第50話 vsコボルトTypeマーナガルム

刀を振るいコボルトへ鎖を飛ばす。

ダンジョンでモンスターを倒したおかげで俺の身体能力もそこそこ上がっている。


そんな状態で振るった鎖は今までとは比べ物にならないほど早くコボルトへ襲い掛かる。

しかし、コボルトはそれが見えているのか鎖を簡単に避けてしまった。


そしてそのまま俺の方へ接近してくる。


「マジかよ!」

「……」


コボルトの移動速度はかなり早い。

おそらくパイライトスライムより早いんじゃないか?


接近してくるコボルトに向けて、刀を振るい続けたのだがいつの間にかコボルトは目と鼻の先に居た。


「ワンッ!」

「え?うぉおおおお!」


そしてコボルトが俺の目の前で一度鳴くと、体が物凄い力でコボルトの方へ引っ張られる。

これが、引力ってスキルか!!


体勢を崩した俺に向かってコボルトは口を大きく開けて捕食しようとしてきた。

だが口が大きく開くと言う事は、それだけ口内を露出することになる。


俺は引っ張られながらであるが、コボルトの上顎に刀を突き刺した。


「オラァ!」

「ギャウンッ!!!」


その攻撃が余程痛かったのかコボルトはすぐさま俺から離れていった。

引力から解放された俺は何とか体勢を立て直してコボルトを見据える。


中々良い攻撃が入ったのか、コボルトは口から血が滴っていた。


「というか、コボルトの鳴き声とか初めて聞いたな」


ここに来るまでそこそこの数のコボルトを倒したが、一度も鳴き声をあげる個体は居なかった。

それにこいつが鳴いた瞬間体が引っ張られたので、鳴き声がスキルのトリガーになっているのかもしれない。


「グルルルルル」

「ふぅ、初手は俺の勝ちだな。さぁ、続きをしようか」


コボルトは俺のことを明確に危険と認識したのか、唸りながら威嚇をしてくる。

先程までは可愛い顔だったのだが、口から血が滴っていることもあいまって中々モンスターらしい形相になっている。


まだ少しだけしか攻防をしていないが、スピードにはなんとかついて行ける。

それにこいつも攻撃するためにはかなり接近をしなければいけないようなので、自然と刀の範囲に入る。


今度は俺から近づいて攻撃してみるか。


「行くぞ!」

「グルルッ!」


俺は一度姿勢を低くした後、足に力を込めて一気にコボルトへ接近する。

元々そこまで距離も開いてなかったので、直ぐにコボルトの近くまで来ることが出来た。


そのまま刀でコボルトに攻撃をしてみる。


「ハァッ!!」

「グルア!」


俺の振るった刀はコボルトの短い腕に弾かれてしまった。

そして弾かれるときに、甲高い音と共に火花が散った。


こいつ、体毛がかなり硬いな。

やっぱり強いモンスター相手にはこの刀だと厳しいか?


でも千鶴は未だにあの刀を使ってるしなぁ。

意外とステータスでどうにかなるものなのかもな。


俺はそんなことを考えながらもコボルトへ攻撃を重ねていく。


「どうした!防戦一方か!?」


俺が攻撃をしだしてからコボルトは攻撃を弾くことに集中している。

さっき口の中を攻撃されたことを警戒しているのだろうか?


それに今の俺の攻撃力だとこいつの体毛を突破するのは中々骨が折れる。

まぁ、手がないわけじゃないけど。


「もっとギア上げてくぞ?」


俺はさらに攻撃の手数を増やしていく。

上がった身体能力をフルに引き出して、今まででは考えられないようなスピードで刀を振るっていく。


コボルトもそれを完璧に手で防いでいるが、俺の狙いはそこにあった。


「グルルルル!」

「ハァアアアア!!!!」


その状態が数秒続いた結果、ついに変化が起きる。


「グルッ、グギャア!」

「はは!体毛突破したりってな!!」


俺は刀を振るいながらであるが、こいつの腕の一か所に負担が行くように防御する場所を誘導していた。

その結果、ついにコボルトの体毛が耐えられず僅かであるが切り裂くことが出来た。


「まだまだ行くぞ!」

「グルルッ、ワン!!!!!」


するとコボルトはついに我慢の限界を迎えたのか、鳴き声を上げた。

その瞬間、凄い力で俺の体が引っ張られるが……。


「待ってたぞ!」


こいつの弱点を上げるとすれば、スキルを使う時に鳴き声を上げなければいけないことだ。

たった一鳴きであるが、その声が聞こえた瞬間身構える事が出来る。


俺は体が引っ張られると同時にあえて前へ進む。


「舞鎖流【円閃】」


そして足と腰に力を入れながら一気に体を回転させ、刀と鎖で口内を攻撃した。


「グルアアアアア!!、アア…ア……」


そしてその攻撃が止めとなり、コボルトは煙になりながら消滅した。


「コボルトの希少種、討ち取ったりー!ってね」


初めてのスキル持ちモンスターだったし、中々厄介な相手であったが体感的にはパイライトスライムより楽だった。


やっぱり、あいつから大量の成長因子をゲットできたことが大きいのだろう。

もしパイライトスライムと戦ったときの身体能力であれば、もっと苦戦していたはずだ。


「そう考えると、希少種とは積極的に戦った方がいいかもなぁ~」


戦いの余韻に浸った後、コボルトの居たほうを見てみると鑑定通りのドロップアイテムが落ちていた。

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