第14話

私はある日事務所の中を歩いているとき階段の隅で泣いていた人を見つけた。

「なんで……おれがデビューできなかったんだよ……」

「あの……大丈夫ですか?」

私が声をかけるその男性は目を真っ赤に腫らして泣いていた。

「聞いてくれますか?俺の話。」

このまま放っておくと死んでしまいそうな目をしていたから、私はこの人の話を聞こうと本能的に思った。

「俺……アイドルとして頑張ってたんです。だけど俺の友達がデビューしちゃって……俺……やっぱり向いてなかったんだよ……」

また涙が溢れそうになっていて私はハンカチを差し出す。

「無理して笑っちゃダメです。悔しいなら悔しいでいいんです。だけど自分がやってきた努力を自分で否定しないでください。」

男性は目を大きく見開いて

「やっぱり星野さんも俺の友達にそっくりだ……」

「おい!ゼン!!探したぞ!!」

次のときもう1人男性が来た。その人は短髪でとても爽やかな雰囲気があったが、必死でこの人を探していたのだろうか息がかなり上がっていた。

「じゃあ私はこれで……」

「待って!これ!」

とハンカチを差し出すが、私はそのハンカチをその男性の手に入れ込み

「それはあげます。絶対またどこかで会いましょう!」

と急いでその場を去った。
















大毅side

のんちゃんが他の男といた。その男はヨルガの双子の弟のゼンだった。俺は偶然を装ってのんちゃんの前に現れた。

「のんちゃん……」

「大毅!!どうしたの?」

俺はのんちゃんを抱きしめる。のんちゃんは本気を出せば、芸能界でトップになれる。俺が勧めたのに今さら辞めさせたいだなんて。俺だけののんちゃんでいてほしい。のんちゃんの頬を撫でて、のんちゃんを見つめる。抱きしめておかないとどこかに消えそうで……そんな悪い予感が浮かんだ。

「のんちゃん……どこにもいかないでね」

のんちゃんは首をかしげ

「大丈夫だよ。」

のんちゃんはそうニコッと笑った。

「ドラマ撮りに行ってくるね!頑張ってくる!」

のんちゃんは俺の腕の中からすり抜け撮影現場に向かって行った。俺は嫌な予感しかしなかった。























「大毅大変だ!!」

社長が楽屋でゆっくりしている俺にそう言ってきた。

「どうしたんですか?」


















「望ちゃんが……ヨルガくんを庇って重症を負った……」

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