第53話 彩香とダンジョンへ
連絡先を交換した後、彩香はもう少し話したそうにしていたが夕食の時間が近づいてきたためその場はお開きになった。
彩香は元々夕飯の買い物をした帰りらしく、これ以上は残ることが出来なかった。
「師範代、予定を確認したら連絡しますね」
「うん、分かった。気を付けてな」
「ありがとうございます、それでは」
カフェの前で上機嫌な彩香と別れて俺も帰り道を進む。
それにしても彩香とダンジョンか…。
スキルを獲得するだけなら問題ないんだけど、そのあと一緒にダンジョンへ潜ろうみたいな話しになった場合、少し問題があった。
俺の目標としては真由に呪いをかけている存在を暴き出し、真由を呪いから開放することだ。
早くスキルを成長させるために効率よくダンジョンを潜りたいのだが、もし彩香と潜ることになったら俺のスキルを彼女に教えなければならない。
彩香が言いふらすとは考えづらいが、どこから話しが漏れるか分からないし知っている人が少ないことに越したことはない。
あと、初心者用ダンジョンを潜った感じ、希少種と会わなければ彩香は苦労しないだろう。
うーんそうだな、やっぱり基本的にはソロで潜るか。
家に帰ってご飯を食べながらテレビを見ていたら、丁度天心百花の話題が流れていた。
『今回天心百花がアタックするのはAランクの水極ダンジョンです!千鶴さん、よろしければ意気込みなどをお聞きしてもよろしいでしょうか?』
『そうですね、水極ダンジョンは水系統のモンスターのみ出現するダンジョンですが、今回のためにバッチリと対策をしてきたので私たちのチームが負ける事はないでしょう』
『カッコいい…。が、頑張ってください!応援しています!!』
『ありがとうございます』
インタビューが終わると、千鶴はチームメンバーと共にダンジョンへ潜っていった。
そっか、千鶴はもうダンジョンへ潜ってたのか。
時間的には今日の昼頃かな?
多分画面の明るさ的にもそのくらいだろう。
水系統の敵が出てくるダンジョンへ行くって聞いてたけど、まさかAランクのダンジョンだったとは…。
スライムダンジョンで手に入れた水耐性の付くアクセサリーを千鶴に譲ったけど、Aランクダンジョンで役に立つのかな?
分からないけど、少しは効果がある事を期待しよう。
というか千鶴がダンジョンへ潜ってるなら、俺のメッセージに返答が来るのはもう少し後になりそうだな…。
まぁとりあえず、今は自分に出来る事をしていくか。
その後部屋でゴロゴロしていると、彩香からメッセージが届いた。
確認してみると、今週の土曜日は予定が無いので良ければダンジョンへ行きたいと言ったものだった。
今日は水曜日なので3日後になる。
あと2日もあればコボルトダンジョンの攻略が終わると思うので、俺も都合が良かった。
「了解、俺も大丈夫だから土曜日に行こうか…っと」
俺はそうメッセージを飛ばして、その日は眠りについた。
▼△▼△
それから2日間、残っているコボルトダンジョンの攻略に励んでいた。
「よっと」
希少種と比べると、あまりにも弱いコボルトを倒しながらドンドンと下へと進んでいく。
隠し部屋も回ってるんだけど、相変わらずポーションと重いミスリル鉱石しか出ていない。
いや、ミスリル鉱石でも十分なんだけど、スライムダンジョンではスライムナイフとか出たから少しそういった物を期待してたんだけど、ついに出ることはなかった。
ちなみに、10階層のボスは少し大きいコボルトだった。
リトルビックコボルトという名前で、大きいのか小さいのか分からない名前だった。
ボスを倒してコボルトダンジョンを制覇した訳だが、残念ながらスキルレベルは上がらなかった。
「なぁレーラ、あとどのくらいでスキルレベルが上がりそうかわかるか?」
《回答・・・コボルト換算で推定500体程度です》
「おぉ、結構遠いな……」
希少種を倒すとかなり多くの成長因子が獲得できるっぽいが、コボルトの希少種を倒した後でも後500体も倒さなければいけないので、次のレベルアップはちょっと時間がかかりそうだ。
コボルトダンジョンでモンスターを倒した数は大体70体くらいかな?
一回に潜れる階層が少なかったので、討伐数もあまり伸びなかった。
もっとランクの高いモンスターと戦うことが出来れば成長因子も効率よく回収できると思うんだけど、まだ回ってないFランクダンジョンもあるし隠し部屋のアイテムも回収したい。
次に潜る予定のゴブリンダンジョンだが、こっちもモンスターの強さは変わらないはずなので、地道にやっていくしかないかなぁ。
コボルトダンジョンを2日かけて攻略し、ついに彩香とダンジョンへ行く日になった。
ゴブリンダンジョンの前で13時に待ち合わせの約束をしているので、家で昼飯を食べてからゴブリンダンジョンへ向かう。
一応10分前には到着したのだが、ダンジョンの前には既に彩香の姿があった。
「悪い、少し遅れたか?」
「いえ、私が早く来てしまっただけなので大丈夫です。今日はよろしくお願いします」
「あぁ、よろしく。早速行こうか?」
「はい!」
スキルを取るだけなら0階層に入るだけで済むので、特に装備などを付ける必要はない。
俺も彩香がスキルを取ったあと、一旦ダンジョンを出る予定だったので私服のままダンジョンへ向かう。
「もしかして、スキル取得ですか?」
「あ、そうです。なので0階層に入って直ぐに出てきます」
「分かりました。くれぐれも先へ進まないようにお願いします」
「ありがとうございます」
ダンジョンへ入ろうとしたときMDD職員に少し止められたが、スキル取得だと分かるとすんなり通してくれた。
そして彩香とダンジョンの中へ入る。
「これが、ダンジョンの中ですか…」
彩香は物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回している。
「少し暗いですが、結構よく見えますね」
「そうだな~、場所によってはライトが必要になる場所もあるらしいけど、何故かダンジョンの中って不思議とそんなに暗くないんだよな」
「はい、不思議です。あっ」
ダンジョン内について少し彩香と話しをしていると、不意に彩香が声を上げて少し上を見つめだした。
多分だけど、スキルを獲得したのだろう。
前に千鶴とスキルを取りに来た時も、千鶴が同じような状態になっていた。
「どうだ?スキルはゲット出来たか?」
「は、はい。おそらく……」
スキルは手に入れたときに、使い方や効果などが何となく分かるらしい。
俺の場合はレーラが教えてくれるまで分からなかったけど。
「それで、どんなスキルだったか聞いても大丈夫か?」
「あ、はい。獲得因子増加?というスキルらしいです。師範代は聞いたことありますか?」
「え?」
そうして彩香から告げられたスキル名は、非常に興味深い物だった。
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