第3話新任教師の歓迎会

伊佐市にある『みち潮』にて、伊佐高等学校新任歓迎会が開かれた。

先ずは、例の如くタヌキが演説していた。

山アラシは小堺数子通称キャサリンとボウズに挟まれて座り、坊っちゃんはキャサリンとオッチャンに挟まれて座った。

マドンナはタヌキと青シャツに挟まれた。

青シャツは既に鼻の下を伸ばしていた。

ボウズが山アラシに、

「うちのタヌキ、演説がなげぇ~んだよな。山アラシ君、もちっとガマンしてな」

と、言うもんだから、キャサリンが、

「山アラシ君、独身なの?」

「はい。彼女はいますが。もう少し社会勉強してから結婚します」

「わたしじゃダメかしら?」

キャサリンは、ナイスバディーの50歳である。

すると、青シャツが、

「そこの君たち!校長先生の有り難いお言葉を聴かんといかんど!」

と、いきり立つので、ボウズは反抗的な目付きで青シャツをにらみ、山アラシはしゅんとした。

キャサリンは、一旦は追従の仕草をしたが、山アラシに、

「あのバカ、マドンナ先生が隣にいるから、マウントを取りたがるのよ。アイツ、去年までは、化学教諭だったの。生徒には嫌われていたのよ、入れ歯洗浄剤の臭いがするのよね。タヌキは髪型がおかしくて、カツラ疑惑があるのよ」

山アラシは、キャサリンの言葉を聴きながらニヤニヤしていた。

他の先輩教諭たちは、真面目にタヌキの話しを聴きながらウンウン頷いていた。

坊っちゃんはオッチャンから色んな話しを小声でしていた。

「タヌキ、カツラなんだぜ。オレ聴いたんだ。トイレにいる時、タヌキが鏡の前に立ち髪型を整えて、パチッて音がしたんだから」

「十中八九、カツラですね?」

「な、アハハハハ」

やっと、タヌキの演説が終わった。


乾杯の前に、教師全員グラスにビールかソフトドリンクが注がれた。

マドンナに青シャツがビールを注いだ。そして、マドンナが青シャツのグラスにビールを注いだ。もちろん、タヌキが先に注いでもらったのだが。

乾杯の音頭は、オッチャンだった。

「では、皆様、僭越ながら乾杯の音頭を取らせて頂きます。新任教師の皆さんよろしくお願いします。かんぱ~い」

全員がかんぱ~いと言うと、『みち潮』の仲居さんが次々に料理を運んだ。

マドンナはタヌキと青シャツの餌食になっていた。

山アラシは坊っちゃんに、

「マドンナ、最悪だなぁ。あんな、至近距離で話されたら、鼻、バカになるもんね」

「そうですね。でも、マドンナも真面目に話し聴いてますよ!」

「そうかな、さっきからこっちを見て、SOSを送ってる様に見えるよ!」

実際に、山アラシや坊っちゃんの席の方をちらちら見ていた。そう、マドンナは助けを求めていたのだ。

その話しを聴いていたキャサリンが、

「分かったわ。わたしに任せなさい」

と、タヌキと青シャツの席にキャサリンが近付いた。

「あらぁ~、校長先生、教頭先生、お酒が進んでないじゃない。マドンナ先生、あなたは飲ませ下手ね。あっちで、練習してきなさい!」

タヌキと青シャツはキャサリンの体をイヤらしい目で見ながら、

「小堺先生、是非、我々を楽しませて下さいよ!」

と、タヌキが真っ赤な顔をして言った。

マドンナは、山アラシ達の席に逃げて来た。

「ありがとうございます。山アラシ先生」

「それは、後でキャサリンに言ってあげて。どうだった?タヌキと青シャツは?」

マドンナはビールを飲んでから、

「タヌキは湿布の臭いがして、青シャツは口臭が酷くて……」

「うわぁ、湿布なんか許せるけど、口臭はねぇ~」

「たぶん、歯槽膿漏です」


ガハハハハッ!


ボウズ、山アラシ、オッチャン、坊っちゃんは大笑いした。周りの教師は何で笑っているのか?理解出来なかった。

宴は続く。

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