6,死人の夢 お題:焼却炉でみた夢

 焼却炉の中で夢を見た。もちろん比喩表現だ。そんなアホな話、炎の精霊でないとまず生きて帰れないだろう。いや、炎に対して高い耐性を持つ炎竜ならばまだ話は通用するかもしれない――この話は頭がこじれそうだからやめにしようか。

 御手洗はただ先ほどまで自分の部下だったものを見つめていた。火の粉が散るそれは、火葬場であった。本日の邪竜討伐により、負傷者数名と死者――その中でも遺体を持ち帰れたのはたったの一人――が〈弐番隊 水竜組〉から出てしまったのだ。前線部隊だから仕方ないものの、生きて帰ることができなかった彼らを思うと、やるせない想いだけがのしかかる。火葬はまるで、焼却炉に不要なものを棄てるようで好ましくない。せめて、土葬にしてやってくれませんか。以前、上司にこう相談してみたが収容人数を考慮して却下された。

 彼らは最後の夢を見るだろうか、見ないのだろうか。死人に口なし、知る由もなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る