第3話 初事件現場は……お城ですか!?
異世界の風景に目を奪われている三人をよそ目に、バトラーは城門へ歩き出す。
槍をクロスさせた衛兵にバトラーが止められているが、彼は先ほどまでと変わらない様子で高らかに宣言する。
「いまお城で起こっている事件を解決する探偵さんをお連れしました。城門を開けていただけますか」
「城で事件だと?なぜそのことを……」
「彼の胸元をよく見るのだ。あのマークは……そういう事か。おい、城門を開けろ、お客様だ!」
城門はゴゴゴゴと大きな音を立てながら、片方の扉が開け放たれて、三人と一匹を迎え入れる準備が整った。
「さあ、みなさん現場検証に向かいますよ」
「これ完全に仕切られてんのやけど」
「はじめての事件だし、そんなものじゃないかな」
「みんな~、早くいくのな~」
こんな状況でもいつも通りのシーカーが二人の不安を払拭してくれる。
顔を見合わせた二人は、急いで城門をくぐってバトラーとシーカーに続いた。
案内されたのは、お城の中庭だった。
パーティの真っ最中のようだったが、様子がおかしい……いや、事件だから様子がおかしいのが正しいのかもしれない。
会場を見渡すと、主賓席にいる四人のうち二人がぐったりとしている。
残る二人のうち一人は弱っては居るが動けないほどではない。
最後の一人はおろおろしているが無事なようだ。
「さあ、みなさん。初仕事ですよ。張り切って名乗りを上げてください」
エバラは深呼吸をしてから、高らかに宣言する。
「みなさん!この場から動かないでください!この現場は、我々『探偵団』が預からせてもらいます。」
拡声器などは使っていないのに、事件現場の喧騒などものともせずエバラの声が響く。
これは探偵帽子の機能の一つ、強制カクテルパーティ効果であった。
カクテルパーティ効果とは、ざわざわした空間でも聞きたい情報だけはきちんと聞こえるといった効果、それを強制的に引き起こすのだ。
「まずは現場写真を撮るわ、バードアイ……」
全員がその場に止まった状態で、びー作はカメラのオプションドローンを飛ばして会場の写真を撮りまくった。
この写真と手帳をリンクすることで会場の見取り図と人の配置がつぶさに記録されていく。
「おーい、お姉さん達は弱ってるけどまだ息があるよ!死んでないよ!」
シーカーはいつの間にか被害者の元に居た。
手袋と靴の効果で身体能力を強化し、まさに本物の猫のように人混みをすり抜けることが出来る。ジャンプもお手の物だ。
「衛生兵!すぐに医務室へ。春夏秋の女王様をお連れして!」
おろおろしていた残りの一人が声を張り上げて命令すると、数人の兵士が担架に乗せて女性達を連れ去って行く。
突然の来訪者のおかげで現場が混乱した現場も、被害者が搬送されたことで少し落ち着いたようだ。
訪問客たちが落ち着いたところで、手分けして関係者への聞き込みを開始した。
エバラとびー作の聞き込みしたことは、びー作の手帳に発言者毎に時系列順で自動的に記録されていく。
シーカーは聞きこみは苦手なので会場に何かしら証拠品がないかを走り回って確認していた。
その結果、事件当時の現場の詳細が明らかになった。
──このパーティはハルモニア王国の建国100周年を祝うパーティだったらしい。
そこに四季の恵みを分けていただいている、春の女王、夏の女王、秋の女王、冬の女王──この四人が世界樹の子の
パーティ開始から四時間ほど経過し、終盤に差し掛かったころ、四人の女王様のうち春と秋の女王様が腹痛を訴え始めたらしい。
二人を介抱していたところ、夏の女王様も同じように腹痛で倒れたらしい。
そこにちょうど我々三人と一匹が通りがかって今に至るとのこと。
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