第51話 己の失態に気が付く

「確かドロップアイテムは魔石に毛皮に引力石だっけ?」


コボルトが消えた場所に近づくと3つのアイテムが落ちていた。

まずは毛皮を拾ってみると、その手触りに驚いた。


「す、凄い。モフモフのフカフカだ…普通のコボルトの毛皮とは全然違うんだな」


確かこれが毛皮(上)だったか?

今まで手に入れてた毛皮(劣)と比べると明らかに質が良い。


そして隣に落ちている魔石(中)も拾ってみる。

こちらはパイライトスライムを倒した時にもドロップしたが、やっぱり大きいな。


「これ出したら、また何か言われるのかな」


以前魔石(中)を売却した時も、これを何処で手に入れたのか根ほり葉ほり職員から聞かれた。

このダンジョンの普通のモンスターも魔石(中)はドロップしないと思うので、これを持っていったらまた色々聞かれそうだ。


しかも俺がパイライトスライムと戦った情報はMDDの記録として残されているだろう。

短期間で2回も希少種と戦ったと分かればなにかしら干渉があるかも知れない。


「どうしようかなぁ~」


悩む、めっちゃ悩む。

一応魔石は全て提出するように義務付けられているが、正直今のところ目立ちたくない。


いや、スライムを物凄い数討伐した段階で目立ってるかもしれないが、MDDから干渉されるほどではなかった。

もし俺のスキルが鑑定だけではないと分かったら、スキル検証の為とか言って色々調査されるだろう。


そうすると、ダンジョンへ潜る時間が減ってしまうので俺としては望ましくない。

真由が治った後ならいくらでも大丈夫なんだけどな。


「ここはまた千鶴を頼るか……」


ちょっとこの辺も改めて千鶴と相談しよう。

そう言えば俺って千鶴に真由の事話したっけ?


「あれ?話してない気がする……」


確か、レーラに真由の症状を教えてもらったとき熱くなってそのまま病室を出た気がする。

その後直ぐにダンジョンに向けた講習を受けたり準備をしたりしてたよな?


それでそのままスライムダンジョンに潜って……。

うん、話してないな。


「俺、バカすぎだろ…」


千鶴なら何か情報を知ってるかもしれないのに話してないとか、間抜けにも程がある。

これは今日すぐにでも千鶴にメールして相談しよう。


俺は自分の間抜けさに少し落ち込みつつ、最後のドロップアイテムを拾った。


「これが引力石か」


石は白っぽい色でザラザラとした感触をした丸い石だった。

引力って付いてるし、あのコボルトのスキルみたいな事が出来るのかな?


《鑑定・・・宝物名:引力石

      ランク:C

      使用方法:対象に引力石を向けることで引き寄せることが可能》


なるほど、この石を相手に向ければ良いのか。

ちょっと使ってみたいし、次コボルトにあった時に試してみるか。


「さて、そろそろ探索再開しますか」


ただ今日は希少種コボルトとの戦闘で疲れてるし、ダンジョンを出て千鶴に連絡も取りたいのでこの5層だけの探索に止めておこう。


俺は予定を決めた後、マップを見ながらダンジョンを歩き始めた。


▼△▼△


5層の探索を終えた俺は0層まで戻ってきていた。

隠し部屋の中身は今日も変わらずミスリル鉱石(純度低)とポーションだった。


ちなみに、引力石も試してみた。

レーラの鑑定で分かったように相手に向けて引力石を向けてみると、コボルトが凄い勢いでこちらに引き寄せられた。


滅茶苦茶無防備だったので討伐が楽だったのだが、片手が塞がるのが少し微妙だなと感じた。

それでもこのアイテムは結構有用だと思うので、今後の事を考えるなら是非使っていきたい。


一応考えてる案としては、籠手みたいな物に埋め込むのはどうかなと思っている。

ただそうなると装備をオーダーメイドしなくてはいけない。


「オーダーメイドは高いっていうし、悩みどころだな」


正直Fランクダンジョンではあまり使わないかもしれないが、希少種との戦いやランクの高いモンスターと叩くときには良い手札になるだろう。

もうちょっと貯金が溜まったら装備作ろうかな。


そんなことを考えていると、ダンジョンの外に出た。

とりあえず、今日売るのは普通のコボルトの魔石だけにしておこう。

それで売却が終わったら千鶴に連絡を入れるか。


俺は今後の予定を考えながら売却所に向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る