歩いていた。
この道を通る時は決まって悩み事がある時で、少し家から遠回りになるのが良かった。
「いや、もしかしてそんなに複雑じゃないとか? フィールド? がゴチャゴチャしてて、カードに色々書いてあるからかな?」
頑張って覚える努力はした。
だけどあまり頭に入ってこなかった。
もしかしたらカードがこうしたらいいよ、って教えてくれたら覚えられるかもしれないと、変なことさえ思ってしまった。
「まあ、実際に会えるわけじゃないんだけどね。あはは、アニメでも漫画でもないんだから」
真昼は「私の妄想も大概だなー」と思ってしまった。
全部笑って流してしまい、公園を通り過ぎようとした。
すると真昼の自然が釘付けになり、引っ張られてしまった。
「何あれ?」
真昼は立ち止まった。
公園の真ん中にいかにも怪しい格好をした人が居たのだ。
「アレ誰だろ? 何してるのかな?」
真昼の視線の先にはボロボロの灰色ローブを着た人が居た。
キョロキョロ周囲を見回していて、明らかに怪しい動きをしていた。
あまり見ない方が良いとは思いつつも、視線が釘付けでは離れなかった。
だけど頑張って視線を振り切ろうした。
その瞬間だった。真昼は視線を感じてしまった。
「えっ、ちょっと待って。こっち走って……うわぁ!」
灰色ローブを着た人は、公園の出入り口に向かって走って来た。
しかし尋常じゃ無いスピード感で、真昼はぶつかりそうになった。
何とか体を捻ってかわした。
だけど体勢に変な力が加わってしまい、転びそうになった。
その瞬間、ローブから手が伸びて真昼の腕を掴んで転ばないようにしてくれた。
「おっとっと。あ、ありがとうござい……いない?」
顔を上げた。するとそこにローブを着た人は居なかった。
腕には握られた感触があったし、あんな目立つ格好の人が突然消えるなんておかしな話だった。
「もしかして幽霊……じゃないよね」
なんて妄想をしてしまう始末だった。
だけど感触ははっきりとあったので、幽霊じゃないとは思った。多分、足がめちゃくちゃ速い人だと決め付けた。
「うん、そうだよね。そう、だよね……うーん」
不意に真昼は公園の中央に歩み寄っていた。
さっきの灰色コート姿の人が何を見ていたのか、非常に気になったのだ。
「確かこの辺に……あれ?」
地面を見てみた。すると何か落ちていた。
カードが二枚取り残されていて、拾って欲しそうにしていた。
「可哀想。誰かの忘れ物かな?」
真昼は拾い上げた。裏面は今流行りの『リンクル☆マジカル』のものだった。
もしかしたらここで遊んで風にでも飛ばされたのかと想像した。
拾った真昼はカードの土埃を払った。
「傷とか無いから大丈夫だよね。えーっと……あれ?」
カードのうち、一枚を表にしてみた。
すると何もイラストが描かれていなかった。
不思議に思った真昼は首を捻り、何か書いてないか調べた。
「えーっと、異界の門?」
名前らしいものを見つけた。
するとカードが急に光り出した。
「えっ、ちょっと、何!?」
慌てた真昼はカードを捨てようとした。
しかし指にくっ付いてしまったみたいに取れなくて動揺した。もしかして接着剤でも付いてたのかもと想像したが、そんなこと言っている暇はなかった。
「なんで急に光ってるの。って、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
真昼はカードから飛び出した光に包まれた。
すると視界が闇に染まり、カードから広がる不思議な門の中に引き摺り込まれる感覚があった。
あまりの恐怖に大きな叫び声が上がった。
だけど誰も助けてくれる人はおらず、真昼の意識は刈り取られてしまった。
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