第11話 サテラが僕を
サテラが僕が先に降りるように促した。 このような場では身分の低いものから下車をするのがこの世界でも約束事らしい。 保安が理由の慣習かな。 サテラは筆頭侍女爵、僕は無爵どころかおそらく最下層も最下層、えたいのしれないうさんくさい野良の孤児・・・いつまでその設定でいけるのかわからないけれどね、従士リュミに一瞬僕をジロリとにらまれたから、彼女の中では有効ってことだ。
典雅をきわめた空間設計の車寄せ、その機能だけのために贅をつくしたひさし付きのエントランスには、驚いたことに儀仗隊の列が待ち受けていた。
アラトスとリュミを左右に、サテラが先導してすすまんとした先には、待ち人達がいた。 金糸で縁取られた緑のケープをまとう5人ほどの集団は、僕の目にも何らかの権威を誇示しているふうに見てとれた。
「すばらしい、すばらしい、感激いたしましたぞ、ききましたぞ、ききましたぞ、卑しい魔潟の老婆の手に落ちた孤児をエウドーラーさま自らが保護なされたとか、ほうほう、そのわらしがそうでありまするか」
その集団の頭目とおぼしき怪人が大声を上げた。 右の目から右耳にかけひどい瘢痕がひきつりの、
エウドラがさっと後ろの僕にほそ腕をからませ、前行くサテラが声を張った。
「無礼もの。 殿下が至宝献上のご登城は、そなたらがかかわれるものではない。 ひかえられよ」
「いやいやこれは失礼を申した、ひらにひらにご容赦を、おつきどの。 このアルゲーズ、まことに感激のあまりのことにつき、なにとぞ許されよ。 我らとてわけなくして待ち受けておったのではござらんゆえ」
「サテラ筆頭侍女爵、面倒。 弁明を許すがよい」と、エウドラ。
「畏(かしこ)くも、おおせのとおりにいたせ」
「しからば、申し上げまする。 機会よく、星下に殿下の御先導を願い、
「笑止、
「おおせのとおり、畏まり、先導の役をはたすがよい」
「ほうほう、これはこれは、エウドーラー星姫はうわさにたがわぬかぶかれ
「面倒も無礼もすかぬ」と、エウドラ。
「・・・御意のままに」
ほうほう、魔眼の強制にはかてませぬなと嫌みっぽくつぶやきながら、隻眼のおお男は先導するべく仲間を従え身を
星城パルテノーペにはいるやいなや、面識がないわけではない相手のようであったが、直球で牽制されるを許さざるをえなかった。 この
いかに護衛士と従士が忠実であれ、権謀術数のたぐい、嫌がらせ、牽制にはほとほと無力。 アラトスとリュミの顔も能面のようにこわばっていた。
まずい状況だけど、僕には点数稼ぎの貴重なチャンスだ。
「ぶれいなおじちゃんたちだねー、ぼく、だいっきらい」
「ふふ、妾もじゃ」とエウドラも間髪入れず応じてくれた。
我ながらよい牽制でかえせたとおもう。 少し離れて聞き耳をたてていたのだろう儀仗隊の衛士の
先導された先にあるのは謁見の間ではないようだった。
「エウドーラー殿下、陛下はこれよりさき大奥は鏡の間におられまする。 みどもの役回りはここまで。 護衛士らを残し、すすまれよ」
隻眼のおお男はそう言うと肩をすくめたまま器用に一礼し、ほうほう、さてさてとなにやらつぶやきながら救済院の保護司とやらを引き連れ去って行った。
最後まで失礼なやつだったが、大奥と言ったよね。
大奥と訳してきこえるかぎり、そこはあの男子禁制の花園!
僕はお二人と一緒に鏡の間にすすまなくてすむのでは。
やったね。
「ねえ、おーおくっておとこだめだめ。 リュミとこーたいしてぼくこにのこる」
「ラナイ、無駄な抵抗」
「ラナイちゃん
そして
「せいtうもないお子様のくせになまいき、ぐっ」
最後のリュミの身も蓋もない小声はうめきに終わった。
リュミよ、軽口も災いの元だ。
でもその教育パンチの一撃は僕には全くみえなかった。
アラトスも、
ところで、さきほどエウドラは、エウドーラ―、エウドーラ―と呼ばれていた。 前にも一度確か
どうやらエウドラは親称らしい。
ということは、僕ははじめから親称でしかも敬称なしで名を呼ぶようにたくらまれていたのか・・・
知らぬ間に親しくなる先制パンチを決められていたんだ。
女の子って9歳でも魔女なら女の権謀術数するんだ。
6歳男児相当のおこちゃまでは不利も不利、
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