第4話 衝撃の事実

 三女神からそれぞれ一つずつ力を貰った。


 青・金・紫色の球体が僕の体に入る。


 直後。


 不思議な高揚感を覚えた。


「こ、これは……」


「うんうん。うまく馴染んだようだねぇ。すごいよすごいよ! 普通の人間なら、三つの力を同居させることは不可能だからね。加えて、キミにあげたのは私たちの力の欠片。自然に芽生えるそれとは根本的に質が異なる」


「……どういうことですか?」


「要するに、キミが手に入れた力はほかの人より数段すうだん上にあるってこと! 一般的な出力が1だとしたら、キミは10とか20とか出せるね!」


「え……!?」


 あまりの差に絶句する。


 それってかなりヤバい恩恵なのでは……?


「心配しなくていい。あなたなら扱える。常人なら、我々の力を手にした瞬間死ぬもの。肉体が手にした力に耐えられなくてね」


「ぜんぜん安心できません」


 女神アルナの言葉に、むしろ不安が増した。


「そうなの? でも、ちゃんと力のコントロールができるように指導もするわ。それぞれが得意な分野にわけてね」


「はいはーい! そういうことなら、最初に覚えるべき力は断然【神力】だね! 間違いない!」


 手を必死にあげて女神フーレが叫んだ。


 しかし、そんな彼女の横っ面を女神アルナが殴り飛ばす。


「——邪魔。最初に覚えておくべきなのは、万能の【魔力】に決まってる」


 冗談みたいな速度で吹き飛ばされた女神フーレ。


 彼女の姿が一瞬にして視界から消える。


「え? あれ? あの……フーレ様が、消え……」


「気にしないで。あの馬鹿はあれくらいじゃ死なない。すぐに戻ってくる」


 女神アルナがそう言った途端、姦しい声が響いた。


「アルナちゃあぁあああ————ん!! 酷いよ!? いきなり殴ることなくない!? 痛かった!」


「うるさい……。フーレが馬鹿なこと言うから悪いんでしょ。いいからさっさとどっか行って。邪魔」


「邪魔ぁ!? お姉ちゃんに対してそれは酷いんじゃない!? ヒーくんもそう思うよね!?」


「ひ、ヒーくん?」


 もしかして僕のこと?


「嫌だった? ヒスイだからヒーくん! 中々いいと思ってるけど……」


「は、はぁ……。僕は構いませんが……」


「じゃあヒーくんに決定! あ。私たちに敬語は不要だよ? 敬称もいらない。そういうのは、人間が勝手に始めたものだからね。あくまで対等なんだよ私たちは! だから先手は譲ってアルナちゃん!」


「イヤ」


 ——パァッン!


 凄まじい炸裂音が響く。そして、再びフーレが吹き飛ばされた。


「絶対に最初は【魔力】。覚えておけば色々と役立つ。ヒスイは、それでいい?」


「あ、はい……うん。それでいいよ……」


 もう余計な突っ込みにまわす気力もなかった。


「残念ですが、非常に残念ですが……。わたくしの力である【呪力】はコントロールが難しい。いまの状態であなた様が使えば、死ぬ可能性もある……。わたくしは、最後に甘んじましょう」


「——ってことはお姉ちゃんが二番目かぁ……。しょうがないなぁ。妹のお願いを聞くのもお姉ちゃんの役目だよね! 特別だよ特別~」


「はいはい。……それじゃあ早速、【魔力】に関して話をしましょう。準備はいいかしら?」


「う、うん。僕に扱うことができるかな?」


「平気よ。魔力は【呪力】と違って危険はない。それも含めて説明するわ」


「補足はお姉ちゃんに任せて!」


「いらない」


「ガーン!」


 悉くあしらわれる女神フーレ。


 だんだん彼女が不憫に見えてきた。けど、すぐに立ち直るからいつもの事なんだろう。


 あれはあれで仲良しに見えた。


 ちなみにもう一人の女神カルトは、二人のやり取りを完全にスルー。


 穏やかな笑みを浮かべて僕の腕を抱きしめている。


「あ、あの……カルト?」


「なんでしょうか」


「どうしてこんなに距離が近いの?」


「あなた様に興味があるからです。ええ、ええ。興味が尽きません。初めて見つけた、特別な異性。これまでの人生に、新たな色が足されました。どこまでも興味は尽きません」


「そんなこと言われても……。意外とつまらない奴かもしれないよ?」


「くすくす。ありえませんわ。ええ。きっと、これから永遠にわたくしの心を満たしてくれる……。そんな予感がします」


 ぎゅぅぅぅっっ。


 抱きしめる力が増した。


 彼女の豊満な胸がぐいぐいと当たる。


 顔が赤くなった。


「え、永遠には無理だよ! 僕は人間だからね……。せ、精々、老衰するまでカルトの興味を引けるといいんだけど……」


 恥ずかしさに視線を逸らす。


 すると、カルトを含めた三女神は同時に首を傾げた。


 そして、あまりにも衝撃的なことを告げる。




「え?」


「ヒーくんは死なないよ?」


「わたくし達と同じ、——の存在ですから」


 と。

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