第2話始業式

鹿児島県立伊佐高等学校普通科の涙の卒業式から1ヶ月が経ち入学式が行われた。

1クラス40人が5クラス、約200人の新入生が緊張した面持ちで1学期の始業式が始まった。今年度は、3人の教諭がこの学校に赴任した。先ずは中年の小園悟先生。慣れた口調で自己紹介と受け持つ教科は世界史であることを生徒に伝えた。

小園先生は髪型がゴワゴワで生徒同士、先生を『山アラシ』と名付けた。

続いて、今年から教諭として働く2人の新米先生の石神理香先生。担当は数学である。

背は160cmくらいあり、美人の部類に入るので、生徒は石神先生を『マドンナ』と呼び始めた。

続いて、これまた、新米のイケメンの山下秀樹先生。髪型は金持ちの坊っちゃんみたいなマッシュルームカットだったので、直ぐにアダ名は『坊っちゃん』に決まった。

生徒が呼んでいる、アダ名は直ぐに教師の耳に入り、付けられたアダ名を知ると自然と教師たちは、苦笑いする。


青いシャツがトレードマークの教頭の笹川達郎通称青シャツの進行で、校長の有村勇造通称タヌキが長々と演説している。

生徒は立って話しを聴かなくてはいけない。もちろん、教師もだ。保健体育教諭の鶴里武、通称ボウズが国語教諭の井上孝太、通称オッチャンに耳元で、

「あのタヌキ、いつもより長くないかい?」

「そうそう」

「オレ、トイレ行きたいから、体育館出るからね」

「その手があるな、よしボウズ君、2人で逃げよう」

と、2人で体育館の出口に向かって歩き始めると、

「どこ、行くの?校長の有り難いお話を聴きなさい」

と、青シャツが言う。

言われた、ボウズとオッチャンはブツブツ言いながら定位置に戻った。

坊っちゃんはマドンナの体から匂う香水に心を鷲掴みされて、1度声を掛けようと思っていた。

理系女子に坊っちゃんは憧れていたのだ。

この神聖な学校をマッチングアプリのように利用してはいけないのだが、既に赴任している女性教師の中で、一際、マドンナが光って見えた。打ち合わせでも、マドンナと坊っちゃんは挨拶程度だった。

タヌキは20分間しゃべり続け、解散になった。

ボウズとオッチャンは走ってトイレに向かった。

新しく赴任してきた教師同士の挨拶は終わっていた。

山アラシはベテランだったので2年3組の担任で、坊っちゃんとマドンナはそれぞれ1年2組、1年5組の副担任として勤務する事が決定している。

始業式は半日で終わり、生徒は帰宅部以外は弁当や学食で昼メシを食べてから、部活に励んでいたが、それも16時半までだ。5時から、新人教師と在来教師との親睦会が行われるのだ。

さ、どんな話しになるのやら?

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