第4話 捜査パート1 調理場
「取り敢えず、腹痛なら食べたものを確認しに行った方がよさそうだね」
「せやなぁ。この現場は騎士団に人に任せて料理人さんのとこ行こか」
「ごちそう余ってないかなぁ……楽しみなのなぁ」
──ハルモニア王城、調理場。
ここもあわただしく人が行き交っている。
調理人は全員調理場の隅の方で事情聴取をされながら、衛士があらゆる調理器具をひっくり返して何かを探していた。
「ここで毒が盛られた可能性がある。心当たりのあるものは出すがよい」
調理場調査の責任者であろう男は、ものすごい剣幕で料理人たちをにらみつけている。
異常な緊張感に飲まれそうになるが、エバラ達は勇気をもって話しかけた。
「すみません、探偵です。こちらの調査を行ってもよろしいでしょうか」
「そんな予定は聞いておらんが……あぁ、世界樹様の寄越した探偵か。こんな
調査の許可もとったので、一通り調理場を見て回ることにした。
四人に女王様に提供された皿に、スプーンを浸して観察している兵士に話しかける。
「これは何をしているのですか」
「は!毒物の検出を行っております。食器にも銀を使用していますが、念のためこちらでもあえて表面に傷を付けた銀にて、ヒ素などの毒物を干出できるか試しております」
非常に古典的と言うか、それは近代以前の毒の検出方法じゃないかと、びー作は困惑する。
しかし、エバラとシーカーは「へ~、そうなんだ~」みたいな顔で聞いているのだった。
「えっと、いまのところ毒物は検出されてへんのやろか」
「はい。実際に提供された皿と未提供の予備の皿を、すべてを調べましたが、毒物の反応はありませんでした」
「毒対策はしているとは言え、こんな中世的な方法では取りこぼす毒の方が多そうやけどな」
「エバラさん、虫眼鏡で毒物検出できるか、試してもらえますか?」
目の前にあるメニューは、カプレーゼ、サーモンのマリネ、子羊のソテー、季節野菜のパスタ、そしてソルベ。簡素だが特別変なものはなさそうだ。
そこに虫眼鏡を向けて、「毒はある?」とつぶやくと、検出が始まる。
七つ道具の一つの虫眼鏡は、見たいものがあるかを正確に検出する能力がある。
ただし、そこに何かあっても見ようと思ったもの以外は見つからないこともあるのだ。
「う~ん、毒物の反応は一切ないみたいだね」
「当然です。各地の参列者の地元食材をふんだんに使ったお祝い料理に毒を盛るなど出来ませんよ」
「メニューは新任の女王様のリクエストですし、食材は参列者様に直々にお持ちいただいたものばかり、すべて誰かにゆかりのある食材を使用しております。参列者の顔に泥を塗るにはいきません」
そのほかの食材でも特に腐ったようなものは見つからず、調理場での調査をいったん切り上げることにした。
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